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転生王女と天才令嬢の魔法革命【Web版】  作者: 鴉ぴえろ
第4章 転生王女と精霊契約
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第42話:手がかりは五里霧中

『残念ながら、アニスフィア王女には魔法の才能が……』

『どの魔法もまったく反応しないとは……』

『まさか忌み子なのでは……?』

『なんとお痛ましい……』


 私には魔法が使えなかった。どんな魔法も形になる事がなかった。

 使えなかった事実にショックを受けなかったと言えば嘘になるけど。

 周りから同情の声は聞こえたけれど、私には気にならなかった。

 だって、元々使えなかったものなんだから使えないとしても仕方ない。

 でも、私は知っていた。世界には必ず始まりと終わりがある。

 世界が私の目の前にある以上、発端があって結末がある。

 だから魔法にだって始まりがある。だからこそ私の心は躍った。

 魔法はどうして魔法なのか。

 魔法を使う為に必要な精霊とは何なのか。

 精霊には何故祈りを捧げなければならないのか、

 祈りの言葉は祈りを込めていれば何でも良いのか。

 精霊とはどこで産まれて、寿命などはあるのか。

 どうして私には魔法が使えないのか。使える方法は……あるかもしれない。

 だって、魔法はそこにあるんだから。その原理さえ明かしてしまえば、きっと。

 嘆く理由なんてなかった、謎を解明したいという思いだけがそこにあった。

 世界に絶望する事なんてなかった。魔法は変わらず私にとって希望だった。

 解明しよう。私の夢なのだから。全力で追って、明かして、そして。

 私は、魔法を使うんだ。私のこの決意は、あの日から変わってない。



 * * *



 ……そんな、懐かしい夢を見た。


「……んぁ……寝てた……?」


 まだ頭は寝ぼけている。随分と懐かしい夢を見たものだと思う。

 最近は研究に没頭する日々で、それも魔道具の開発よりももっと根幹に当たる精霊や魔法そのものを調べていたからだろうか。それは確かに過去を彷彿させる。思わず懐かしい気持ちになって身を起こして、背を伸ばそうとする。

 しかし、昨日はいつベッドに戻ったんだっけ。まったく記憶がない……。


「……んぅ」

「……ん?」


 起き上がって捲れた布団。その先に私とは別に誰かが寝ている膨らみがあって。

 そこには衣服を開けさせたユフィが静かに寝息を立てていて。


「……は?」


 いや、待て。待つんだ、アニスフィア・ウィン・パレッティア。ここは冷静になるべきだ。落ち着いて深呼吸をしよう。

 そう、横でユフィが眠っていたからといって何かあったと思うのは早計だ。ほら、添い寝とかもよくしてたしね。今回も多分、そういう事だよ。私が覚えてないだけで添い寝をして貰ってたんだよ!

 状況を確認する。私の隣にはやや衣服が開けたユフィがいる。いつもより露出が高いというか、そのまま服を脱いで肌着のままベッドに入ったと思われる。ふと部屋を見渡せば、そこには脱ぎ捨てられた私とユフィの衣服が散乱している。

 部屋の内装からしてここはユフィの部屋。私も肌着だけで、寝間着すら着ていない。思わず冷や汗が浮く。なんでこんな時に限って昨日の記憶がないのよ! 私の馬鹿!


「ユ、ユフィ。あ、朝だよ……? ユフィ?」


 思わずユフィの肩を揺さぶってしまった。私は思った以上に動揺していたのかもしれない。私に肩を揺さぶられて、ユフィがゆっくりと目を開ける。

 そのまま目をくしくしと擦って、口元に手を当ててからあくびをしたユフィは私を視界に映して安心したように微笑んで、そのまま目を閉じて……。


「に、二度寝しないで! ユフィ! 朝だって!」

「……んぅ……アニス様……」


 少しだけ尖った声で私の名前を呼びながらユフィがうっすらと目を開けた。

 それから何度か瞬きをしたかと思えば、不満そうに私を上目遣いで睨んできた。うわ、目付き悪……これはちょっと怖いかもしれない。


「お、おはよう?」

「……」


 ぷい、と背中を向けられた。え、何故!? 背中から何故か不機嫌オーラが見えているのは気のせい!?


「ユ、ユフィ……?」

「知りません」


 なんで怒ってるの!? え!? 昨日、私何かした!? 冷水を被ったように血の気が引いていく。衣服は脱ぎ散らかしてるし、互いに肌着のままだし、一緒の布団に入ってて、不機嫌なユフィって、何だ、何をしたの私!?

 昨日お酒でも飲んだ? いや、そんな感覚はまったく残ってない。そもそも最近そんな暇はない。精霊契約を調べる事に集中してたし、特に何か記憶が飛ぶような前後不覚になるような事は……。


「……あ。思い出した」


 そうだ、昨日の事だ。私は一度没頭してしまうと寝食を忘れる事が多い。昨日も徹夜上等で調査を進めようと資料を読みあさっていると、ユフィに強制的に連行されたんだった。

 イリアは私のこの悪癖には諦めきってるし、必要な時には実力行使してくる。レイニもそこまで無茶をする子じゃないだろう。じゃあユフィはと言うと、昨日は笑顔でユフィに抱き上げられて、そのままベッドに投げられて、脱がされて……。


「ほぁああああ!?」


 思い出した! 思い出すと火がついたように顔が熱くなる。いや、確かに寝かしつけられただけでいかがわしい事はなかったですよ!? 無かったんですけど! 服を剥ぎ取られて、布団に押し込まれて、寝かしつけられただけなんですけど……!

 いや、本当、ユフィは狡いから。本当に狡いから。く、くっそぉ、どうして私だけこんな恥ずかしい思いを……! というかごめんね! 没頭すると私周りが見えない事が多いからきっと面倒かけたよね!


「ユ、ユフィさん……?」

「……さん付けする人なんて知りません」


 やばい、めっちゃ怒ってる。こんなに不機嫌なユフィなんて見た事がない。

 どうしようかと1人で百面相をしてしまう。普段は聞き分けが良い子なのに、いや私が悪いんだけどさ! ど、どうしよう……。


「ユフィ、ごめんって……」

「……反省してます?」


 身体を起こしてユフィが私に向き直りながら私を咎めるように睨み付け聞いてくる。視線の圧が、眼力が強い……。


「は、反省してます……」

「……次やったら強制的に寝かせます」

「ひぃ」


 きょ、強制的はやめて欲しい……! せめてイリアみたいに意識を刈り取る方法にして欲しい……!

 しかし、段々とユフィに頭が上がらなくなってきてしまってる。父上と揃ってマゼンタ親子に頭が上がらないという笑えない未来が見えて来ている気がする。父上、今度一緒にお酒飲みましょう……。


「服はイリアかレイニに片付けて貰いましょう」

「え、あ、うん。脱ぎ捨てたままだからね……」

「えぇ。ですから……来るまで寝ます」

「……え?」


 ユフィにがっちり捕まえられて布団に引き摺り込まれる。ユフィの吐息が傍に感じられる程にしっかり抱きかかえられて、ユフィはそのまま二度寝を決め込もうとしている。

 思わず息を止めて動きを止めていたけど、一気に顔の熱が上がってしまう。なんとか抜けだそうと藻掻くも、ユフィの力は思ったよりも強くて逃れられそうにない。


「いやいや、待って待って! 落ち着こう、ユフィ!誤解! 誤解されるから! この格好で寝てるのは誤解されちゃうから! 起きます! ユフィ、私は起きるから! ちゃんと謝るから!」

「……知りません」


 知りませんじゃないよ!? いや、拗ねてるユフィは可愛いけど最近イリアの視線が生温いんだって! しかも鼻で笑われてる気もするし! というかこの前笑ってた! こんな所を見られたらどんな弄りのネタにされるか……!

 抜けだそうとユフィを引き離そうとするけど、背中を指でつつ、と撫でられた。思わず身体が仰け反りそうに跳ねて、情けない声が漏れた。


「ひぃゃぅ」

「……寝ましょうね」

「せ、背筋は、ゃめ……! わ、脇はもっとダメ! 笑うから! 拷問! 拷問だから!」


 結局、ユフィに体力を消費させられそうになったので、不毛だと私は迫り来る運命を諦めて受け入れた。

 その後、暫くしてイリアがやってきた。案の定、私を見るなり鼻で笑われた。


「見事なヘタレでございますね」

「それが主に向かって言う事ぉ!?」


 ぐぬぬぬぬっ、散々な朝だよ! ……自業自得? はいはい、そうですね! ふんだっ!



 * * *



 フェンリルの襲撃から日数もかなり重ねた。私達はあれからも変わらずに精霊契約について調査を進めている。魔法省から預かってきた歴史の解読はユフィに任せて、私は魔法省に保管されていた魔法についての研究論文に目を通していた。

 何か手がかりがないかと思って新しく借りて来たけれど、どれも魔法の根幹に迫るようなものはない。魔法の奇跡を讃える為の宗教観を語られるばかりで、やっぱり私の思考を助けるような資料はあまり無いようだと落胆の息が零れる。流石に参ってくる。


「……自分の考えが異端だとは思ってたけれどねぇ」


 ここまで手がかりがないと心に来る。ユフィの歴史の解読が進んではいるものの、どうにも手応えがない。ここまで来ると、いっそ精霊契約についての記載がないのは意図的なんじゃないかとさえ思えてきた。

 精霊契約者。それは大精霊や神といった精霊の中でも自我を持つ程に密集した集合体と契約した者。神話や伝説、御伽話にその存在を見る事は出来るけれど実在しているという記録は恐ろしく少ない。

 そもそも精霊契約者は名前こそ神話や御伽話では出てきても、実在している人の記録が限りなく少ない。精霊契約者は絶大な力を持つと言われているけれど、それが具体的にどういうものなのかはわからない。

 契約した精霊ごとに能力が違うのか、何か共通した特徴があるのか。精霊契約者に至る為には何が必要なのか。何もかもが虫食いでピースが足りない。いい加減、気分が滅入ってくる。


「……こうなると精霊契約者本人から話を聞きたいんだけどなぁ」


 父上からその話はまだ来ていない。交渉が難航しているのかは知らないけれど、すぐに話を聞く事は出来なさそうだ。このままだと手詰まりだなぁ。

 それでも何もせずにはいられず、次の論文へと手を伸ばして見る。


「……お?」


 その内容に私は思わず目が惹かれた。それは“原初の光と闇の精霊の、四大精霊と比較しての相違点”という論文だった。

 内容は光と闇の精霊が重点的に記載されている。四大精霊とされる火、水、土、風の精霊、そして派生した亜種精霊の魔法は実体を持つ事が多い事に対して、光と闇の魔法は形となる依代を持たない事が多い。この事実から原初とは何なのかを思考する、といった内容だ。


「火、水、土、風。更にそこから派生した亜種精霊を含め、これらの魔法は発動の際に何らかの形を伴う事がほとんどである。対して、光と闇はそれぞれ単独では形を持たず、また魔法も実体を持つ魔法の方が少ない。原初とされる光と闇とは無形であり、この2つは本来同一の存在なのではないか……」


 へぇ、面白い論文だ。原初の属性とされる光と闇については私もちょっと驚いたんだけど、この世界における光と闇というのは対立する存在じゃないんだよね。

 どうも前世の知識では光と闇というのは争いあったり、対立の象徴とする事が多いんだけどこの世界では違う。

 光と闇は隣り合う存在であり、融和し合う存在なのだと。光と闇は手を取り合い、昼と夜を生み出し、互いに回る事で世界を包んでいると言う論説もある程だ。

 そしてこの論文の通り、光と闇というのは実体らしい実体を持たない魔法が多い。例を挙げればユフィも使っていた治癒の魔法は光と闇の魔法なんだよね。

 もっと正確に言えば怪我には光の治癒が、気の病には闇の治癒が効くので使い分けされてるのが正しい。更には他の属性を加える事で治癒魔法はどんどん派生していく。

 前に治癒魔法が優秀だから医療技術が発達してないと思った事があるけど、これが魔法を頼らない医療技術が発展しない大きな理由だと思う。

 治癒魔法と一括りにしても、実際には多種多様な魔法が存在しているので得意な治癒魔法を専門にしている魔法使いもいる程。

 更に私が驚いたのは、光と闇の適性を一緒に持つ者は多い。光だけ、闇だけ、という方が珍しい程だ。或いは光と四大属性のいずれか、闇と四大属性のいずれか、という組み合わせが多い。けど、これも少数。基本的に光と闇はセット扱いになる。

 私の知る限りでは、光は既存の属性の効力を強めたり、物質や魔法の強度そのものを高める傾向が見られ、闇はこれと逆に魔法を霧散させたり、その性質を弱める傾向にある。

 この理論で言うとレイニの精神干渉も闇の属性なのかと思ったけど、詳しくは検証してみないとわからない。


(……ユフィの魔法が凄いのは光と闇にも適性があるからなのかな)


 ただの四大精霊の魔法よりも、原初である光と闇を組み合わせる事で効力を強める事が出来る。ユフィの魔法が凄いのはこの組み合わせによるものなんじゃないだろうか。

 この論文が纏めて言いたいのは、光と闇が原初とされるのであればそれは無形であった事。その原初から四大精霊が生まれたとするのであれば、この世界の創世が無形から有形になったと推測される事。そこに至るのには、どのような偉業があったのか。

 そこからとってつけたように神への賛辞が描かれていて、思わず吹き出してしまった。本題は神への賛辞じゃないけど、それを書かないといけないと強いられている事が伝わるかのような雑な書き方だと感じてしまう。


「こんな考え方をする人もいたんだなぁ。結構古い論文みたいだけど、誰が書いたのかな?」


 論文を書いた人の名前を確認しようと私はページを捲る。その名前を見て、私は目を丸くした。


「ねぇ、ユフィ?」

「……はい? 何ですか? アニス様」


 資料の整理の手を進めていたユフィが顔を上げて私を見る。私は恐る恐る論文を書いたその人の名前を指でなぞりながら問いかける。


「ネルシェル・ブーゲンビリアってさ……」

「……お母様の旧姓ですね」

「だよねぇ!? えぇっ、これ書いたのネルシェル夫人なの!?」


 まさかの人でビックリだよ!?


「ブーゲンビリアってどこの家だっけ……?」

「王城勤めではないですよ。王都からも離れてますしね。ブーゲンビリア侯爵領は私も行った事がありますが、穏やかな所ですよ」

「侯爵家なんだ。領地はのどかな田舎って感じ?」

「えぇ、お母様は保養地には丁度良いと。ブーゲンビリア侯爵家は穏やかな方ばかりですが、お母様はその中でもなかなかの変わり者で、身1つでお父様に嫁いできたとか……」

「え、なにそれ気になる」


 グランツ公とネルシェル夫人の馴れ初めとか超気になる。うーん、この論文を出したのも大分古いみたいだし、今は特に研究したり論文は書いてないのかなぁ。


「そうだ」

「はい?」

「ユフィ、マゼンタ公爵家の実家に帰るのについて行って良い?」

「それは構いませんが」

「ネルシェル夫人の話をちょっと聞いて見たいし、そろそろカインドくんと話をしてみないとね」

「……あぁ、お手数をおかけします」


 ユフィの弟のカインドくん。彼とはまだうまく仲直りが出来ていないらしい。原因となってしまった身である以上、やっぱりちゃんと仲を取り持たなきゃね。ただでさえユフィをマゼンタ公爵家から取り上げてしまう可能性がある訳だし。

 あと、うん。ネルシェル夫人の話を聞いてみたい。神学というよりは真理、本質に迫ろうとするこの論文は私の好奇心を強く刺激した。一体どのように考えて物事を捉えているのか、一度詳しく話を聞いてみたい。


「では実家には便りを出しておきますね」

「うん。お願い」


 ユフィの気晴らしにもなれば良いな。最近は歴史の解読や資料の整理で机に向かい続けてる訳だし。



 * * *



 さて、そんな訳でやってきましたマゼンタ公爵家! お邪魔するのはユフィを預かるって挨拶しに来た時以来かな。

 今回はユフィと私、2人だけで来た。たまにはイリアとレイニにもゆっくり休んで欲しいしね。


「お帰りなさいませ、お嬢様。そしてようこそいらっしゃいました、アニスフィア王女」

「ただいま戻りました。お母様は?」

「客間でお待ちです。どうぞ、ご案内致します」


 年配の執事さんが出迎えてくれて、そのまま荷物を預けてメイドさん達が運んでいくのを尻目に客間へと案内される私達。

 そのまま客間へと入ればネルシェル夫人が席について待っていた。私達を見れば席を立って歩み寄りながら笑みを浮かべてくれる。


「お帰りなさい、ユフィ。そしてようこそ、アニスフィア王女」

「はい。本日は訪問を許して頂き、ありがとうございます」

「いえいえ。私もまさか若い頃の論文を見て頂けるだなんて思っても見ませんでしたわ」


 おほほほ、と口元を隠して笑いながらネルシェル夫人は言う。そのまま促されるように席につけば、執事さんがお茶を淹れてくれてお茶菓子と一緒に出される。

 ひょいひょい、と摘まむようにお菓子を食べる。うーん、流石公爵家。良いものを食べてるよねぇ。


「今日は論文の話を聞きに来た、という事ですが……挨拶はして頂けないのかしら? アニスフィア王女」

「? 挨拶?」

「娘と良いご関係になったので、そのご挨拶かと」

「ごふぅっ!? ごほっ、ごほっ……!」


 喉にお菓子が、お菓子が……! 隣に座っていたユフィが背中を撫でてくれる。なんとか息を整えてネルシェル夫人と向き直る。


「え、えぇと、その、それに、つきましては、その……」

「はい」

「……えと、大変良くして頂いておりまして……その」


 な、何を言えばいいのよぅ!? ネルシェル様はおかしそうに笑ってるし、ユフィまで笑ってるし!? 居たたまれなくなって肩を狭めて縮こまる事しか出来ないよぉ……!


「ごめんなさい、アニスフィア王女がそこまで奥手とは思わなかったわ」

「……惚れた弱みという事にしておいてください」

「あら、まぁまぁ! そうなの!」


 ど、どんな拷問なのこれ……しまった、この展開はまったく考えていなかった! これは早く話題の転換を図らないと……!


「それで? どの程度までのお付き合いをお考えで?」

「ど、どの程度まで!?」

「可愛い娘が生涯を捧げてもお仕えするとの事ですから。気にならない親はいないでしょう?」

「そ、それはそうですが……それは、勿論幸せにするつもりとは……」

「それはユフィを娶って頂けると?」

「どうしてそういう話に!?」

「だって気になるのですもの」


 そりゃ確かに気になる要素しかないし、親としては心配なのかもしれないんですけどぉ!? 私が針の筵に座らされてる気しかしないんですけどぉ!?

 ユフィ、顔を背けてるけど笑ってるのはわかってるからね!? 何笑ってんのよ!?


「そ、そもそも私達は同性で……!」

「それでもお互いに好き合ってるのでしょう?」

「と、咎めないのですか……?」

「むしろ焚き付けた側ですし。今までこの子の自由を束縛しつづけて来ました。ユフィが望むというのなら、出来うる限り支えようと思っております」

「それは、その、安心しましたが……」

「でもアニスフィア王女がどこまでユフィを好んでいるのかは改めてお伺いしたい所ですわね? 幼少の頃から女性が好きと公言していたのに、いざ恋人が出来ればそのように初心なのかしら?」

「に、にゃーっ! にゃーっ!」


 やめて! 最近それ私の黒歴史になりつつあるから! それに恋人!? 恋人……!? 今、恋人って言われてる!? いや、それは、否定しませんけど、他人から、しかも相手の親から言われるのは、気恥ずかしくて死ぬ……!

 それから何度か追求を躱そうとするけれど、その度にネルシェル夫人に話題を戻されてしまうのでした。だ、誰か助けて!! 

  

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