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転生王女と天才令嬢の魔法革命【Web版】  作者: 鴉ぴえろ
第2部 第7章 そして、語り継がれていく物語
192/207

第84話:〝アニスフィア〟(5)

本日、三回目の更新となります。(3/3)

三回目の更新は三話同時更新となっておりますので、見逃しのないようにお気をつけください。

「――もうっ、全然売れないじゃないのよ!」


 私は苛立ちからそんな毒を吐きながら、せっせと内職させられた造花が入った籠を置いてベンチに座り込んだ。

 そんな私の耳に飛び込んできたのは、汽笛の音。私がいるのは魔導列車の駅の真ん前。

 魔導列車は、この〝パレッティア公国〟を駆け巡り、都市と都市を繋ぐ流通の要の一つ。偉大なる魔学の創始者、アニスフィア姫によって計画された一大プロジェクトは、隣国のアーイレン帝国をも繋ぐ大いなる発明の一つだ。


「はぁ……私も古都の降誕祭に行きたかったなぁ……」


 〝古都サーラテリア〟の降誕祭はパレッティア公国に住む人なら一度は足を運びたい最大のお祭りだ。過去に王都でもあったサーラテリアには多くの歴史的な建物や、資料が残された博物館などがある。

 なので観光先としても人気だ。まだ公国が王国だった頃の名残が残された最も栄えし古き都。今でも伝統的な祭りが頻繁に開催されていて、私も古都の降誕祭には是非とも参加したかった。


「一人歩きするのはまだ早いって……何よ、もう! 魔道具があれば私だって大丈夫よ!」


 昔、幼い頃に仕事が休みだった両親に連れていって貰った古都の降誕祭。その華々しさと伝統を今も残す祭りに私は魅せられてしまっていた。

 だから何度か古都の降誕祭に参加しようと目論んでたんだけれど、両親の仕事の都合でなかなか日程が合わずに毎年、参加を断念していた。

 そんなに行きたいのなら今の内にお金を貯めておきなさい、って言われて内職の手伝いもしたけれど、これがちっとも売れない。


「あー、本場のサーラテリアの花畑……綺麗だったなぁ」


 私の作った造花は、古都でも人気の観光スポットである植物園で育てられているサーラテリアを象ったものだ。

 お祭りの日には、女の子はサーラテリアを髪飾りにしてお洒落をしていたという。今でも続いている習慣だけど、ここ〝首都アニスフィア〟では流行りは廃れている。


「確かに今日はサーラテリアで降誕祭だから造花は売れるかもしれないよ? でも誰も列車から降りて来ないじゃない! 行く人は急ぎの人ばかりで目もくれないし! はぁ~、時間が悪かったのかなぁ……」


 別に売れなくてもいいとは言われてるけれど、売れないのはなんだか悔しいのだ。折角作ったのに。

 きっと、あっちだったら本場のサーラテリアを髪飾りにしてるのかな、って思うと虚しくなってしまう。


「うーん……将来は古都で働きたいんだけど、古都だと魔法を使える人が就職に圧倒的に有利だからな……となると楽士? 研究員? 私は何が向いてるのかなぁ……」


 パレッティア公国では教育が義務づけられていて、成人の年である十五歳までは学校に通わなくてはならない。その間に将来の進路を決めるんだけど、私はまだまだ自分の夢を決められないでいる。

 魔法使いになってみたいとは思ったけど、私は残念ながら適性がなかったらしい。でも魔道具を使うのは得意だから、魔法を使えるだけの子になんか負けない。

 でも別に騎士になりたい訳でもない。騎士になったら魔物と戦わないといけないから、それは流石になぁ、とか思っちゃう。


「カンバス大森林でもこの前、スタンピードが起きたって一報が届いてたなぁ」


 パレッティア公国の領土の中でも、特に昔からの姿を残しているカンバス大森林。山を隔てた先にあるカンバス大森林には基本的に魔導列車と同じく流通の要を担っている〝飛行機〟を使わないといけない場所だ。

 騎士となる人の多くはカンバス大森林の開拓地で魔物との戦いを学ぶ必要がある。魔物を定期的に減らしているけれど、どこからともなく沸いて来るので毎年大変そうだ。なので、騎士になるのはないわね!


「やっぱり研究員……でも、あっちの研究員は魔法があると有利って聞くし、楽士……いや、私音楽は苦手……だったら花、そうね! 花を育てるのは良いかも!」


 園芸員というのは私に向いてるのかもしれない。お花は大好きだし、研究とか小難しいことに頭を使うよりは良いかもしれない。手先だって器用だし、今度、古都に就職先があるかどうか調べないと!


「――そこのお嬢さん。ちょっといいかな?」

「はい?」


 ふと、考え込んでいると私の傍に一人の女の人が寄って来ていたのに気付いた。

 日の光を溶かし込んだような白金色の髪に、新緑を思わせるような薄緑色の瞳の女性。どこか人懐っこい笑みを浮かべていて、それが幼さを感じさせながらもしっかりとした女性らしさを感じさせる不思議な人。

 その人の容姿に目を奪われるように呆けていると、目の前で手を振られた。


「あのー、もしもし?」

「は、はい! なんですか!?」

「いや、その造花。売り物?」

「へ? あ、こ、これですか?」


 私は籠に入った造花を掲げて見せる。それを近くで見るように顔を寄せたお姉さんが嬉しそうに笑みを浮かべる。


「これ、サーラテリアだね。よく出来てるよ」

「そ、そうですか? 私が作ったんです。今日、古都では降誕祭ですから」

「あぁ、成る程ね。今もこの風習は残ってるんだねぇ」

「……お姉さんも古都の降誕祭に?」

「うん。昔はこっちに住んでてね。近くに寄ったから見に行こうって」

「いいですよね! 古都の降誕祭! 良き伝統が息づく古くも華やかなる花の都、サーラテリア! 私、サーラテリアに憧れてるんですよ!」

「ははは、元気なお嬢さんだね。じゃあ、これも何かの縁ってことで一本貰おうかな」

「ありがとうございます! ……でも、良いんですか? あっちに行くなら、本場のサーラテリアが売ってるんじゃ……?」


 そう言うと、お姉さんは少し困ったように笑ってみせました。


「花は綺麗だけど、すぐに枯れちゃうからね。手元に残すぐらいなら、私はのびのびと咲いて一生を終えて欲しいかな」

「……お姉さん、優しい人なんですね」

「サーラテリアには思い出があってね。父親が好きだったんだ。……ここだけの話、私の父親はサーラテリア城の庭園を手がけた事もあるんだよ」

「えぇええっ!? そうなんですか!? えっ、いいなぁ! そんなお仕事出来たら素敵ですね!」


 古都サーラテリアのお城、サーラテリア城。その中には今も優美な庭園が保たれている。私も観光に行った事もあるけれど、あそこは本当に選ばれた人しか入れないって位に厳しく狭い門だと聞いたことがある。

 確か……そう、オルファンス王が植物に造詣が深い御方だったらしくて、自らの庭園を手がけたことがキッカケとなって今でも伝統として保たれているのだとか。

 素敵なお話よね。でもオルファンス王は優しい王様だったとは聞くけれど、押しが弱くて王妃様に尻を敷かれてたって話の方が有名よね。王妃様が先に亡くなってからは、毎年王妃様に愛しの花を捧げていたのだとか。


「ふふ、父もそう言ってくれたら喜ぶと思うよ。だから、今は造花派なんだよね。自然のものは、出来るだけ自然でいて欲しいからね。そうやって残していく事も大事だと思うから」

「えっと、それじゃあ、拙い造花ですけど……」

「そんな事ないよ。……どう、似合ってるかな?」


 耳元に挿すようにして造花を飾ったお姉さんは、目を奪われるぐらいに綺麗だった。

 ……あれ? でも、なんか妙な既視感があるなぁ。どこかで見たことがあるような気がするんだけど、こんな綺麗なお姉さんなんて会った事ないし……。


「アニス、そろそろ列車が出ますよ」

「ユフィ、わかった! 今行くよ!」


 お姉さんは、連れの人なのか、これまたビックリするぐらい綺麗なお姉さんに呼ばれて振り返っていた。

 そのお姉さんは月光を梳かしたように綺麗な銀髪に、薔薇色のピンクの瞳だった。その姿にまたもや既視感を覚えてしまう。この人も、どこかで見たような……?


「レイニとイリアは?」

「もう先に乗ってますよ。あまり懐かしいからってフラフラしないでください」

「ごめんごめん。……それじゃあね、お嬢ちゃん! もし貴方がサーラテリア城の庭師になったら父によろしく!」

「……迂闊ですよ。ほら、騒ぎになる前に行きますよ」

「いたたたっ、ごめんなさいっ! 耳は引っ張らないでっ!」


 魔導列車の汽笛が、間もなく発車の合図を告げている。造花を髪に挿していたお姉さんは、銀髪のお姉さんに引き摺られるようにして駅のホームへと消えていった。


「……なんか、凄い印象に残る人たちだったな」


 そして、魔導列車が発車の合図である汽笛の音を高らかに響かせた。

 サーラテリアへと向かっていく魔導列車、そこにはあの二人も乗っているんだろうなぁ、と思いながら見送る。


「……アニスに、ユフィか。……んん?」


 アニスに、ユフィ……?

 その名前に私が感じていた既視感が更に強くなる。そして、私の脳で散らばっていた違和感の点同士が線で結ばれた時、私は造花の入った籠を落としてしまった。



「ま、まさか、あの二人って……――ほ、ほほほ、本物ぉッ!?」



   * * *



 ――パレッティア王国が、後に王政を廃止してパレッティア公国と名を変えた後の話。

 時代の変革者であり、魔学の母として多くの最先端技術の先駆けを生み出した〝 始まりの魔女姫イノベーション・ウィッチ〟、アニスフィア・ウィン・パレッティア。

 パレッティア王国の建国王と同じ偉業を成し遂げながらも、その偉業を以てして古き時代を終わらせた〝最後の妖精女王(ラスト・ノーブル)〟、ユフィリア・フェズ・パレッティア。

 精霊契約を以てして人の寿命を超越したユフィリア女王と共にある為に、ドラゴンの加護を授かったアニスフィア姫の恋物語。これは今でもパレッティア公国では語り継がれ、愛されている。



 ――彼女たちは今も、自分たちが受け継がせた未来を紡ぐ人たちをどこかで見守っている。



「王都の観光なんて何十年ぶりだっけ?」

「もう王都でなくて、古都ですよ」

「えぇと、まだ百年は数えてないと思います」

「……あまり迂闊な話をしないでください、三人とも」

「ごめんって。古都の降誕祭を見たら、次はどこに行こうか?」

「それはもう、貴方の気の向くままに」



 時代は巡り、夢と希望、そして神秘は人々の手に委ねられた。

 時代を紡いだ彼女達は人の世を離れ、世界を旅し続ける。

 これからも、何度だって夢を見るため、人々の笑顔を見るために。

 世界に人々の幸せが満ち溢れているのを確かめるように。



 ――革命は終わり、その軌跡は遙か遠く。それでも魔法は、今でも人と共にある。



  

今回の更新を以て、「転生王女と天才令嬢の魔法革命」第二部、そして本編は完結となります。

ここまで読んで頂いた全ての人に心からの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。


「転生王女と天才令嬢の魔法革命」は書籍版は1、2巻が発売中。コミカライズも決まっておりますので、よろしければそちらも応援して頂ければ嬉しいです。


読んで良かったと思って頂けたら評価ポイントを入れて頂けると作者が喜びます。本編はここで終わりとなりますが、番外編や短編もいくつか考えているので、そちらを更新した時にはどうかよろしくお願いします。

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