どうしてこうなった
(__どうしてこうなった......)
俺、進藤春樹は今年で17歳になる平々凡々な高校生だ。 年齢イコール彼女無しのチェリーボーイ。どこかのラノベみたいに幼馴染なんていないし妹すらいない。そんな10円だまみたいな俺、今大きな壁にぶち当たっています......
「おい!何とか言ったらどうなんだよ! まさか忘れたとか言うんじゃねぇだろうなぁ? 」
目の前には柄の悪そうなヤンキーが不機嫌そうにガムをくちゃくちゃしながら俺を見下ろしている。俺の記憶の中にこんな如何にもヤンキーそうな男なんていないし因縁つけられる謂れもない。 が、そいつの顔はまるで親の仇でも見てるかのように怒りに歪んでいる。 手には金属のバッド、当然これから野球にいきますなんて格好じゃない。自分で染めたであろう汚い金髪も某戦闘民族並みに逆立っており揺らいでるようにも......
(何で朝起きたらこんなことなってんだよ......)
ちゃんと柔らかなベッドの中で寝ていたはず。夢遊病なんて病気にも患ってない。
「あの......何で俺拘束されてるんですか?」
そして自身の身に降りかかっている最大の謎。 腕を後ろに回され手錠をされているのだ、それに足には鎖。足が痺れて来たので動かそうとするたびに金属のジャラジャラとした音が廃工場に広がる。
「お前バカにしてんの?」
「あれだけのことをしておいてとぼけてんのか!!」
あらやだヤンキー君だけじゃないのね、もう一人声を荒げてるのは何処か知的な雰囲気を出す男性。齢は20代後半と言ったところだろうか?人畜無害な穏やかそうな顔が怒りに歪んでいた。 ヤンキーならいざ知らず、こんな知的な男性まで敵に回した記憶なんてまっったくない。 正直ヤンキーに絡まれたのは単純に町で目に入ってお金でも奪い取るモブ狩りだと思っていた。だからこそ一層深まる疑念。
(__何やらかしたんだ俺!?)
自身の何の飾り気もない、しょーーもない人生と言う名の本を捲りめくって探すも一向に出てこない。 季節外れの汗が滝のように出る。目を上げると射殺すように睨みつける二人。 どうやら勘違いじゃなさそう、彼らの目には確信が宿っている。
「ふん、そんな狼狽えたってオセぇんだよ。俺は『皇 光被害者の会』を代表して来てんだよ。」
__皇 光ってだあれ? 何だその如何にも王子様みたいな名前の奴。 すんごいスペック高そうでそれでいて容姿も端麗そうな奴俺は...俺はしら...... え?
「皇 光......」
そんな知り合い実際いないのだが俺は皇 光を知っている。 俺が憎くて憎くてやまなかった小説のキャラ。 常に女の事しか考えてないクソ野郎。容姿の良さであらゆる女性を食い物にして来た真のクズ。 king of kuzu、クズの中のクズ。 多くの女性を奪い取り、多くの男性の恨みを一身に受けた主人公の咬ませ犬キャラ。 財閥の強大な権力を笠に好き放題やった代償に、最終回主人公キャラに盛大にザマァされる最近流行りの復讐譚に出てくる悪キャラ......
「なぁ 何とか言ってみたらどうなんだ? あぁぁん?」
怖い、身に覚えもない因縁。相手は本気で怒ってるのは相手の目を見れば見て取れる
_____あの眼はやばい
違うんです!俺の名前は進藤春樹です!!人違いです!!といえればどれだけ楽だろうか......
今それを言うのは悪手。人違いであろうと取り敢えずは謝らなければ。 自身の命が危ない。
「ふぅ......」
深呼吸、全身に血液を循環。 相手の目をしっかりと見据え、誠心誠意の謝罪を決める__
「お前の女、最高だったぜ!」
違う、コレじゃない。
鈍器で殴られたような鈍い音が廃工場に響くのであった____
やっぱり男は奪われるよりも奪う側に立っていたい。




