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300文字の裏側
「はい、カットー! OK!」
「え、まだ何も始まってないですよね!?」
——さすがに意味がわからない。
今日こそは文句を言ってやる! と、私は息を大きく吸い込んだ。
「前回はただ、白い骨を眺めるだけでしたよね!? 前々回は酒に酔って帰るだけでしたし、それに——」
「いいの、いいの」
「何が!?」
「何もないところからでも、300文字は生まれるってことなんだよ」
「それって、役者が私である必要は……」
「あったかもしれないし、なかったかもしれない。ただ、君が役者だったというのは紛れもない事実だよ」
「でも、さすがに今日のは変ですよね!?」
「あぁ、さっきの『はい、カットー!』っていうのは僕の演技でね。実は今、撮っているんだ」




