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お題『五月晴れ』
「西からゴブリン9体、東から7体が来てます!」
「言うのが遅ぇよ!」
ありったけのスローイングナイフを投げながら、ダロスが叫ぶ。
「五月雨式の報告ですみません」
トットが小さくなった。
「おや? 季節外れだねぇ」
あたしはニヤッと笑う。
ここ、ベルデンに四季はない。つまり——。
トットは目を丸くした。
かつての自分を見ているようだ。
「あたしはそろそろ晴れ間がみたいよ」
思わず、愚痴がこぼれる。
(……今さら元の世界に戻れるとは思わないけどね)
「うるせぇ! 口じゃなくて手ぇ動かせ!」
ダロスの罵声が飛ぶ。
「五月蠅とは粋なシャレだねぇ」
からかってやると、ダロスの口が再び開きかける。
それは無視して、あたしはサッサと杖を構えた。




