第46話 文化祭after
文化祭の次の日は学校は振り替え休日だ。
といっても、片付けがあるのでクラス全員が学校に来ている。
俺と鈴原も登校する。
教室に入ったとき、いつもと雰囲気が違った。
いつもなら張り詰めた空気になるのに。
「おはよう、公太くん」由紀がいつものように挨拶してくる。
「おう」いつものように返事する。
「おはよう」誰かが挨拶した。つられたように何人かが挨拶する。
……俺にか?
実行委員の手伝いをした、由紀の友達の高木と川野だった。あと何人かにも挨拶された。
「……おう」俺に挨拶したのだとすぐに気づかずに中途半端な挨拶になる。
「不良のクセに片付けに来るんだな」加藤だった。俺に言ったのか?
「よお」
「お疲れ」
藤原と斉木だった。
……俺に言ってるんだよな?
「……おう」
何だこれ?
「おはよう、鈴原さん」育がやってきて鈴原に挨拶する。
「……おはようございます」鈴原は辛うじて育に届く声で挨拶を返した。
「みんな、昨日はお疲れさまでした。さっさと片付け終わらせて、打ち上げに行こー!」育が仕切る。
委員長は生徒会の実行委員の方に出ているので、クラスの実行委員の育が中心に片付けを始めた。
教室の清掃と復元は任せてレンタル品の検品と梱包を育と行った。加藤達に手伝ってもらって職員室に運んだらそれで終わりだ。荷物と運送料を学校事務局に預ければ、後は運送屋が他のクラスの荷物と一緒に運んでくれる。
「打ち上げに行くよー」育の先導で予約した店に向かう。
ある程度の黒字は打ち上げに使うことが認められていた。多ければ生徒会費に繰入することになっている。
俺達のクラスは程よく黒字だった。
「鈴原、帰るぞ」打ち上げに行く気はないので鈴原と帰ることにする。鈴原はそんなものに出たいと思わないだろう。
「何で帰ろうとするのー!」育が止めてきた。
「あ? いいだろ別に」
「宮野、委員だから出ろよ!」加藤が絡んでくる。
「あ? 義務は果たしただろ!」
「委員は打ち上げも義務だろ!」
「俺は委員じゃねー!」育の手伝いだ。
「うるせー! 全員参加に決まってんだろ!ボケが!」
「んぁあ?! やんのかこらぁー!」
「待って待って! 鈴原さん参加するよね?」育が俺達を飛ばして鈴原に声をかける。
鈴原は何か言いたそうに俺を見た。
俺は彼女の口元に耳を近づける。
……え?
俺は彼女から顔を離し、「……参加する……」と彼女の言葉を伝えた。
打ち上げのレストランでは鈴原を一番端の席に座らせてその隣に俺が座った。
いつの間にか俺の隣に由紀が座っている。向かいにはおとなし目のクラスメイトが固まっていた。俺と視線を合わせようとしない。
育や加藤達は中心で盛り上がっている。
何で鈴原はこんな打ち上げに参加しようと思ったんだ?
当の鈴原はずっと無言だ。
仕方ないので俺はずっと由紀と話をしていた。
由紀は鈴原にも話をふるが、彼女は小さな声で短く返事するだけだった。
たまに育がこっちをにらんでくるのを、由紀が面白そうに見ていた。
何だこれ?
文化祭から数日。
特に何もない穏やかな日が続いた。
鈴原が育に取られることが多くなった。彼女は昼ごはんを育達と食べるようになった。
美術準備室のカギは返すべきか?
育が俺にも昼ごはんを一緒に食べようと言ってきてうっとうしいのでしばらくはカギを返さない。
昼休みに廊下を歩いていると見たことのある奴らと鉢合わせた。
鹿島だった。
前に徒党を組んで俺のクラスまで押し掛けてきた奴。加藤達が追い払った。
後で育にお礼を言わさせられた。
別に俺一人で追い払えたんだけどな。
「おい、宮野」鹿島が俺を呼び止める。
「あぁ?!」俺は威圧を込めて返事した。俺には鹿島に用はない。
「いや、待てよ。俺はお前と揉める気はない」鹿島は慌ててへたれたことを言う。
多分あれだな。文化祭で幼馴染みと回ったのが効いている。
違う高校にバラけたけど、俺がまだT中カラーギャングと交流があると知ってビビったのだろう。
「だったら呼び止めんな」
「いや、……お前、加藤達といつも揉めてるよな?」
「だからなんだ」加藤はいまだに俺に因縁を吹っ掛けてくるのは確かだ。だが前と違って実際に殴り合いになることはない。
あいつの因縁は挨拶みたいなもんだ、と最近は思い始めていた。
「加藤の奴、こないだ俺になめた口効きやがったからよー。取り巻きの奴らもまとめてヤキいれてやろうと思ってよ。だからジャマすんなよ。何ならお前もかむか? 1人で3人相手にケンカできないだろ?」
鹿島の顔をぶん殴った。
ふっとんで倒れそうになるのを追撃して蹴り倒した。
5人取り巻きがいたが、とりあえず手近な3人に一歩詰めて、三連撃を一人づついれる。
少し離れていた奴に、飛び込んで蹴りを食らわせた。
鹿島の反対側にいた奴がビビって、背を向けて逃げ出した。
仲間見捨てて逃げるなよ。
一気に距離を詰め、頭を掴んで床に叩きつけた。
廊下はさながら阿鼻叫喚だ。通りすがりの女子生徒の悲鳴が聞こえる。
鹿島達6人は床に転がっている。
鹿島が立ち上がろうとしたので、近づいてもう一度胸を蹴って転がした。
「おい、鹿島! 加藤によそのクラスの事に口出すなって言われてただろが。こっち見んなボケが!」
俺は鹿島の前にしゃがむ。そして襟首を締め上げた。
「俺のクラスの奴に手を出すな。遊んで欲しいなら、俺が毎日遊んでやるよ」後頭部から床に叩きつけて手を離した。
「おい! 宮野! 何やってんだお前!」教師のヒステリックな声が聞こえた。
やべ、やりすぎた。今回は俺から手を出してしまった。
……まあ、いいか。たまにはキレて見せないとナメられる。
最近、守りたいものがまた増えた。
読んでくれてありがとうございます。




