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第41話 文化祭count4

 

 公太に連れられて保健室に来た。

 これは1限目はサボりかな?


「また宮野くんか」

 公太は保健の先生に名前を覚えられているらしい。

「大丈夫? どうしたの?」先生は私の顔を見て驚いている。そんなにひどいのかな?

「大したこと無いです」私は平然と返す。

「誰かに殴られたの?」

「いや、いつもの事ですから」私はそう答えたけど、そんなわけ無いよね。


「湿布とサージカルテープ下さい」公太は説明を飛ばして必要なものを伝える。

 私はイスに座らされて公太の治療を受けた。

「相変わらず手際いいわね」先生が呆れている。いや、保健の先生いるのに何で自分で治療するのかな?


 殴られた左頬全面に湿布を貼られてテープで止められた。

「大袈裟じゃない?」

「青あざになるぞ」

 それは嫌だな。


「あなた、クラスと名前は?」先生が訊いてくる。

「2B、秋山です」

「誰に殴られたの?」

「……、こけて机の角にぶつけました」

「……、そう言うことにしておくわ」


 公太が私の前に突っ立ったまま情けない顔をしている。

 落ち込んでいる?

 しょげている公太も可愛い!

 ちょっとキュンとしてしまった。


「公太」手をさしのべる。

 公太が私の手を取る。

 手を引っ張って公太を抱き寄せた。しゃがまされた公太は膝をつく。

 私は公太の頭を胸に抱いて、頭を優しく撫でた。

 公太はされるがままになっている。


「大丈夫だから。鈴原さんのことは私に任せて」


 鈴原に平手打ち食らったのがよっぽどショックだったのか、公太は黙って頭を撫でられていた。



「あのー、そろそろいいかしら?」先生が遠慮がちに声をかけてきた。

 んー、ジャマしないで欲しいな。

「保健室でいちゃつくのやめてくれない?」


 先生に視線を向ける。

 先生は怯えたようにビクッとした。

「えっと……、もう授業始まっているわよ」

 私の機嫌が悪いとみんな怯えるのだけど、どうしてかな?


「公太、大丈夫? 授業出れる?」

 公太が腕の中でうなづいた。


 手を離す。

 立ち上がった公太はあまり大丈夫そうに見えなかった。




「育ちゃん大丈夫?」

「痛そう……」

 三和ちゃんと浩子ちゃんが心配そうな顔をして話しかけてくる。

 1限目の途中で私たちは教室に戻った。今は1限目が終わった後の休憩時間。

 隣の席の由紀ちゃんはあえて何も言ってこない。


「女の子に手を上げるなんてサイテーだな」加藤くんがちょっと憤りを見せるが、前ほど公太を非難しているようには見えなかった。とりあえず私を心配していることをアピールしているだけに聞こえた。

 同じ三バカの斉木くんと藤原くんは黙っている。


 いつもなら三バカは公太のところにケンカを売りに行きそうなものだが、今回は私のところで悪口を言うのに留めていた。

 公太は見ていて可哀想なぐらい落ち込んでいる。


「公太とケンカするのはいつもの事だから気にしないで。どうせ明日になったらケンカしたことも忘れてるから」

 子供の時の話だ。


 今回は私が先に手を出した。

 殴るからには殴り返されるのも覚悟の上だ。文句を言う筋合いはない。




 昼休み、私は鈴原のところに行く。

 今日はお弁当を食べている時間は無さそうだった。

 公太は黙っている。

 私も公太に話しかけない。


 鈴原は立ち上がって公太に手を出した。

 公太は黙って鍵を鈴原に渡した。


「こっちへ」鈴原は小さい声でついてくるように言った。鈴原もお弁当を持たなかった。


 美術準備室まで来た。

 何故か鈴原は部屋の鍵を持っていた。


 鈴原と二人で向かい合って机に座る。

 いつも昼休みに公太と二人で消えるのは、ここに来ていたのか?



「いつもここでお弁当を食べているの?」私はにこやかに話しかける。

 鈴原は、え? って顔をする。そんな話題から入るとは思っていなかったのだろう。


「……ええ」相変わらず声が小さい。


「教室はうるさいものね」

 彼女は黙っている。


「でね、鈴原さん。一緒にメイドさんやらない? 鈴原さん可愛いから似合うと思うな? メイド喫茶楽しかったでしょ?」


 彼女は黙っている。


 イライラスル……。


「鈴原さんも、変わりたいと思ってるよね? いい機会だと思うの。ほら、私も一緒にやるから、何かあったらフォローできるし。公太も一緒に執事やるから、ね」

 公太はやると言っていないけど、やらせる。


 彼女は黙っている。


「鈴原さん。私を頼って欲しいな」

「……どうして」声が小さくて聞き取りにくい。

「だって友達でしょ?」私は素敵に見える笑顔でそう言った。


 前に公太に、公太も鈴原もまとめて私が面倒を見る、と言った。今日も、鈴原のことは私に任せて、と公太に言った。


 公太との約束を反故にするつもりはない。例えそれが本心とは真逆の事でも。


「……はい」鈴原は小さな声で同意した。



「鈴原さんが公太をビンタしたのには驚いちゃった! 鈴原さんもやるのね!」私は話題を変える。面白そうにそう言ってみる。

「あ……、あれは……」

「私が公太に殴られたから、怒ってくれたのよね? ありがと!」

「……いえ……」鈴原は私にお礼を言われてバツが悪そうになった。


 私は公太に殴り返されることを覚悟して殴りにいった。

 でも鈴原は、公太が鈴原に殴り返さないとわかっていてビンタした。


 卑怯だ。


 そもそもあんなへなちょこビンタを公太が避けられないわけがない。


 公太は鈴原に平手打ちされて落ち込んでいる。

 鈴原が公太を傷つけたことは許せない。


「公太と殴り合いのケンカなんて、子供の頃からしょっちゅうだから、気にしないでね!」


 私と公太の間に余計な首を突っ込まないで!




 教室に戻った。

 公太はホッとした顔で鈴原を迎える。


 席に着くと、隣の席の由紀ちゃんが声をかけてきた。

「ちゃんと公太くんに謝るのよ?」


 由紀ちゃんは、私を殴った公太ではなく、先に手を出した私が謝るべきだと思っているようだ。

 それはフェアな言い分だと思った。


「……うん」





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