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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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180.詰んでない?

 ああ、そうですか!

 子育てで(マリアンヌ)に構っている余裕がなくなったと。

 しかも今度の子()は私と違ってライロケル皇国の皇子だ。

 万が一にも死なせるわけにはいかない。


「……まあ、判りますが」

 そう言ったらため息をつかれた。

「判ってくれるか。

 皇王陛下には庇って頂いたが、それでも最初は国内の反発が酷くてな。

 ライロケルの諸侯にしてみればぽっと出の傷物皇妃が世継ぎを産んだことに釈然としないのは当たり前だ。

 普通なら息子共々潰されていたところだ」


「なので(わたくし)共も出来るだけ後援(バックアップ)致しました」

 祖母上(シェルフィル様)が穏やかに言った。

ゼリナ国王(兄上)やテレジアの国王陛下にもご助力をお願いしたところ、快くお力を貸していただけて」


 いや、それ脅しだよね?

 強力すぎる後ろ盾だから、皇国の貴族家が束になってもどうにもならないだろうし。

 それにしても祖母上(シェルフィル様)ってどこまでもテレジアに(たた)るなあ。

 テレジア王家にしてみれば祖母上(シェルフィル様)はかつてゼリナの脅威から身を挺して自国を守ってくれた恩人だ。

 前王家最後の王子の最愛でもあるし。

 その恩はどこまでいっても返しきれまい。


「幸いにして息子は無事育ってくれたんだが。

 やはり一人では万一の場合がある。

 ということで」

「続けて姦ったと」

「言い方は悪いがその通りだ。

 その頃には皇王陛下も軟化してきてな。

 子供達可愛さに連じて私も寵愛して下さって」


 マジで母上(セレニア様)って本当に運がいい。

 ていうか母上、露骨にヒロインやってない?

 祖母上は悪役令嬢だし。

 私は何なの(泣)。


「私が放置された理由(わけ)は判りました。

 でも母上、私をどうするおつもりだったのですか?」

 嫌味が出てしまった。

 だってそうでしょう。

 娘を孤児院に入れてろくに教育もせず、あのままだったら良くて使用人、悪ければ女給兼娼婦コースなのに。


御前(マリアンヌ)には自由になって欲しかった」

 母上(セレニア様)が真面目な表情で言った。

「自由」

「母上も私も王族の(しがらみ)に捕らわれていたからな。

 どこまでいっても王家の義務からは逃れられなかった。

 ならば教育もない孤児として好きに生きてくれれば良いと」


「進路がもの凄く限られる気がしますが」

「サエラ男爵家を通じて支援(サポート)する予定だった。

 男爵家で引き取って教育すれば最低でも平民にはなれる。

 どんな所にも行けるし何でも出来る。

 誰か好きな殿方に嫁いでもいい。

 我々の支援(バックアップ)があれば何でも可能だ。

 ヤバそうだったら相手を潰す」


 そうか。

 私がサエラ男爵様に引き取られる時にも言われたっけ。

 (マリアンヌ)は自由にやっていい、どんな方向に進んでも応援するからと。

 あれはサエラ男爵家というよりは母上やその他の方々の意思だったのか。


「ああ、それで」

「孤児院から男爵家に引き取られて教育されても、普通はせいぜい平民にしかなれまい。

 貴族の(しがらみ)とは無縁でいられる。

 そう思っていたんだが」

 母上(セレニア様)がため息をついて言葉を切る。

 祖母上(シェルフィル様)が呆れた口調で言った。

貴方(マリアンヌ)はほとんど教育を受けていない状態からわずか2年足らずで貴族令嬢として通用するところまで持っていきました。

 驚異的です」


「貴族名鑑にも登録してしまったことだし、そうなったら学院に通わせないわけにはいかなくてな。

 サエラ男爵とも相談したのだが、私がテレジア王都にいたのは十五年も前だ。

 そろそろほとぼりが冷めていると考えた。

 ならば学院に通っても大丈夫だと」


「それでもです。

 さすがの貴方(マリアンヌ)でも王都での生活や学院の講義にはなかなかついていけまいと思っていたのですが。

 寄親のタウンハウスで使用人扱いされながら自力でのし上がったばかりか、気がついたら高位貴族家や大商人とのコネも作っている。

 それどころか誰の助力もなしに新しい型式の歌劇(オペラ)を発案して上演まで持っていってしまって。

 本当に驚きました」


 あのう、それって誤解というか、流されただけで。

 聞いてませんね。

 別にいいですが。


「私の娘がこれほどの逸材だったとは。

 ということで御前(マリアンヌ)を迎えるべく、私も本格的に動き出したんだがな。

 息子も立太子して私の立場も固まったことだし」

(わたくし)も、初孫でもあることですし、出来るだけの助力はしたいと思いまして」

「テレジアに話を持っていったんだ」


 それでか。

 やっと判った。

 テレジア王家が動いた理由。

 私を公爵にするしかなかったんだろうな。

 だって(マリアンヌ)が男爵家の子女のままだったら国や貴族間の力関係でいかようにも動かせてしまう。

 高位貴族の令嬢にしても駄目だ。

 嫁に取られやすくなるだけだ。


 国内よりむしろ外国の王家がヤバい。

 母上にしてみれば実子だものね。

 しかもそれを証明する書類も整っている。

 ライロケル皇妃の立場で私の引き渡しを要求されたらテレジア王家は断れない。


 だってテレジア王家と(マリアンヌ)は表向き何の関係もないんだし。

 下手に動いたらライロケルだけじゃなくてハイロンドからも圧力がかかってきそうだ。

 そしてハイロンドの王太后はゼリナの元王女で、現国王は祖母上に借りがある。

 詰んでない?


 だけど(マリアンヌ)の立場が男爵家の子女じゃなくてテレジア公爵だったら。

 高位貴族、いや准王族本人に対して引き取るとか出来ないよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お母上は幼少期の経験から平民が自由で気楽なものと思ってそうですね [一言] 地縁も血縁もない孤児上がりの顔のいい女の平民の将来なんてそれほど楽観したものではないのではと思いますが、男爵へ…
[一言] お前にかけられる手間はねーから放置したわ 分かるな? でもほっといたら、何故か使えそうな感じに勝手になったから使うわ 分かるな? 余りにも酷くて分かりませんw
[良い点] つまり、サバイバルと思って頑張りすぎたのが間違いだったと・・・ ここまでのすれ違いは悲しいですね。平凡だったら、むしろ好きな進路を選べそうだっただろうに・・ [一言] 好きな道を選んでいい…
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