表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

178/371

177.勅命

 自由にやっているように見える母上(セレニア様)も追い込まれていたと。

 しかもアレだ。

 地方男爵家のメイドという偽装なんか、誰かが駄目出しすればすぐに剥がれる。

 連れ戻されてどこかに輿入れだ。


「で、相談したら奥様が素敵な提案をして下さって」

「素敵ですか」

 何か凄い嫌な予感がするのですが。

「要は私がハイロンドにとって良い駒でなくなればいいわけだ。

 そう、例えば未婚で子持ちとか」


 は?

 何それ。

 信じられない発想だ。

「……要するにご自分の値打ちを堕とすと」

「いい提案(アイデア)だと思ってな。

 子供も産んでみたかったし。

 早速、旦那を探そうとしたら奥様が」


 ああーっ!

 駄目だってそれ!

 何考えてんだよ!

 その奥様、頭がおかしいんじゃないの?


貴方(マリアンヌ)もそう思うでしょう?

 (わたくし)もそれを聞いた時は呆れ果てて何も言えなくなりました。

 どこの馬鹿がわざわざ傷物になりたがるのかと」

「だって母上も未婚で表向きには父親が判らない娘を産んだではありませんか。

 ずっと羨ましかったので」


 馬鹿だ。

 本当に馬鹿だ。

 こんなのが私の実の母親かと思うと泣くに泣けない。

 でも判ってしまうってことは私も同類なんだろうな。

 この母にしてこの娘あり。


「それでサエラ男爵様と?」

「男爵様は最初渋っていたんだけどな。

 奥様が王妃様を通じて国王陛下から命令を出して下さって」

 可哀想な前サエラ男爵様(泣)。

 何が哀しくて陛下直々の命令で浮気しなきゃならないのか。

 男爵が勅命に逆らえるわけがないでしょう。

 ていうか陛下、よくそんな勅命出したな。

 祖母上がよほど怖かったとか?


「それで、母上と姦ったと」

「おお。

 実を言えば当時のサエラ男爵様は私の好みど真ん中でな。

 嫡男が成人しているお歳だったが男盛りの美男(イケオジ)だった。

 一目惚れだったんだが、諦めていたところに奥様直々に推薦して頂いて」

 もう呆れてものも言えない。

 その時の母上、前男爵様の嫡男(現サエラ男爵様)より若かったのよね。

 ん?


「イケオジだったのですか」

「それはもう。

 そもそも私はなぜか同世代の男に興味がなくてな。

 なんだか幼稚っぽい気がして。

 それに父上(デレク様)がまた男前(イケオジ)で可愛がって貰ったんだが、早々に逝ってしまわれたせいで」


 ファザコンになったと。

 いや、判るよ。

 判るけど。

 ひょっとしして、私のおじさま(イケオジ)好きは母上の遺伝なのか!

 そりゃあ、私だって同世代の男なんか興味ないけど。

 サエラ男爵様(兄上)が実の兄でなければ惚れていただろうし。

 何てことだ。

 どうしようもなく判ってしまった。

 セレニア様はまごうことなき私の母上でございます。


「……それで私が生まれたと」

「ああ。

 嬉しかったぞ。

 それはそうなんだが」

 母上(セリニア様)が言葉を切った。


「が?」

御前(マリアンヌ)は見事にサエラ男爵様の桃髪(ピンクヘアー)を受け継いでいて。

 それはいいんだが、目が開いて驚愕した。

 王家の瞳だったんだよ。

 御前(マリアンヌ)の祖父の隔世遺伝で」


 ああ、それは詰んでますね(泣)。

 母上(セレニア様)の瞳はごく普通の茶色で祖母上(シェルフィル様)と同じだ。

 だから油断していたんだろうけど、一世代飛び越えて「王家の瞳」が出てしまった。

 私の祖父上(デレク様)は生粋のテレジア王族だからね。

 当然、王家の瞳持ちだったはずだ。


「私は御前(マリアンヌ)を連れてハイロンドに戻るつもりだった」

 母上(セレニア様)が視線を逸らせながら言い訳を始めた。

「私みたいなふしだらな王女を子持ちで嫁に出したらハイロンドの恥になりますよ、という口上まで準備していたんだが」


(わたくし)が止めました」

 祖母上(シェルフィル様)が割り込んだ。

「危険すぎます。

 セレニアの娘に王家の瞳が出たということは、セレニア自身の出生をも物語ってしまいます。

 そして一度疑惑を持たれたら」

「ズルズルとバレるだろうな。

 私がテレジアの前王家とゼリナ王家の血を引く娘であると。

 大混乱必至だ」


 別にいいですけどね。

 言い訳しなくても。

 大体判りました。

「それで(マリアンヌ)を捨てざるを得なかったと」


「捨ててない!」

 母上が激高した。

「色々考えたんだ。

 でもどうにもならなかった。

 ハイロンドに連れて帰ることは出来ない。

 かといってそのまま御前(マリアンヌ)と一緒に暮らすことも論外だ。

 テレジア王家からは早く国から出て行ってくれとせかされていたし」


「養子やどこかに預けることも考えたのですが、やはり危険過ぎました。

 貴方(マリアンヌ)を手にした者がいつ誘惑に駆られないとも限りません。

 それだけ政治的に大きすぎる存在なのですよ、貴方(マリアンヌ)は」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 血統書付きでリリースしただけだっ
[気になる点] 本作品は第三者視点を一切含まない一人称視点であり、こういった作品では読者の得られる情報が全て主人公が見て聞いた情報なので、読者は完全に主人公になりかわり非常に感情移入しやすいという利点…
[良い点] 男爵夫人すげぇな よっぽど母上の事が気に入ってたんだな 王命で妻公認の浮気をせざるを得なかった前男爵は泣いていい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ