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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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174.輿入れ

 確かに。

 テレジアの血筋は証明出来ないとしても、母上はゼリナ王国王女の娘であることは確か。

 おまけにその王女はテレジア前王家の王子に婚約破棄されている。

 反王家派からしたらいかようにも使える政治的な駒だ。


「デレク様との思い出で一杯の王都を離れるのは名残惜しかったのですが仕方がありません。

 (わたくし)はセレニアや家臣たちを連れてゼリナに戻りました。

 そしてしばらく地方でほとぼりを冷ました後、訳ありの王女として宮廷に復帰しました。

 その際、(セレニア)の身分も(おおやけ)にしたわけです。

 国王陛下(兄上)に頼んで」

「よくそんなことが出来ましたね」


 だって客観的にみたら母上(セレニア様)って修道院に入っていた祖母上(シェルフィル様)が連れてきた父親不明の私生児なのでは。

 そんな得体の知れない娘を認知したどころか宮廷に迎え入れたと。

「セレニアは(わたくし)の娘であることは確かですからね。

 それに国王陛下(兄上)(わたくし)に借りがありましたので」


 まあ、確かに身体を張って(婚約破棄されて)前国王の暴走を防いだわけだし。

 それに礼儀(マナー)の講義で習ったけど、王家って出生がよく分からない家族が結構いたりするらしい。

 後から「実は」といって増えたりもするそうだ。

 血縁より政治的な立場とか国家間の力関係を重視するからなんだけど。


 よくあるのが後添えで嫁いだ王妃の連れ子を王子や王女として認めたりすることで、これは実利的な理由がある。

 王家の子弟は政略的な駒だから。

 どこかの国と縁付きたい時に「それではうちの王女を」と言えるからね。

 もちろん正妃腹の子の方がいいんだけど、国王が「王女」と認めた娘も正規の王家のものとして扱われる。


 なるほど。

 何か疲れてしまった私は無意識に座り直してお茶を飲んだ。

 冷えていた。

「交換を」

 王太子妃様が気づいてメイドを呼んでくれた。

 こういう気配りも重要なんだよね。


 配膳が済むまでみんな黙ったままだったけど、人払いされてしまうとまた面倒くさそうな話が再開された。

 ていうか先手を取って疑問をぶつけてみた。

「よく判らないのですが」

「何が?」

 母上が返してくる。

 ウザいから黙ってて(怒)。


祖母上(シェルフィル様)はハイロンド王国王太后殿下なのですよね?」

「ええ。

 今の(わたくし)の身分はそうですね」

「それで母上(セレニア様)はライロケル皇国皇妃陛下である、と。

 何でそうなったんですか?」

 いかん。

 つい地が出てしまった。


「嫁に行ったんだよ」

 簡単に切って捨てる母上(セレニア様)

 そんなことは判ってるよ!

 そうなった経緯を聞いてるんだよ。


 祖母上(シェルフィル様)が残念なものをみる視線を母上(セレニア様)に投げながら話し始めた。

「ゼリナに帰国した(わたくし)はしばらく王宮で国王陛下(兄上)を手伝っていたのですが、そんな(わたくし)に縁談が持ち込まれました。

 ハイロンドの国王陛下が後添えを望んでいるとのことで、(セレニア)も王女として迎えると」

「後添えでございますか」

「数年前に王妃殿下が儚くなってしまわれたそうでございました。

 普通なら国内から未婚の令嬢をお迎えするのが筋ではと申し上げたのですが」


 御祖母(シェルフィル)様はふうっとため息をついた。

「ハイロンドの国王陛下はまだお若くて。

 王妃様との間に子が出来なかったとのことでした。

 これはご自分に原因があるのかもしれないとお考えになられたようで。

 次代の王位は係累から養子として迎えて継がせる方針というお話でしたが、それでも王妃不在という状況は国家として問題です」

「ああ、確かに。

 王妃がいないと国として安定を欠きますね」


 テレジア(うち)の王妃様が納得したように言った。

 これまでの濁流のような展開に呑まれていたみたいだけど御自分に関係がありそうな話題になって復活したらしい。

 王太子妃様は沈黙を守っているけど。


「後継者問題はとりあえず解決済みなのですが、治政のためにはやはり王妃がいた方が良い。

 もっともこの場合、王妃に求められるのはむしろ経験や他国とのコネ、および後ろ盾です。

 国内の年若い妃ではそのお役目を果たすことが難しい。

 更に子が出来たら将来拗れそうで。

 国内の貴族の力関係の変化を誘発することも得策ではないと。

 そういう理由(わけ)でゼリナの王女である(わたくし)を迎えて後ろ盾を得たいとのことでございました。

 国王陛下(兄上)は、出来れば受けて欲しいと」


 うーん。

 まあ、祖母上(ばあちゃん)はともかく母上の存在は、確かにゼリナにしたらウザいよね。

 政治的な不発弾みたいなものだし。

 しかも時限装置付きで、いつかは爆発する。


 礼儀(マナー)の授業で習ったんだけど、祖母上(ばあちゃん)が正規の王女ならその腹から生まれた母上も王家のものだ。

 王女として認めるかどうかは国王陛下次第だけど、王家にとってみたら駒は多い方がいい。

 逆に認めないとしたら祖母上(ばあちゃん)が反逆する可能性がある。

 だから母上はゼリナ王室の王女として迎えられたのか。

 でもやっぱり国内においておくといつ爆発するか判らない。

 よって母親(シェルフィル様)共々ハイロンドに押しつけてしまおうと。

 そうすればもうゼリナの王女ではなくなるからね。


「色々考えた末に、(わたくし)はそのお話をお受けすることにしました。

 (わたくし)もゼリナ王家の者とはいえ、立場は不安定でございましたもので」

「私もそのままだと将来どうなるか判らなかったしな。

 母上についていけば身分を改変(リセット)出来る」


 納得。

 未婚で父親が判らない娘を産んだ王女って醜聞(スキャンダル)持ちではあるんだけど、乞われて他国の王家に嫁いだとなれば評判を回復出来る。

 それにご本人はゼリナ王国の正規の王女であることは間違いない。

 未婚だし。

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― 新着の感想 ―
[一言] つまり、主人公に対して、4つの国が「我が国の者」と主張できる、と。 ・テレジア王国……元王子で公爵の孫だから、我が国の公爵家の者! ・ゼリナ王国……祖母は我が国の王女であり、母も王女としての…
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