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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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171.婚約破棄

「つまりデレク様側も口実を探していたと?」

「はい。

 元々デレク様は、あのまま御自分が王位を継承する事に不安があったようでございます。

 覚悟や気力はともかく体力がついていかない。

 国王がそれではテレジアは混乱するばかりと看破しておられて」

 シェルフィル様はため息をつかれた。

(わたくし)が王妃として出来る限り助力(サポート)致します、と申し上げたのですが。

 さすがに限界があるのは(わたくし)にも判ります。

 ご自身のお身体については他の者がどうにか出来るものではございませんから」


 やっぱりか。

 祖父上様(おじいちゃん)は自分の王位継承を阻止したいと思っていたのか。

 大国の姫君との婚約破棄なんか絶好の口実だものね。

 「ざまぁ」で自分どころかテレジア王家自体を潰す。

 そして、あくまでこれは現王家がやったことで、テレジア王国には問題はないと言い張れば。


「それに納得されたのですか?」

 思わずといった風に王妃様が口を挟んだ。

 考えられないことなんだろうね。

 王家の者が自ら責任放棄して逃げるんだし。

 貴顕の矜持はどこにいった。


「納得はしなかったのでございますが、懇々と説明されて説得されてしまいました。

 何よりデレク様がそう望んでおいででしたから。

 (わたくし)としてはできる限りお力になりたいと」

 惚気(のろけ)られた。

 うーん。

 乙女ゲーム臭くなってきたぞ。

 祖父上(じいちゃん)祖母上(ばあちゃん)の時代にそんなこと(ロマンス)が繰り広げられていたとは。


「ですが、それでは何の瑕疵も無いシェルフィル様の被害が大きすぎます。

 婚約破棄されるなどとは」

 王太子妃殿下が憤懣やるかたない口調で言った。

 この人もいい度胸だ。

 やっぱり王家って(泣)。


(わたくし)のことは良いのです。

 実際、当時の(わたくし)ゼリナ国王(父上)のやり方に反発しておりましたので。

 (わたくし)はたまたまデレク様という素晴らしい婚約者に当たりましたが、(わたくし)の兄弟姉妹共は皆、父上の政略で動かされておりました。

 一矢報いることが出来るのなら、(わたくし)は修道院でもどこでも行く覚悟で」

 やっぱり乙女ゲームだった(泣)。


「とても現実(リアル)とは思えません」

 王妃様が唖然としている。

 そうだよね。

 デレク様もだけど、シェルフィル様もどうかしている。

 お父上は国王陛下で、その判断は国家の方針そのものだ。

 王女がそれに逆らって何かするなんて。


「デレク様は本気でございました。

 驚いた事にデレク様は国王陛下(ご自身のお父上)を筆頭に自国の重鎮を説得してしまわれました。

 凄い方でございました。

 戴冠していれば、きっと立派な国王陛下になられたはずでございます」

 いや、そんなマイナス方向に凄くてもね。


 何となく判ってきた。

 デレク様ってアレだ。

 やれば出来るけどやりたくないタイプだ。

 やらずに済ませるためには何でもやるタイプでもある。

 確かに道化(トリックスター)だ。


「デレク様は、もともと国王などやりたくなかったのでは?」

 つい言ってしまった。

 実によく判る。

 私の祖父上(じいちゃん)だから。

 さっき誰かが(マリアンヌ)のことを「デレク様そっくり」と言っていたけど、そういうことね。

 建設的なナマケモノだったんだろうな。


「はい。

 少なくとも積極的に王位を継ぎたいとは思っていらっしゃらなかったと思います。

 もちろん、お身体が丈夫であればテレジア王国を統治することを躊躇されなかったでしょうが。

 ですが、出来れば逃げ……どなたかにお譲りしたいと」

 逃げ、と言ったな?

 ついうろんな目を向けてしまった。

 シェルフィル様、ひょっとして貴方も。


我が娘(マリアンヌ)、その目つきは止めろ。

 仮にも祖母だ。

 失礼だろう。」

 いや、仮じゃなくて本物だけど。


「失礼しました」

「いいのよ。

 そういう理由で(わたくし)は無事婚約破棄され、失意の内に帰国致しました。

 ゼリナ国王陛下(父上)は怒り心頭で、(わたくし)はそのまま修道院に」

 本当に行ったのか。

 そんなの乙女ゲームでしかあり得ないと思っていたんだけど。

 でもヒロインがいなかったのよね。

 それって乙女ゲームと言えるんだろうか?


 いやいや、これは現実(リアル)だ。

 遊んでるんじゃないんだから。

 でもあれ?

 今まで気づかなかったけど、(マリアンヌ)の祖父上がデレク様だとしてもシェルフィル様が祖母上なはずがないのでは。

 だって婚約破棄されて帰国して修道院に入ったのよね?


「うん。

 信じられないだろう?

 いやー、私も人の事は言えないけど、母上って本当に凄いから」

 セレニア様がケラケラ笑いながらおっしゃった。

 これが私の母親か(泣)。

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― 新着の感想 ―
[一言] 母娘そろってメイドに身をやつして本命と本懐を遂げたのか 王女のやり口じゃないわな
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