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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第四章 離宮

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141.生存競争

「モルズ様?

 ああ、シストリア様にヒルデガット様、サラーニア様も!」

 かつてのお茶会仲間である高位貴族令嬢が勢揃いしていた。

 しかも皆様、舞踏会用正装(ドレス)だ。

 私と違って白無垢じゃないけど。


 私の方は、これから成人式(デビュタント)なので上から下まで白だ。

 よく観ると白は白なりに豪華な刺繍とか飾り付けがちりばめられているんだけど。

 しかも金や銀のアクセサリーが嫌というほどつけられている。

 髪留めなんかティアラじゃないかと思えるくらい眩しい金だし。


「お久しぶりでございます。

 サエラ様」

 モルズ様が言って、全員が軽く(カーテシー)をとった。

 まだ私はサエラ男爵令嬢だからそれでいいんだけど。

 でも皆様、高位貴族ですよね?


「良いのです。

 (わたくし)共にとっては、サエラ様は既に」

「あの、どうかマリアンヌとお呼び下さい」

 反射的に言ってしまった。

 だってもうすぐ私はサエラじゃなくなるんだし。

 成人(デビュタント)後に面倒になる。

「……よろしいのですか!」

「ありがとうございます」

 なぜか感激する皆様。

 男爵の庶子の名前呼べたからといって何で?


 いやそれはもちろん、名前呼び出来るのは特別に親しい間柄だけだけど。

 あ、そうか。

 これ、(マリアンヌ)が皆様を「特別なお友達」と認定したことになるのか。

 拙った?


「どうか(わたくし)をユベニアと」

 モルズ様のお名前はユベニア様なのか。

「ライラでございます」

「モーリンと申します、マリアンヌ様」

「ルミアとお呼び下さいませ」

 シストリア様、ヒルデガット様、そしてサラーニア様のお名前も頂いてしまった。

 いかん、混乱しそう。


「こちらこそ。

 とりあえずおかけになって下さい」

 そう、みんな立ったままなのよ。

 私もそうだけど。

 身分から言ったら皆様は座って私を待つはずなのに。


「いえ。

 お忙しい所をお邪魔して申し訳ございません。

 ですが、どうしても事前にお目にかかっておきたくて」

 モルズ様、じゃなくてユベニア様が言った。

「はあ」

「お見事でございます」

 サラーニア様、ていうかルミア様はなぜか頬を紅潮させている。

「やはりサエラ様、いえマリアンヌ様は」

「とにかく私共の心はマリアンヌ様の元にあることをお伝えしたかっただけですので。

 それでは失礼いたします」

 ヒルデガット様いえモーリン様が遮るように言った。

 そして一斉に頭を下げる。

 そのまま皆様、出て行かれてしまった。

 何だったんだろう。

 ていうか皆様、しれっとこの離宮に入ってこられたよね?


「どうしてもとおっしゃられるので断り切れず」

 わ。

 いつの間に居たの?

 しばらく見なかったから忘れかけていた執事の人(アーサーさん)が頭を下げながら弁解していた。

「アーサーさん。

 今までどこに」

「アーサーと。

 ロンバート様の元で修行しておりました。

 家令見習いでございます」

 さいですか。

 まあ無事ならいいけど。


「家令見習い?

 執事ではないの?」

「テレジア公爵家には執事が何人かいますが、それとは別に家令の助手のような立場ですね。

 ところで時間が押しております。

 こちらへ」


 強引に案内されて移動する私。

 ちなみに専任メイド(グレース)専任侍女(サンディ)付きだ。

 離宮の中なので護衛はいないんだけど、見てるとグレースが何かやっている。

 私に付き従いながらも時々寄ってくるメイドに短く指示していたりして。

 サンディも下僕(フットマン)から報告されては頷いて命令している。

 警戒態勢?

お嬢(マリアンヌ)様はお気になさらぬよう」

 そう言われてもね。

 気になるよ。

 でも私には何も出来ないからなあ。

 せめて覚悟だけは決めておこう。


 離宮内を延々と歩いてエントランスを出ると警備兵が整列していた。

 派手な近衛騎士の姿もある。

 物々しいなあ。

 馬車が回されて来たのでグレースの手を借りて乗り込むと前後に騎兵がついた。

 ここ、王宮内よね?


「ここまでする?」

「王家や王政府内部でも対立があると報告を受けております。

 叙爵までは大丈夫と思いますが、万一に備えます」

 これで万一の備え?

「叙爵したらどうなるの?」

「公爵殿下に相応しい警備体制に移行します」


 どんなのだろう。

 私の前世の人が読んでいた小説では王家の人の周りに宰相の息子とか騎士団長の甥とかがいたけど。

 でもあれって乙女ゲームだからそうなっていただけで、実際には現役ゴリゴリの武官が配置されるんだろうな。

 でも私、王家の者というわけでもないし。

 それどころか公爵だとしたら領地貴族だから自力で自分を守る必要がある。

 公爵領には騎士団があるんだっけ。

 でもまだ正式に結成されてないらしい。

 今までは近衛騎士団が守ってくれていたんだけど、授爵したら引き上げるだろうし。


「近衛騎士って借りられないの?」

 つい聞いたら同乗しているサンディが教えてくれた。

「近衛騎士団も一枚岩ではありません。

 というよりは貴族家のものがほとんどですので、実家の意向によっては敵対してくる可能性もございます。

 あまり信用しすぎるのは危険かと」

 ここでも生存競争(サバイバル)か(泣)。

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― 新着の感想 ―
[一言] 毎日更新お疲れ様です。突然窮屈な貴族社会に放り込まれ流されながらも徐々に注目されて行く主人公が魅力的で作者様が意図しているかわかりませんがなんとも言えないゆるふわ感がこの作品の魅力と思ってお…
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