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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第四章 離宮

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129.愛と尊敬

 しょうがない。

 お城での生活にはすぐに慣れた。

 別に閉じ込められているわけじゃないからね。


 離宮にも広いお庭があって自由に散歩出来たし、屋上や尖塔に上れば王都が見渡せる。

 王宮の敷地内にある離宮とはいえ、一応は独立した区画なので入るには許可が必要だし、門や周囲には近衛兵が巡回していて招待されない者は侵入不可。

 もし無断で入ったら王家に対する反逆になる。

 なのでいつ誰かに遭遇しやしないかとビクビクしないで済むようになった。


 家庭教師の方々も今まで通り来て頂けて、勉強部屋で授業を受けている。

 そういうお部屋があるのよ。

 お城ってやっぱりスケールが違う。

 学院は当面、欠席することになった。

 通学途中の安全が保障出来ないらしい。

 復学? する時が来るだろうか(泣)。


「騎士の方達は?」

(ギルボア)の話では、まだ訓練不足だそうでございます。

 かといって近衛騎士の方々を毎回お借りするわけにも参りませんので。

 お嬢様にご迷惑をおかけして申し訳ございませんと申しておりました」

 そんなことはいいんだけど。

 でも学院はともかく、モルズ様方のお茶会にも行けなくなったのは堪えた。

 いつの間にか楽しみになっていたみたい。

 私も高位貴族令嬢の付き合いに染まっていたらしい。

 ヤバくない?


 そうこうしているうちにある日、訪問があった。

 コレル閣下が訪ねて来てくれた。

 早速応接間にしている居間(リビング)に通して貰う。

「お元気そうで安心しました」

「そうでもないのですが。

 まだ大丈夫ですけど、いつまで持つか」

 言外に不満をちりばめて答える。

 私、いつの間にこんな手業(テクニック)を。

「お嬢様のデビュタントが決まりました」

 いきなり言う准男爵(コレル)閣下。

 さいですか。


「突然ですね」

「色々と加速しているようです。

 あちこちからの圧力が高まっているとのことで、申し訳ありませんが」

 別にいいですけど。

 どっちみち私の意思なんか関係ないでしょうし。


「デビュタントというと、エスコートはコレル閣下が?」

「いえ。

 ご身分に相応しい方が選ばれると思います。

 近日中に連絡があるかと」

 相応しい身分って何よ(泣)。

 考えない考えない。


 黙々と勉強しているうちに季節は初夏になった。

 私の前世の人の国には春と夏の間に梅雨という季節があってずっと雨が続くらしいんだけど、テレジア王国にそんなものはない。

 そもそも基本的には夏と冬しかないと言っていい。

 私が春とか秋とかを想像(イメージ)出来るのは前世の人の記憶があるからだ。

 もっともテレジア以外の国では四季がはっきりしているところもあるみたい。

 よくは知らないけど。

 そのうちに世界地理とかも勉強しないといけないのかなあ、と思いつつ夏物のドレスを着ている。

 それでも汗ばむくらいで、既に夏に突入しているのかも。


 グレースたちメイドもお仕着せが軽装になっている。

 乙女ゲームだと一年中同じ服装だった気がするけど、そこら辺は現実の方が強いわけか。

 攻略対象がゲーム開始前に全滅するくらいだものね。

 でも、ゲームというか小説上の設定って結構強固に残っている。

 (ヒロイン)が単なる孤児じゃなくて高位貴族の血を引いているところとか、王家からの干渉があることとか。

 エリザベスが王家の手の者だったのは意外だったけど、ひょっとしたらそれも小説上の設定だったのかもしれない。

 そもそも前世の私、小説を最後まで読んでない。


 小説では攻略対象(イケメン)の攻略が一段落ついた辺りで王家から色々横やりが入るんだけど、ちょうどその辺りで記憶が途切れている。

 つまり、今の私はもう小説の覚えている部分を通り過ぎている。

 これから先は未知の状況なのよね。

 もっとも前世の私が読んでないだけで、小説自体は最後まで続いていたはず。

 でもねえ。

 もう元々の粗筋とは全然関係ないくらい別の話になっちゃっているような?

 グレースとかコレル閣下とかサンディとか、小説には出てこなかったはずだし。


 ん?

 ちょっと待って。

 乙女ゲーム小説って言っているけど、ゲームじゃなくて小説だから筋はひとつだ。

 つまり攻略対象を選ぶとかはなかった。

 悪役令嬢も出てこない。

 (ヒロイン)は学院で貴公子達を次々に攻略していって逆ハーを達成するんだけど、それっていわゆる恋愛(LOVE)じゃなかったような。

 むしろ敬愛(リスペクト)

 じゃないと露骨な18禁になってしまう。


 私の前世の人の国って、エロい情報が蔓延している割には実際にヤッたりする人の割合はそんなに多くなかったみたいなのよ。

 特に未成年を対象とする娯楽については、虚構の中でこそ派手で過激だったけど、それを詳細に表現することはまずなかった。

 つまり性交(セックス)があったとしたって普通は微に入り細にわたって描いたり描写したりはしなかった。

 なので逆ハーといっても貴公子達が(ヒロイン)を囲んでちやほやしているだけで乱行までの描写はなかったと思う。

 物語(ストーリー)的にはあったかもしれないけど。


 そもそも一人の女性が多人数の殿方を相手にするって、その女が色情狂でもない限り輪姦(レイプ)になってしまう。

 そんな話は誰も読みたくないわよね?

 読みたい人がいても、それは乙女ゲームとは違うだろうし(笑)。


 何を言いたいのかというと小説の(ヒロイン)が貴公子の方々を「攻略する」っていうのはあくまでお友達としてという意味。

 粗筋(ストーリー)でも「貴公子達の愛と尊敬を集める」になっていたのよ。

 つまり恋人じゃなくてむしろ女主人公(ヒロイン)協力者(ファン)

 それが逆ハーの正体だとしたら。


 改めて考えてみたら、それって私とモルズ様方の関係に近くない?

 だって実際にモルズ様方から「力になる」と宣言されているし。

 愛と尊敬を集めているまでは思わないけど、私が高位貴族令嬢の仲間(ハーレム)? を作っていると言えなくもない。

 ひょっとしたら、今の状況って小説の粗筋をなぞってる?

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