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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第四章 離宮

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128.いばら姫

「こちらでございます」

 家令の人に案内されたのは客間らしかった。

 公爵家のお客人という設定だからか。

 凄かった。

 公爵邸の客間だよ?

 つまり泊まるとしたら王族。

 予想に反してキラキラピカピカじゃなかったけど、家具や寝具は重厚かつ上品で歴史を感じさせられると同時に新品なのが判った。

 全部、新しく用意したのか。

 それはそうかもしれない。

 先代のテレジア公爵が亡くなってからこのお城も閉めていたはずだし。


「ご用がございましたらお呼び下さいませ」

 家令の人が一礼して去ろうとしたのでつい、声を掛けてしまった。

「あの」

「いかがいたしましたか?」

 思ったより穏やかに聞かれた。

 良かった(泣)。

「ご迷惑でなければ、お名前を伺っても?」

「これは失礼いたしました。

 私はロンバート・シェリダンと申します。

 臨時にテレジア公爵家離宮(タウンハウス)家令代行を務めさせて頂いております」

 セバスチャンじゃなかった(笑)。


「ロンバート様」

「ロンバート、もしくはロンとお呼び下さい。

 敬称は不要にございます」

 ロンバートさんの身分は判らないけど、間違いなく貴族だろうね。

 代行とはいえ公爵家の家令に任じられるくらいだ。

 下手すると伯爵級でも不思議じゃない。


「判りました。

 よろしくお願いいたします」

「ご滞在を楽しまれることを願っております」

 一礼して去る家令代行(ロンバートさん)

 意味深な台詞(セリフ)を残さないでよ!

 どっと疲れてしまった私は気がついたらソファーに座っていた。

 グレースがお茶を配膳してくれている。

 慣れてない?


「グレース、知ってたの?」

「事前にお邪魔して確認しております。

 お嬢様の専属メイドとして当然でございます」

 私が知らない間に着々と準備を進めていたらしい。

 貴族ってこういうものなのかなあ。

 自分は何も知らないし何もしてないのに臣下や使用人がどんどん話を進めてしまうのよ。

 いい加減慣れないといけないとは思うんだけど、いかんせん私自身の意識はまだ男爵家の庶子で、もっと言えば元孤児だ。

 さらに言うと日本の女子高生で(泣)。

 全部自分で決めて自分でやるのが当たり前な生活が当たり前(デフォルト)なんだけど。


 でも今更どうしようもない。

 嫌だとか言っても押し切られるだろうし。

 それでも。

 私は乙女ゲームの主人公(ヒロイン)だ。

 流されるだけで終わるのは嫌だ。

 別にイケメンと恋愛したりゲットしたりしたいとは思わないけど、誰かの人形になるつもりもない。

 今は流されてるけど、いつか波に乗ってやる。


 ふと気づいて周りを見回してみた。

 豪華なお部屋で、ミルガスト伯爵家の客間より数段上みたい。

 例えば同じお部屋にベッドがあったりはしない。

 寝室は別の部屋になるんだろうな。

 でもお城だからお部屋自体はむしろ狭いのよね。

 窓も小さい。

 部屋の内装のせいで圧迫感は感じないんだけど、よく見たら壁も床も天井も石造りだ。


「グレース」

「何でございましょう」

「ここ、客間よね?」

 私の聞きたいことを判ってくれたらしい。

「さようでございます。

 とはいえ、最高のお部屋とは言い難く。

 準備が済んでいないこともございますが、そもそもあまりご身分が高い客人が使うことは想定されておりません」


 ああ、そうか。

 だってここ、元は王宮の離宮なんだよ。

 持ち主は王家だから、所有者より高位身分の貴族が泊まっていくことはまずない。

 ていうかここに泊めるくらいだったら王宮や迎賓館でお部屋を用意すれば済む。


「準備が出来ていないって?」

「先代のテレジア公爵様がお隠れになった後、この離宮はずっと閉められていたそうでございます。

 今回お嬢様の居城になることが決まって急遽開いてみたところ、内装からやり直す必要があったとのことで」

 それで今までかかったと。

 でもまだ全部準備出来たわけじゃないんだろうね。

 とりあえず使う場所だけは整えたけど、全体としてはまだ廃屋なのかもしれない。


「それなら見学とかは無理そうね」

「ご希望なら可能ですよ。

 見晴らし台などはいつでも上れるとのことでございます」

 それは面白そうだけど、今はいいや。

 何か疲れた。


 とりあえず自分が使う場所だけを案内して貰った。

 お城の大浴場はまだ整備中ということで、当面は客間のお風呂を使うことになるらしい。

 食事もお部屋でとる。

 だって私、現時点では男爵令嬢でしかなくて、このお城の客人の立場だから。

 お城の主人はテレジア公爵家というか公爵なんだけど、現時点では不在だ。

 ということになっている。

 なので私としてはあまり動き回らずに過ごすことが推奨されているらしい。


 作為を感じるなあ。

 私、隔離されているみたい。

 誰も何も言ってくれないけど、どうも最近私に接触しようとする方々の攻勢が激しくなってきているらしいのよね。

 学院内は言わば治外法権なので、関係ない貴族の方々は手出しが出来ない。

 誰かの命令を受けた生徒や教授が接触を謀ろうとしてもグレースや他の人が防いでくれていた。

 お茶会やパーティのお誘いは私がまだデビュタント前ということでミルガスト伯爵家が食い止めてくれていたんだけど。

 それも限界になってきたのかも。


 だって学院に通学する途中とか、ミルガスト伯爵邸にいる時ですら物理的に押し入られたら抵抗出来ないものね。

 だからお城に閉じ込めたと。

 私はいばら姫か!

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公 流されているとか周囲の言われるままとか 思っているけど、家臣団や監視記録を見ている 高位の方々からは、「超然としている」様にしか見えんのだな 原点 孤児院育ちで普通なら視点が上がり…
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