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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第三章 育預

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113.なんで?

 それもか!

 私がミルガスト邸で使用人宿舎に入れられていたのも計画のうちだと。

 思わず睨んでしまったらコレル閣下に弁解された。

「いや、それはこちらの事情だ。

 ミルガスト家には詳細な情報が伝わっていなかった。

 ただ男爵家の庶子を預かるだけだと思っていたらしい。

 私ももちろんその時点では知らなかった」

 さいですか。

 だから使用人宿舎に入れてほったらかしておいたと。


 でも、私にとってはむしろ良かったのかもしれない。

 いきなりタウンハウスの客間なんかに通されて貴族令嬢扱いされる方がきつかっただろうね。

 だって私、ミルガスト邸に来た時点では貴族の礼儀(マナー)なんかほとんど知らなかったわけで。

 学院に行く前にお屋敷内で失敗して心が折れていたかも。


 いや実際、使用人宿舎って結構快適だったのよ。

 夏は暑いし冬は寒いけど孤児院に比べたら天国だった。

 個室の自分のベッドで寝られるんだよ?

 人に気を遣うこともない。

 サエラ男爵様のお屋敷では生活水準は高かったけど、ずっと気を遣っていて疲れたから。

 部屋に引っ込んでのびのび出来るって最高。


「実はそれでもあまり期待されていなかったようなのだが。

 なかなかやるな、でもどこまで持つかな、といった評価だったそうだ」

 サエラ男爵様にも報告が行っていたらしい。

 それはそうか。

 私の身分はサエラ男爵家の令嬢だものね。


「ところが悠々と過ごしながらもメキメキ実力を付けていっているという報告が入った。

 更にカリーネン家の令嬢と親しくしていると」

 コレル閣下が呆れたように言った。

「姪のステラが学院で噂を聞いて調べたらしくてね。

 伯爵(兄上)にも報告された。

 その時点でやっと私に情報が来て」

 ミルガスト伯爵の末の令嬢はステラ様というのか。

 未だに会ったことも見たことすらないけど。

 どうも、ステラ様は最近学院に通ってないらしい。

 いい輿入れ先でも見つかったのかもしれない。

 いやそんなことはどうでもいい。

 問題は私の扱いだ。


「カリーネン様とは学院で知り合いまして」

 乙女ゲーム小説の支援者(サポートキャラ)なのは言う必要はないでしょう。

「そうだな」

 コレル閣下が苦笑いした。

「聞いていないかもしれないが、カリーネン家は王家の手の者だそうだ。

 むろん極秘だが」

 やっぱし。

 ていうか「上」って王家だったのか!

 それはそうかもしれない。

 だってテレジア公爵家の問題なのよ。

 そこら辺の貴族の手に負えるはずがない。

 同じ公爵家だって無理だろう。


「一応、教えて貰ってはいます。

 王家というお話は今初めて聞きましたが」

「うん。

 私も初めて知ったのだが、カリーネン男爵家はどうやらそういうお役目を請け負っているということだ。

 男爵だが大商人だから社交界でも顔が効くし、高位貴族との付き合いも多い。

 もっとも別に王家の子飼いなどではなく機に応じて『手の者』のお役目も果たす、といったところらしいが」


 前にエリザベスが言っていたのはそれか。

 「無茶振りされる」って、無茶過ぎない?

 しかもカリーネン男爵様ご自身だけじゃなくて息女であるエリザベスまで使っているとは。

 うーん。

 王家に取り入るにはそのくらいはしないといけないのかも。

 世の中厳しい。


「カリーネン様の任務は私の監視と支援だと伺いましたが」

「その辺りはよく知らないのだが、そんなところだろう。

 (マリアンヌ)の手伝いはするが、誘導したり助けたりはしないように、と指示されていたそうだ。

 だから学院での(マリアンヌ)の成果はすべて君の努力の結果だ」

 それはどうかなあ。

 実際の所、エリザベスがいなかったらもっと苦労していたはずだし。

 でもまあ、終わったことだから別にいいか。

 それより本題から逸れている気がするのですが。


「そうだな。

 私に話が来て(マリアンヌ)を見定めたところ、素晴らしいの一語に尽きた。

 そう報告したら、そこから話が一気に動き出してね。

 高位貴族家のお茶会に送り込んでみたら大歓迎されたというではないか。

 それどころか歌劇(オペラ)の楽曲を提供したと」

 いやあれはですね。

 ちょっとした間違いというか。


「学院でも確固たる立場を築いていると報告された。

 下位貴族の淑女の間では評判だと聞いている。

 これだけの逸材を逃してなるものかということでね。

 (マリアンヌ)をミルガストの育預(はぐくみ)にすることにした」

「そうなのですか。

 それも王家の指示で?」

「いや、当家の判断だ。

 事前に王家にお伺いを立てたが反対はされなかった。

 王家、いや王政府にとってはどうでも良かったようだ」

 どうでもいいのかよ。

 それで男爵家の庶子風情が領地伯爵家の令嬢扱いされることになってしまったと。


「むしろ都合が良かったのではないかな。

 (マリアンヌ)が高位貴族令嬢として上手くやれるかどうかの確認(テスト)にもなる。

 そして君は上手くやった。

 おそらく、それで最後の障害が取り除かれたのだろう。

 王家から通達が来た」


「マリアンヌ・サエラ令嬢の成人式(デビュタント)と同時に叙爵する、という決定が伝えられてね」

 サエラ男爵様が頷きながら言った。

「ついにその日が来たか、と感慨深いものがあったよ」

 なんで?

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