華やかで、そして悲しい舞踏会
輝くような金髪に、おおきな目が印象的な美少女が、光に包まれて踊っている。
彼女を抱きしめるように向かい合い、優しいまなざしを微笑ませるのは黒髪の青年。美少女の青いドレスをこわれもののように、逞しい腕をそっと腰に回して、見つめ合う。
ミラーボールが天井でくるくる回る。
流れるのは当時流行りのディスコ・ミュージック──
50年近く前の、1970年代の舞踏会の映像を、私は2025年の部屋で一人、眺めていた。
美少女は三年前、74歳で病死した。
ハンサムな青年のほうは名前も知らない。歴史に名を残さなかった。
ここに映るひとの大半は、もう、この世にいないかもしれない──
こんなに華やかなのに、なんて悲しい舞踏会の映像だろう。
遠く時を飛び越えて、今、たった今のことのように、私の目の中で繰り広げられているというのに。
私は中世ヨーロッパ貴族のコスプレをして、映像に合わせて優雅に踊った。
もう、確実に誰も生きていない時代の物真似をしたほうが、気が粉れる。
未来など、ないのなら──
遠く、できるだけ遠い時代へ、今ここにある現実から逃避したほうがましだ。




