31 無職の少年、今日の予定①
▼10秒で分かる前回までのあらすじ
ダンジョンからどうにか生還する
しかし、少年を鍛えるという目的を果たせたとは言い難かった
朝、自宅にて目覚めると、台所でスライムが盗み食いをしていて……
少し遅くなった食事。
結局、果物は全部、スライムが食べちゃった。
アルラウネさんには野菜を提供する。
植物が植物を食べるのも、何だかおかしな感じ。
あ、果物でも同じことか。
『ウオゥ』
『楽しいポー』
食卓から離れたところでは、ブラックドッグがスライムとコロポックルを器用に鼻先で跳ねさせている。
「こら、あんまり暴れないの。埃が舞うでしょ」
『むぅ』
姉さんに叱られ、ブラックドッグの耳と尻尾が垂れる。
『ワプッ⁉』
『間一髪ポー』
ブラックドッグが動きを止めた為、スライムとコロポックルが床に落ちた。
コロポックルは寸前で浮いたみたい。
「仲が良いのも考えものかしら」
「それより、今日の予定は? また外に行くつもり?」
「今日は外出は止めにしておきましょうか。慣れない疲れが溜まってるかもしれないし」
「そう? なら一度住処に戻ろうかしら」
『ナント⁉』
食卓の外からも反応があった。
ピョンと食卓の上に跳び乗って来たスライム。
「こら、さっき注意したばっか――」
『リンゴ、ホシイ!』
「今朝食べたでしょ?」
『モラウ、イッタ』
「そんなこと言ってないわよ」
あ、もしかして、僕が言ったことかな。
「またお土産を貰って来るって、僕が約束したんです」
「さっすが弟君、優しいわね」
「ならどうするの?」
「アタシがパパっと行って済ませてくるわよ」
『イッショ、イク』
「だーめ。コロポックルを連れてかないと帰れないんだし、果樹園を見てはしゃぐ面倒なんて見切れないわ」
『ションボリ』
「なら僕も――」
「休ませてあげたいのに、出掛けたら意味ないでしょ」
「付いて行った方がいいかしら?」
「いいわよ、別に」
いよいよ連れて行って貰えないと分かり、スライムがゲルゲルしてる。
「姉さんが貰ってきてくれるから、一緒に待ってようね」
『トモダチ、イッショ』
「そうだね」
平べったくなったまま、這って寄って来る。
足元にも感触が。
視線を向ければ、ブラックドッグがすり寄って来ていた。
「大人気ね弟君。でも残念でしたー、弟君はお姉ちゃんのモノだから」
「何を張り合ってるんだか」
でもそうか、姉さんは出掛けるのか。
休めって言われたばっかりだし、今日は家でのんびり過ごそうかな。
食事を終えてまったりしていると、玄関の扉がノックされた。
と同時に勢いよく開け放たれる。
「おっはよー!」
「確かに、今回はノックはしてたけど。直後に開けたら意味が無いわ」
「ほぇ?」
「今度はノックをしてから一呼吸置いて開けるようになさい」
「扉を開けるのに、呼吸しなきゃいけないの?」
「呼吸が目的なんじゃなくて、間を空けることが目的なの」
「んんんー?」
アルラウネさんの説明も、妹ちゃんには通じていない様子。
姉さんと共に苦笑を漏らす。
「今日のお出掛けは無しよ。妹ちゃんも身体を休めておきなさい」
「そなの? って言っても、まだ何もしてなかった気がするけど」
「ソレはソレ、コレはコレよ」
「よく分かんない」
「じゃあ、留守をお願いね。アタシが居ない間、ブラックドッグが弟君を守ってあげて」
『承知』
「どっか行くのー?」
「ちょっと、ケンタウロスの集落にね」
「ウチたちはお留守番?」
「そういうこと。どうせすぐに戻って来るしね」
姉さんが浮いていたコロポックルを抱きかかえる。
『抱っこされたポー』
「アナタはアタシとお出掛けよ」
『またお外へ行くコロ?』
「そうよ。じゃあ行って来るわ」
≪門≫
「って、ちょっと待ちなさい!」
「待って姉さん!」
図らずも制止の声が重なる。
「何? どうかしたの?」
出鼻を挫かれ、驚き半分不満半分といった様子。
だからって、このまま行かせるわけにもいかない。
「服を着なさい」
「服を着てください」
「え、着てるじゃない」
「それは下着でしょうが!」
壁に生じた空間の歪みをそのままに。
姉さんが服を着るため二階へと駆けて行く。
「ホント、油断も隙も無いんだから」
「全くです」
アルラウネさんと共に溜息をつく。
家では当たり前過ぎて、ついつい油断してしまう。
「オネーチャンの気持ちも分かるよ。服着るの窮屈だし面倒臭いよねぇー」
「同調しないの」
「ウチの親もアニキも、同じようなこと言ってるけど」
ドクン。
心臓が強く脈打ち、呼吸が乱れる。
どうにも家族の話に過剰に反応してしまう。
落ち着け、落ち着け。
「オーガの特性なのかしら。体温が他よりも高かったりするのもしれないわね」
「おぉー、それって凄いの?」
「別に凄くはないと思うわよ」
「そっかー」
妹ちゃんが椅子に座って足をブラブラさせている。
再びまったりな空気が流れ始める。
と、ようやく服を着終えたらしい姉さんが二階から下りて来た。
「こ、今度こそ行ってくるわね」
「外で服を脱がないでくださいね」
「そんな変態みたいな真似しないわよ」
軽く怒って見せた後に、ヒラヒラ片手を振りながら、コロポックルと壁に生じた歪みへと消えていった。
「さて、それじゃあ、アタシは一度住処へ戻るわ。ボウヤたちも来る?」
「いえ、家に居ることにします」
「じゃあじゃあ、ウチもここに居るー」
「そう。もし何か困ったことがあれば、尋ねていらっしゃい」
「はい」
「スライムも、迷惑かけないようにね」
『シッケイナ!』
「アナタのために果物を貰いに出掛けて行ったんだから、貰ったらお礼を忘れずに言うのよ」
『ガンバル!』
若干顔を引き攣らせながらも、アルラウネさんが家から出て行った。
急に寂しくなった感じがする。
そう言えば、連日出掛けてたから、洗濯物が溜まってるんだった。
食事の後片付けを終えたら、そっちを片付けてしまおう。
本日は本編35話までと、SSを1話投稿します。
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