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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第一章
26/230

19 無職の少年、立派なご先祖様

 果樹の並木道を抜けた先。


 石造りの家が建ち並んでいた。


 どの家も二階は無く、横に長い造りに見える。



「地面や家の様子から見て、ワームの襲撃は無かったみたいね」


「ウチらだけ酷い目に遭ったってこと⁉ 最悪ぅ~」


「アタシたちが襲われてなかったら、今頃はこの集落が被害を受けていたはずよ」


「うぅ~」



 さっき見たばかりの皮鎧を着た人馬が駆け回っている。


 他にも、女性や子供と思われる人馬も居るみたい。


 そちらは人族と変わらない服装をしている。


 もっとも、下半身は大きめの布で覆われた状態ではあるけど。



「あ、ちゃんと女性のケンタウロスも居るんだねぇ」


「当たり前でしょ」


「だってぇー、女性が居ないから女口調なのかなって」


「そういうわけじゃないわよ」



 雑談を交している内に、向こうが気が付いたらしい。


 こちらへと駆け寄って来た。



「あらん、早速来てくれたのねん」


「やっぱり女口調だぁ!」


「そりゃそうよん。体は男でも、心は乙女なんだから」


「おぉー」



 え、何で妹ちゃんは感心した声を上げたんだろう。


 僕にはよく理解できてないんだけど。



「まさか、セントレアがこうも蔓延するなんてね」


「ちょっと、病気か何かみたいに言わないで頂戴! とっても立派なご先祖様なのよん」


「残念ながらよく知ってるわ」


「嘘ッ⁉ その姿から察するに植物の魔族よね?」


「アルラウネよ」


「まぁ⁉ ダーリンの家に勝手に住み着いたっていう、あの⁉」


「妙な言い方は止めて」


「ご先祖様のお話、是非とも詳しく聞かせて貰いたいわん」



 グイグイ近づいて来る人馬。


 アルラウネさんも困り顔をしてる。



「その前にさぁ~、お腹空いたんだけどぉ~」



 グオォーっと、盛大にお腹を鳴らす妹ちゃん。



「と、言うわけなんだけど、何か食べさせて貰えないかしら? その代わり、セントレアの話をしてあげるから」


「モチのロンよ! 折角の機会だもの、みんなにも聞かせてあげなきゃ」


「集落の警備を疎かにしちゃ駄目よ? まだワームが襲って来ないとも限らないんだから」


「分かってるわん。みんなが入れるように、集会場に行きましょう」


「みんな入ったら、警戒できないでしょ」


「んもぅ、言葉の綾よ、あ・や。そんなにプリプリ怒っちゃ、折角の美人さんも台無しよん」


「生憎と、人じゃないもの」


「あらあら、気難しいのね。じゃ、お喋りは後にして、付いて来て頂戴な」



 妙に体をクネクネしながら先を行く人馬に、みんなで付いて行く。






 他の家が3軒ぐらいは入りそうな、大きな空間。


 集会場の中には、机や簡易の寝床などが散見された。



「少し散らかっていて御免なさいね。最近は宴会ぐらいでしか使ってなかったものだから」


「平和な証拠ね」


「そうねん。魔王様や精霊様には感謝してもし足りないぐらいだわ」


「先代の魔王は、割と暴れてたみたいだけどね」


「魔族に対して乱暴はされなかったと聞いてるわ」


「そうだったかしら。でも世界樹は執拗に攻撃してたみたいだけどね」


「男は少しぐらいやんちゃな方が好ましいわよん」


「そういう問題じゃないと思うけれど」



 二体の会話を余所に、他の人馬がテキパキと片付けを終えて行く。


 中央の机に、調理済みの肉や果物が置かれる。



「いえ、こんな量は食べられないわよ」


「余ったらみんなで食べるわ」


「そう? なら有難く――」


「いっただっきまぁーす!」



 誰が何を言ったわけでもないが、妹ちゃんが食事に跳び付いた。



「ハァッ、この子ったらもぅ……」


「子供は元気が一番よ」


「子供って歳でもないのよねぇ……。ともかく、有難く頂くわ」


「どうぞどうぞ。そのために用意したんだもの。た・だ・し、その代わり」


「ハイハイ、話してあげるわよ」


「さぁ、オネェサマのお話が始まるわよん! 警備の子たち以外は近くにいらっしゃいな!」



 広い室内を、歓声が埋め尽くす。


 そんなに凄い人……いや、魔族だったのかな。


 異様な盛り上がりを見せる場を避け、数個の果物を手に取り、壁際へと移動し腰かける。


 すぐそばに身を寄せ、伏せるブラックドッグ。


 時折歓声が上がる様を眺めていると、苛立ちを覚えてくる。


 この魔族たちのために、今まさに姉さんたちが戦ってるのに。


 そんなことお構いなしとばかりに、楽しげな様子で。


 ちゃんと無事に戻って来てくれるよね……。


 眼前の光景を睨み付けながら、姉さんたちの身を案じた。






本日は本編20話までと、SSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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