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泥状のギギルコン「と」  作者: がら がらんどう
吉井とみきとみきと吉井
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第76話 聞き方も悪いな

 

 オーステイン周辺地域に到着した第4師団及び第5師団は、日暮れ前ということもあり分担して辺りの捜索を始めた。



 今回の遠征にあたり第4師団は150名を3隊に編成、案内役としてそれぞれに前回の生き残り3名を割り振り、ニガレルンで合流した第5師団は予定通り独立して始祖の確認、また全体の指揮は1隊の長でもある第4師団の副師団長ノリュアムが執るとことなっていたが、有事に備え他の2隊の長も全員独立した権限を持ち、その場の判断で柔軟に行動できることとなっていた。



 まいったな。思ったより時間が掛かった。副師団長のノリュアム及び捜索に出なかった本隊は、街道から少し離れ見晴らしのいい場所に移動、各自周りを注視しつつ待機となり、ノリュアムは散っていく隊員達を確認した後、近くの石に腰を降ろす。


 遠征自体はどうというわけではないが、前回の千人遠征といい今回も多数の死者を出してる。これじゃあ本当にヒマリヌに追い抜かれるぞ。


 これまでの道中で27名の死者、15名の同行困難な重傷者を出しており、ノリュアムは頭の中で補佐ヒマリヌの最近の業績と自分を比較し始めた。



 2年前に副師団長の立場に就いたノリュアムは、師団長であるスツリツトの優れた部分を利用しより伸ばすというやり方で関わってきた。

 しかし現在の副師団長補佐ヒマリヌは、スツリツトの不足している部分を補うことを重要視して対応しており、スツリツト自身もそのやり方を気に入っているようにノリュアムは感じている。実際多くの業務をノリュアムを飛び越え補佐に回していた。



 今回の編成も補佐が色々と手伝ったようだが。要は「師団長を使わずいかに効率よく遠征を行うか」「師団全体の能力の底上げ」等だろう。今回の面子を見てたら大体想像はつく。それはわかる、師団長の気持ちは。実際、兵士の成長とか目に見える形で結果が出るっていうのは楽しいよな。でもな、結局あの人の力があれば大体のことはどうにかなる。事実それで第4は問題なく回ってるんだ。まあ、あの人の力は結局血だからな。しかし、それは顔や体つきと同じで別に恥じることではない。そんな師団長個人の気持ちを優先させてどうする? 能力の底上げかどうかしらんがあの人の前では無力だ。そんなことのために人も死んだぞ? だから他の師団のやつらから……。


「副師団長よろしいですか?」

 いつの間にか傍に立っている兵の声でノリュアムは思考を戻した。


「どうした?」

「第2隊が集落を見つけました。収容に余裕があるようなので本日の拠点として問題ないかと」

「そうか、よかったよ。しばらく落ち着けてなかったからな、では案内を頼む」

 ノリュアムは槍を手に持ち、報告してきた兵に続いた。


 集落に着き、村の副村長と呼ばれている中年とノリュアムが話し合った結果、本隊は集落外で待機、そしてノリュアム、2隊と3隊、及びニガレルン合流組の長の4名が村に入り、代表者のノリュアムが村長と面談し他の3名は村長の家の外で待機することとなった。


「急にすまないな。感謝するよ」

 村長の家に通されたノリュアムは村長と副村長の2名からの挨拶を受けた後、改めて軽く頭を下げて感謝の意を示した。


「まあまあ頭を上げて下さい。困っていると聞いたので」

 村長に促されノリュアムは床に座り込んだ。


「で、こちらは150名程なんだが」

 ノリュアムは副村長から出された果実酒を手に取り、口に運ぶ素振だけを見せた。


「150名、ですか。全員の収容は難しとは思いますが、近くに使っていない集落がありましてな。そこを自由に使ってもらってかまいません」

「ほう、人のいない集落?」

「こういう村ですから。生きていくためですよ」


 生きていく、ね。まれにいるルートを外れたモドキの対策か? まあ、そういうやり方も悪くないかもな。ノリュアムは自分の布袋から2万トロンを村長に差し出す。


「すまんがこういうときに払う金は決まっていてな。これでお願いしたい。あと全員分は無理だと思うが食事の用意も」

「これはお気遣いを」

 

 村長は2万トロンを受け取り、横に座る副村長に食事の用意をするよう告げると、「わ、わかりました」と言い残し副村長は慌てて家を飛び出した。


「すいません。まだ慣れていないもので。前任者が最近いなくなりましてな」

「どんな仕事は慣れるまでは大変だな。では集落までの案内を1人お願いしたい」


 ノリュアムは立ち上がった後、「ああ、そう言えば」と再び座り直す。


「最近何か変わったことは無かったかな。知っていると思うがモドキの動向がおかしくてね。深い意味はない、皆に訊いていることだ」

「最近変わったこと、ですか」

 村長は伸ばしている髭を触る。


「前任の副村長ともう1名が村を出て街に向かいました。どうなったのかと心配はしている所ですが」

「他には?」

「特にありませんな。まあこんな所ですから」

「そうか、わかった。協力感謝する」

 

 村長の家を出たノリュアムは外で待機していた3名に状況を伝え、それぞれの隊に戻って説明するよう命じた。



 完全に日が暮れた森の中を、ノリュアムと第2の長は案内人の後ろに付いて歩いていた。


「変わったことの返答が『村人2人が街に向かった』ってことなんですよね。普通じゃないですか。それって変わったことですか?」

 横にいた第2隊の長がノリュアムに囁く。


「こちらの価値観を当てはめるな。そういう考えは集団での行動に支障をきたす」

「す、すいません。確かに」


 こういう状態だからヒマリヌ達はこいつを育てたいんだろ? それにこっちは付き合わされているわけだ。ノリュアムは一瞬第2隊の長を見た後、来た道を確認するため振り返った。


 こいつと第3隊のはギルドの出だったよな。3文字の叩き上げの地位を向上させる。それが全体の士気にってところか。まあいい、現状拒否する権利はない。結局おれが師団長になれないから思い通りにならないだけだ。それを忘れたらこいつと同じになる。


 ノリュアムは明日の大まかな予定を頭の中で組み立て始めた。



 これで正しかったのか。ノリュアム達が去った後、村長は今日の午前中に来た来訪者を思い出す。


 とにかくヘラヘラしている。という印象を持ったその男は同じように変わったことがなかったか? と村長に尋ねた後、もっと言えばここ数ヵ月の間に若い男女がいなくならなかったか? と付け加えた。 


 確かに吉井という村人と前任の副村長がいなくなった、それ以外は変わったことはないことを村長が告げると、ヘラヘラした男は満足そうに頷き、また来るかもしれないと言い残し足早に村を出て行った。


 さっきの兵士に男の訪問を言わなかったのは、特に理由はない。しいて言えばなんとなくヘラヘラした男が不気味だったからだ。まあ兵士の方に後で知られたとしても大したこととは考えていなかったとでも言えばいい。


 村長は来客用の果実酒をちびちびと舐めるように飲む。


 しかしヘラヘラした男の感じだとあれは街の人間だ。ということはあの2人は辿り着けたということかな。前副村長はずっと目標にしていたようだから、残っている親も喜ぶだろう。


 久しぶりの酒で少し酔っていることを自覚しながら、村長は木製のコップに果実酒を注ぐ。


 しかし変わったことか、わざわざ2人が言うということは。


 村長にはヘラヘラした男と先程の兵士2人に言わなかったことがあった。ただこれには理由がある。出て行った副村長に不利になるような気がしたからだ。


 あれは彼らが言う()()()()()()()()()()()()


 村長はふらふらと立ち上がり、以前みきが住んでいた家に向かった。


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