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泥状のギギルコン「と」  作者: がら がらんどう
とんかつととんかつ
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第22話 しゃもじ/信仰


 家に戻り手巻きが藤倉さん、うどんはおれが担当することを再確認していると、おれの家にレンジが無いことに気づいた藤倉さんは、崩れ落ちそうになるのを何とかこらえてシンクの縁を掴んだ。


「ないないとは思っていたけどレンジも無いなんて……」

「あー、でも大丈夫。サトウのごはんは電気が無くてもお湯で何とかなるらしいよ」

「電気が無くてお湯がある? どういう状況ですかそれ」

「そりゃあほら、この絵にもあるけどガスボンベでさ」

 

 おれはサトウのごはんの「こんなときどうする?」的説明が表示されたモニターを見せた。


「あー、そうですね。こういう状況なら理解できます。ちなみに寿司桶ってありますか?」

「無い。だけど寿司桶が無いことに関してはおれは悪くない」

「わかってますよ。そこを責めるほどわたしも常識がないわけではないです」


 台所に置いてあった棚から大き目の木のボウルを見つけた藤倉さんは、これこれ。これでいいんですよ。と言った後、固まった。


「あのしゃもじ、って」

「箸がない国に箸置きはないよ」

 おれはサトウのごはんを温めるためフライパンに水を入れてコンロに乗せた。


「ですよね。うん、確認です」


 それから家にあるもので代用品を探した結果、紙コップで工夫すればしゃもじの代わりになるのでは。というおれの案に藤倉さんは賛同したが、熱湯消毒を繰り返したハサミで紙コップを切った瞬間、単純に紙コップを切った厚紙が出来上がったが2人で話し合いながら試行錯誤し、一応形になるものが完成した。

 だが試しにと、温めたサトウのごはんをボウルに入れて混ぜている時に、2人でこれはないという意見が一致。結局、じゃんけんで負けた藤倉さんが100円ショップに買い物に行くこととなった。


「しゃもじって本当に快適ですよね」

 ついでだから買ってきたという寿司桶に入ったサトウのごはんを混ぜながら藤倉さんは何度もうなずく。


 おれはその様子を見ながら、正直さっきの厚紙のストレスから思いっきりかき回しまくりたいとモヤモヤしていたので、藤倉さんが飽きるのを待っていると、

「いいですよ、ほら」

 何度ものぞき見していたおれに気付いた藤倉さんがおれにしゃもじを手渡した。


 いいわー、つぶつぶあると全然違うわー。盛り上がったおれは思いっきり混ぜまくった。


 ダイニング側に置いてあるテーブルはあくまで1人を想定した大きさだったので、醤油皿、寿司桶、それぞれのペットボトル、取り皿、海苔等を置くとほぼ隙間なく埋まった。

 また椅子が1つしかなかったので最初藤倉さんが座ったが、なんか見下ろされているのが嫌という理由により2人で立って食べることにした。


「こんな小スペースで食事したの記憶にないです」

「おれも立って手巻きを食べたことはないよ」

 おれは全形の海苔を半分に折り畳みちぎった。


 食べ始めた当初、全形の半分を使っていた藤倉さんを見て、おいおい、まじか。1/4じゃないのか、とおれは衝撃を受けたが、また貧乏ネタですか? と言われるのが嫌だったので、泣く泣く半分で食べることにした。


「あ、でもアメフトバーのテーブルこんなもんじゃなかったですね」

「そうだった。今となっては曖昧だけどジョッキ2個置いたら終わりぐらいだったような」

「しつこいようですけど、あのピザ全然ちぎれなかったです。小さかったし」

「うん。今となっては多少曖昧だけど食パン以下だったよ」

「そうそう。コンビニおでんの大根ぐらいだったと」

「それは言い過ぎだよ。さすがに肉まんぐらいはあったと思うけど。あ、そういえば除夜の鐘とかって行かないの」

「除夜の鐘? なんで寒い中に木で鉄を打ちにいかないといけないんですか?」

 

 あー、そこは違うのね。おれは海苔に米をよそいタコを乗せた。


「じゃあ初詣とかは」

「だから行かないですって。手を叩いてお金入れて祈るならここでやっても一緒ですよ」

「ああ、うん。それなら別に」

「あ、でも吉井さんの信仰をどうこう言うつもりはないですから。あくまでわたしの意見なので」


 わかった、基本的に年末年始の行事はどうでもいいんだな。おれは気付かれないように海苔を1/4にしてサーモンを巻いた。


 余ったサトウのごはんと刺身を冷蔵庫に入れて、後片付けをしそれぞれお茶を紙コップで用意すると午後9時過ぎ。


「じゃあわたしは年末を堪能しますんで」

 そう言って藤倉さんはソファーに移動しテレビをつける。


 比較的ソファーの中心に藤倉さんが座っていたので、居場所をなくしたおれはソファーの後ろのベッドで横になりながらHNKを観ることにしたが、ベッドに行った時点で寝てしまうことを想定していたこともあり、目を閉じたときにあえて開くことはなかった。


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