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泥状のギギルコン「と」  作者: がら がらんどう
とんかつととんかつ
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第6話 吉井の本当にあったそばアレルギーの話/反省


 これ何となく藤倉さんと似てる話だんだけど。何年か前ね、平日家で休んでたことがあって。普通に風邪で。でね、すげえ音で目が覚めたんだよ。なんだろう、どおおん、みたいな感じで、家の外からね。そうしたら人の気配がして誰かが入ってきたんだよ。おれの部屋に。おれめちゃくちゃ怖くて。逃げればいいのかもしれないんだけど、ずっと寝た振りをしてた。これがねえ、ほんと人間のなんていうかさ。地震のとき動けないみたいなやつ。そしたらその誰かは、部屋の中うろうろした後、ああ、短いよ。数分もないかも。すぐ出ていったんだよ。

 正直明らかに出て行ったとわかってから10分はおれベッドにいた、なぜなら怖いから。それで意を決して恐る恐るベッドから降りると、部屋のね、ドアが取れてたっていう。いや、なんていうの1枚。ドアが1枚丸ごと。ほんとほんと、意味わからない。で、外に出てみたら廊下に立てかけてあった。さすがに警察に連絡したよ。初めてでさあ、警察に電話なんて。だからめちゃくちゃ緊張して、全然上手く言えなかった。そしたら最初2人来たんだけど、その後応援みたいな感じでもう2人来たっていう。

 そんで色々聞かれて、色々書いてその場は終わったけど、ドアは取れるわ、人は来るわ、で家の中がぐちゃぐちゃになってさあ。すげえ掃除を頑張って。あ、違うよ。これきっかけできれい好きじゃないのよ、ここじゃない。

 で、それからしばらくして警察に呼ばれてその男の映像を見せられたんだよ。そいつは横浜に行ったらしくて。でね、なんかよくわからん場所の監視カメラからの映像なんだけど結構おれに背格好が似てて、いや、かなり似てて。まあただおれ普通に会社行ってるから、その映像が映ってる時間帯ね。横浜だしそうとう無理がある。ああ、そう。おれの自作自演的なのも一瞬疑ったっぽいね。さすがに違うってわかってもらえたけど。で、その時に、横浜の街並みでもないけど普通の風景っていうか。まあほぼ道路と室内なんだけど結構観て、うーん、言葉では言いづらいんだけど。なんか魅力的に感じたのよ、おれ。言ったもん、その場でも。なんかいいっすね、横浜って。みたいなの。まあ警察の人は、はあ? みたいな感じだったけど。

 それがあっておれ引っ越したっていう、横浜に。そう、ここ。このマンションに引っ越した。うん、あまりにあほみたいな話だけど。ほんとたまたまだよ、たまたまこっちの横浜支社で退職者が重なってさ。だれかいる? 横浜来たい人だれかいる? みたいな感じになったみたいで、そうなった時におれがんがん手を挙げたっていう。そう、それでとんとん拍子に。最高の気分だったね、なんか。

 でも、後で気付いたんだけど、移った会社が蕎麦屋2軒に挟まれてたのがね。あー、そう。おれそばアレルギーなんだ。しんどかったなあ、男子トイレが一番しんどかった。ほぼ真横からがんがん蕎麦の空気が入ってきてたから。あと新年会とか忘年会、歓送迎会も全部蕎麦屋での開催だったのがな。昼は蕎麦屋、夜は蕎麦を置いている居酒屋の方で。一回は出たけど途中退席だったし。それからずっと付き合いが悪いやつになるっていう。2年、いやほぼ3年勤めたんだけど。

 そっからなのよ、もうずっと家帰っても蕎麦の匂いがする気がして。靴下に蕎麦粉が付いている気がして、実際ないんだけど。ずっと掃除、洗濯、掃除、洗濯を繰り返すようになった。そうそう、その癖が残ってる感じ。いや、苦じゃないよ、おれはね。もう何て言うか、まあきれいになるからいいじゃない。ぐらいの軽い気持ちだから。

 それでまあ、そんな生活をしていたある日ね、出社直後に会社のトイレでいきなり吐いてそのまま動けなくなってさ。その様子を見て完全に引いた上司が救急車を呼んでくれて。それでとんとん拍子で退職に。一応ね、おれから辞めるっていったから。ああ、言われたよ。元気になった戻って来いって。まあ元気になっても戻ったら元気じゃなくなるんだけど。え? それは言われなかったけど、転勤は。いやー、だってアレルギーで転勤認めてたらもうどうにもならないんじゃない。と、思いたい。でもね、止められたよ。一応は。そこだけは言っておく。

 でもさっきの警察の話。ドア取れてから1年間ぐらいかな。そう、もうこっち来てる。たまに警察の人がいるっていう状況が結構あった。違うけど、雰囲気的には水族館行ってたらショーを後ろで見てたみたいな。で、一回直接理由訊いたら、なんかあったら困るからって。でもさすがにドア取れたぐらいで、って思ってこっちが色々訊いても何にも言わなくて。まあ別にいいんだけど。そ、


「あ、火消えましたね」

「お、おお。そうだね」

「そろそろわたし帰ります。では続きはまた気が向いたらということで」

 

 完全に火が消えたのを確認した藤倉さんは、どうもありがとうございました。と言って帰った。


 藤倉さんを玄関で見送った後、おれはシャワーに入り歯を磨いてベッドに入っる。


 しかしこれ程、何ていうか一方的に自分が悪いことってそうない。本当にすまないことをした。ボランティアのはなあ、ほんとその通りなんだよ。薄い、ただ薄い。それに尽きる。そしてきれい好きの方の話は、わざわざ話す前に時系列を整理してこのあり様だよ。


 目を閉じて反省をしていたおれは、犬を飼う自分の映像が浮かび、そして消えていくうち眠った。


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