第7話 冷蔵庫/線香
「2度目にあった人に言う言葉じゃないかもしれませんが、やっぱりこれは異常だと」
ボランティアの話を打ち切った後、部屋を見て回っていた藤倉さんは冷蔵庫を静かに閉め、申し訳なさそうに言う。
「だってスペース余ってるんだからそこに文房具入れておいてもいいと思うけど。ポケットとのところ丁度いいし」
「文房具だけじゃなくてマンションの契約書も入ってるじゃないですか、野菜室に。野菜室って知ってますか? 野菜を入れるところですよ」
「おれ棚とか嫌いなんだよ。だからできる限り置きたくない。大体野菜なんて買ったことないし問題ないから」
「しかもわざわざポケットのとろを有効活用しようと百円均一でちょうどいいの買って。大体朱肉って冷やしてて機能するんですか?」
「さあ。あんまり使わないから」
「……すいません。一旦休みます。考えを整理させて下さい」
藤倉さんはそう言ってゆっくりソファーに座った。
まあ冷蔵庫の使用方法については自分でもおかしいという自覚はあるけど。することがなくなったのでおれはお茶を飲むために湯を沸かした。
「でも無理やり言うと、この部屋いいところもありますよ。本当に清潔、清潔かどうかは実際わからないけど清潔感はすごくありますし。実際、結構気持ちいいです。物もないし」
「それはどうも」
おれはお茶を持ってソファーの端に座る。
ダイニングは通常の照明を使用しているが、ソファー側の部屋は、おれが小さいころから憧れていた外国の人がベッドサイドに置いている物音がしたときに「なんだ?」と言いながら点けるやつ、もしくは寝る前にでかい枕ベッドボードに寄せて本を読んでいるときに点けるやつ、あの照明と、月明り及び窓の近くの街灯の光で過ごしていた。
「それに線香もいいですね。アロマ的なのではなく単純に線香っていうのが」
藤倉さんはサイドテーブルにあった線香を手に取って眺める。
「大量に貰ったから使ってるだけで特に意味はないんだけど」
「やっぱりお茶と線香って合うんですね、匂いとか雰囲気も。感覚的には知っていたけど再確認しました」
まあそのお茶も大量に貰ったからなんだけど。おれはそう言おうとしたが余りに主体性がない人生を歩んでいるように思え止めておいた。
「線香一本つけていいですか? 終わったら帰ろうかと思って」
「いいよ」
「わたし線香に火をつけるのなんて、初めて、ではないかもしれないけどあんまりないです」
束から一本取り出し火をつけた藤倉さんは、同じくサイドテーブルに置いてある線香立てに注意深く設置する。
「これ一本どれぐらいもつんですか?」
「さあ。よくわからないで使っているよ」
「あ、そうだ。最初にご飯食べた時の帰り際に言いかけてたじゃないですか。きっかけみたいなの。それ改めて訊いていいですか?」
「ああ、うん。ちょっと長くなるけどいい?」
「いいですよ。線香が消えるまでに終われば」
おれは時系列を整理し、最初の映像を思い浮かべた。




