第136話 あくまで吉井個人の見解
23時過ぎ、16万円のサービスを受ける前に27万円の部屋を出た吉井は行く当てもなくしばらく歩く。そして目に付いたドン・キホーテ横浜西口店に入り、どろどろとした外気から一気に空調が整えられた店内に安堵しつつ、入口付近にあったエスカレーターに乗って上階に向かう。
しかし暑い、ずっと夏だ。いつまで夏なんだよ。もういいよ。でもこの時間でも人が多いなあ、今日は週末だったか。
曜日感覚が崩壊していることを自覚していた吉井は端末を取り出し確認。結果、水曜日だったことに1人恥じながら、さらに上階に進む。
はいはい、滋賀県の週末は横浜の平日ね。しかし驚くほど欲しいものがないな。全部いらんよ、物も人も。でもさすがに全部いらないっていうのは、いたいというか、きつい奴だからなあ。なんかあるだろ、欲しいもの。うーん、欲しいもの、欲しいものねえ、あるかなあ。そうだな、しいて言えば銃かな。ここにはないけど。そっか、銃か、おれは。そうなってくるとまあ警察関連施設から持ってきてもいいんだけど、管理してる人って銃とか弾が無くなったら死ぬほど怒られるんだろ。それもなんだかなあ、可哀想なんだよなあ。じゃあ他にどこでってなるんだけど。
3階に上がったところで店内案内図の前で立ち止り、銃の入手方法について検索しようとした吉井は手を止めた。
いかんいかん。たまには自分の頭で考えてみよう。というかちゃんと出てくるもんでもないしな。ぱっと思いつくのは、えー、射撃のやつかな。なんだっけ、あー、出てこない。
吉井は端末を取り出して検索した。
そうそう。クレー射撃。フリスビーみたいなのが飛んできて、シュッ、パン、シュ、パンってやるやつだ。あ、でも他にもあるんだな、オリンピック競技。しかし今回はとりあえずクレー射撃だけでいいよ、ややこしいし。あれの練習場的なとこに行ってだな。こう鍵を、気持ち太いチェーンでぐるぐるになってるやつを壊して。練習場にある気がしないけど。一案としてはそれだな。
えー、他にはなあ。あー、猟銃か。売ってるんだよな、あれ。イメージでは都道府県か国か知らんけど、その辺が認めたっていうのを証明するための紙を店に持って買いに行くっていう。あとあれか、どこに保管するのかみたいな車庫証明的なのも一緒に。それで結局は太いチェーンでぐるぐると巻いて鍵を使って置いとくみたいな。
エスカレーターで4階まで行き、吉井はそこから階段を使って5階のトイレに入た。
流れ上入っただけのトイレで手を洗いを済ませて、そのまま出た吉井は階段に座り込み再び銃の入手方法ついて考えを巡らせる。
今の所思いついたのは、警察、クレー射撃、猟銃の3つか。どれにすっかなあ。そっか、入手が楽そうなの順で並べよう。えー、警察、猟銃、クレー射撃、だな。警察はすぐそこにあるし、猟銃店とクレー射撃のは探さないとだめだ。そしてクレー射撃はどこに保管してるかわからん。
あと、すげえ怒られる可能性及び管理してる人のダメージ順にすると、あー、案外これ難しいな。まあいい、これは個人の、あくまで個人の見解だ。実際は知らんし比べようもない。そうなってくると、まずは警察かなあ。出世とかにもろに響きそうな気がするし、盗難とかの言い訳も効かなそうなんだよ。「その辺もひっくるめてお前が悪いんじゃ、ぼけ」って言われそう。
次が微妙過ぎるけど、おれは、そうだな。猟銃かな。これこそ盗難に、っていうか実際おれが店から奪うから思いっきり盗難になるし。で、まあ射撃もね。同じ盗難だけど、いまいち管理してる人がよくわからんから下になるという。
あれ、ということは? 吉井は一度整理した。
【入手難易度順】警察→猟銃→クレー
【迷惑順】警察→猟銃→クレー
えー、まじかあ。うーん、そうかあ。ええと、じゃあどうする? 決めるのはおれだけど、えー、どうする?
吉井が悩んでいると、営業終了の時間だから全員帰れよ。というメッセージを込めた音楽が店内に流れた。
まあいいや。一旦出てケンタッキーに寄ってから病院に行こう。吉井は階段を降りて4階からエスカレーターに乗った。




