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泥状のギギルコン「と」  作者: がら がらんどう
吉井とみきとみきと吉井
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第126話 1人だからやり方は自由

 

 吉井は古着屋店長の手首を縛っていたシャツの結び目を持って移動していたが、ある程度の速度になった時の古着屋店長に掛かる負荷と、結んでいるシャツがちぎれそうになる感じが気になったので、タクシーに乗るために大通りに出た。


「なあ、これぐらいの交通量だとタクシーってどれぐらいの頻度で通るのかなあ」


 吉井は片側2車線の歩道上で行き来する車を見ながら言ったが、古着屋店長はその言葉に反応せず、無言で両手を縛られたまま目の前の通りをぼんやり眺めていた。


 うーん、見つけようと思ったら見つからないっていう文句嫌いなんだけど。しかし結果として見つからない。そしてさっきのは独り言になったなあ。


 2、3分待った吉井は諦めて、近くに見えた総菜とおにぎりを売っている店にタクシーを呼び、店の前で食べ若菜のおにぎりと唐揚げを食べながら待った。


 数分後、タクシーが到着すると吉井はほぼ無反応の古着屋店長を押し込むようにしてタクシーに乗り運転手が口を開こうとした瞬間食い気味に、こいつは古着屋の店長だ。そしてこの古着屋の店長は多少様子がおかしい点があるが、それは違法な薬物を摂取しているからで問題ないし、通報してもいいがどっちみち今からコンビニに寄った後それ系の病院に行くつもりだ。また警察的なところも絡んでいるからあなたがどうこうする必要はない。これから案内は古着屋店長がするが、理由は長くなるからここでは言わない。


 その説明の後、吉井は古着屋店長を口元で、案内を頼む。とだけ囁くと、古着屋店長は静かに、最初の信号を左折してくれ、その次の交差点を右折だ。とだけ言った。


 運転手は、わかりました。と言った後、指示に頷く以外は終始無言だった。


 

「このコンビニってさ。ほら、あれだ。フランチャイズ契約っていうかその辺はどうなの?」

 タクシーを降りた後、吉井はコンビニ敷地内駐車場に座り込んでしまった古着屋店長の襟を持って無理やり立たせた。


「な、なぜ。何のためにこんな」

 両手を拘束されている古着屋店長はされるがままその場で棒立ちになる。


「なぜ? 理由ならあるぞ、お前らがあの女を殺したからだ」


 吉井は無駄に力を誇示したい気持ちを一度は抑えようとしたが、今思い出してもあれはないですよ、そういう無駄なつええは結局作り手が損しますから。と言われることもないので、立たせた古着屋店長のふくらはぎを蹴って再びその場に転がした。


「いいから教えろ。あいつは、そうだな。要は雇われ店長なのか?」


 両手を縛られていた古着屋店長は肩を激しくコンクリートにぶつけ、数秒嗚咽を漏らした後、元々コンビニ店長の親の代は酒屋だったこと、コンビニ店長そして同級生である自分が小5、もしくは小4の頃コンビニに変わったこと。コンビニ店長の両親は既に亡くなっており、コンビニ店長は言ってしまえばオーナー、そしてフランチャイズ契約の手数料で苦労していることを吉井に説明した。


 こいつのいらない情報を提供するっていうやり方は遠回しにおれをいじっているのか、それとも単なる癖というか天然なのか。しかしまあオーナーだったら店はどうなってもいいな。古着屋店長の真意は図れなかったが、自分の中でやり方が決まった吉井は、古着屋店長にその場を動くなと言ってから、やっぱり動かれたら面倒なので襟を持って引きずりながらコンビニに入った。


 なんだろう。一貫性がないのはわかってる、こっち来たばっかりの頃もやった。でも、やっぱり、気になる。もうこうなってくると気持ちの問題だ。


 吉井は一旦外にでて店外を映すことを目的とした防犯カメラを引きちぎってその場に捨て、そして再び店内に入り、目に付いた数か所のカメラを同じく引きちぎろうとしたが、壊せばいいじゃん、と思い直し強めに握ってカメラとしての機能を果たせなくした後、意識を戻した。


 使ってると話が出来ないのがなあ。そしてどう考えてもこいつだけど、一応確認を。吉井は生活用品の棚で出し入れしている男を指し、あいつか? と古着屋店長に尋ねると、そうだ、そうだけど、おれらは。古着屋店長は床に寝転んだまま続ける。


「おれらをどうするつもりなんだ。悪かったとは思っ、思ってる。抵抗されたからしかたなくや、やって。あ、そうだ。お、おれは自首する、だっておれたちは元々殺すつもりなんて」

「お前たちは元々殺すつもりはなかったのか。おれは」


 吉井はコンビニ店長の横に立ち、振り向いた店長を棚ごと蹴り飛ばした。


「元々お前らを殺すつもりだ」


 ああ、もう。決めちゃったよ、くそ。だが中途半端な大きさで言ったからこいつら聞こえてなかったことを祈ろう。としても、としてもやばい。大分先まで残るエピソードになっちまった。ねえ、あの時言いましたよね? ほんとびっくりしましたよ、言葉自体にじゃないですよ? それを言った吉井さん自身に。あの時はしょうがなかったんだよ。おれだって言いたくて言ったんじゃない。反射だよ、膝のとこなんかしたらパーンって上がるみたいなやつ。それは常日頃から吉井さんが考えているからですよ。というのはこの辺にして、しかし手加減したけど大丈夫だよな? ここではやるつもりはないんだが。


 吉井は一つ奥の菓子類の棚が支える形で止まった生活用品の棚の中から、紐を見つけ出し、全く動かないコンビニ店長の手足を縛った。


「な、なあ。大丈夫なのか、死んで、死んでないよな」

 古着屋店長は膝立ちで倒れ棚に近寄る。


「お前が思う大丈夫の範囲は知らんけど生きてるよ」


 というか今日のおれどんだけ縛ってんだよ。さっきから縛りっぱなしじゃないかって、よし、とりあえず外に。吉井は紐を持ち窓ガラスに向かってコンビニ店長を投げたが、かなり力を抑えていたこともあってか、窓ガラスが割れることはなく、コンビニ店長は窓、ゴミ箱、倒れた生活用品の棚に、ガン、ど、だん、とぶつかるルートを通った。


 やっちまった。が、まだ意識はある。失敗は無かったことにして入口から出よう。吉井はコンビニ店長を縛った紐を掴んだ。


「や、もう、やめてくれ。そいつには家族が、家族がいるんだ!」


 家族? 吉井は自動ドアの前でコンビニ店長を持ったまま振り返る。


「おれらは、おれらはまだしも。その家族は関係がないだろ!」

 いつの間にか立っていた古着屋店長は棚に持たれながら叫ぶ。


 そうだな。吉井は改めて復讐の範囲を考えた。


 こいつの妻、子どもに罪はない。そこまではいい、おれもそう思う。しかしこの古着屋店長はそれを拡大解釈し、罪はないということはここでコンビニ店長が死ぬことによって生涯の世帯所得が下がる、また片親になるということによる子どもへ与える影響等の不利益を妻と子が被ることない、ということか。理屈としてはわかるけどな。でもそうなってくると家族が多いほど罪が軽くなるという現象が。それは独身者全員激怒するって。


 吉井は再び騒ぎだした古着屋店長に今日2度目の猿ぐつわをかまし、コンビニ店長と共に店外に連れ出し、コンビニ駐車場の隅に停まっていた黒のアルファードがコンビニ店長のものか確認するために一旦古着屋店長の猿ぐつわを外し、そしてコンビニ店長の車だとわかった後、再び古着屋店長にかまし、傍でうめいているコンビニ店長のベルト付近に付いていた鍵を操作して、コンビニ店長と古着屋店長を後部座席に投げ込んだ。


 あー、なんか飲み物持ってくか。あっちなんもないしな。吉井は運転席のドアを開けかけたがコンビニ内に戻り、生茶の2リットルとアサヒスーパードライ350ml6本パックを手にした後、ふと店内を見渡した。


 なんだろう。コンビニ店内の商品が買い放題、買い放題は違うか。かなり自由な取り放題なんだけどなあ。これ以上の自由はないっていうぐらい自由だ。でも全然楽しくないなあ。前は、何か欲しかったよ。今となっては思い出せない。おれは何が欲しかったんだ。高校の時とかは毎日寄ってたんだけど。うーん、食い物系? あ、そうだ。あと紙の雑誌ね。そういえば昼休みは行ってよかったんだっけ? いや、違うだめだ。それを認めたらもうわけわからなくなる。あくまで校内でやれよってルールだったはず。学食は、うん。それはあったよ。しかし高校時代の思い出を通り過ぎているおれもこのコンビニをぶち壊さないといけない。あのコンビニ店長には失うしんどさを味わって貰わないと。でもこういう無駄な、無駄ではないんだけどこれしてたから本来の目的が達成できなくなったら嫌だなあ。向こうから転移してきたやつに邪魔されるとか。だめだ、それは阻止しないといけない。おし、先にやるべきことをやろう。


 吉井は自身の行動に対する不快さを誤魔化すため思い出を混ぜて状況を曖昧にし、さらに向こうからの転移という理由も付け加えた結果、とりあえずこのままにしておきつつ、戻ってきてまだ納得できてなかったら建物の基礎部分から全部ぶち壊すという結論を得た。


 そういえば。吉井は2リットルの生茶を一旦置き、アサヒスーパードライの350mlの6缶パックを500mlの6缶パックに持ち替えた。


 さっきの「元々おれは殺すつもりだった」とその前の「ここタクシー通るのかな」っていうの結果的に両方聞こえてなかった。まあ以前のこと思い出しついでに気付いたけど、おれ知らない人と話す時基本的に声小さかったよ。ラカのときは外国だったから気を付けてたんだろうし、さっきに古着屋はやってやる感が出てたからな。これからは普段通り気持ち大き目で。


 吉井は6缶パックから1本取り出し、飲みながらコンビニを出た。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 吉井さんがミナトロン化してゆく 明らかに普通じゃない考えなのに 誰もそれをとめてあげられない 気持ちは・・・わかる・・・ [一言] 吉井さんにとって みきに思考を掴まれて 振り回され…
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