第三十六話:色々と作業です
こんばんは。おはようございます。こんにちは。なんとか一週間間に合ったかな?(一応日曜日までは一週間の考え)
なお、一番時間がかかったのはタイトルですw
「この辺の素材を採取するのもいつぶりだろうか」
突然の反撃戦突入宣言により多くのプレイヤーがルーチェを襲撃、じゃなくて買い物に来てくれたのでこれまでため込んでいた素材が底を尽く状況になってしまった。まさかフェアリーガードが持ってきてくれる薬草とか魔力石まで無くなるなんて思ってなかったな。
「それにしても、一応強くなってたんだな」
「当たり前だろう。お前がこの世界に来てそこそこ経つのだから」
襲ってきたゴブリンを〝錬金術師の杖″でぶん殴る。これは【杖☆】のアクト〔オーバーブロウ〕、ただ振り下ろすだけのアクトだが動作が素早くそれなりに攻撃力も高いので、接近された敵に魔法使い系のプレイヤーが好んで使うアクトの一つだ。
こういう新しいアクトのおかげで昔は強敵でもあったゴブリンでも今では一発で倒せる。
そういえば反撃戦に備えて自分のスキルを確認した。メインが【特級錬金術師】【杖☆】【看破】【加速】【】サブが【盾☆】【融合】。実はすっかり忘れていた〝スキル増強剤″でメイン枠を一つ増やしたのだ。なんとか時間を作ってエイミさんから【魔法陣魔法】を習得しよう。それと【看破】がそろそろランクアップできそうなんだよな。
「ミシェル副隊長。周辺の採取が終わりました!」
「同じく、魔力石も必要数集まりました!」
「ご苦労、では帰るか。そっちはどうする?」
「俺も帰るよ。調合しないといけないし」
よく見ればまだ採取できそうな素材もあるが、取り過ぎは良くない。
スプライトへ帰りルーチェに直行、そして調合。ルーナ王女率いる解放軍の進撃によってここに来るプレイヤーも減るかと思いきや、あの時助けた国王様がとんでもないことをしてくれた。
それが〝天翔の扉″という王族専用アイテムだ。あの時助けた国王様が俺たちプレイヤーにお礼として使用を許可してくれ、その効果が転移泉と同じなのだ。つまり、転移泉から〝天翔の扉″を選択すればすぐに解放軍と合流できるようになったのだ。
これにより、プレイヤーは消耗した武器やアイテムをいつでも補充できるようになり、さらにポイントを稼ぐために武器職人やアイテム職人が〝天翔の扉″を使って合流し、NPCに装備を売っているらしい。戦力増強にもなるからいいのだろうが、おかげでまったく客足が途絶えない。
ちなみに〝天翔の扉″だが、普段ルーナ王女が乗っている馬車に取り付けられている。つまり馬車の左側の扉は普通の扉で右側の扉が〝天翔の扉″となっている。なお、普段使わないときは手のひらサイズのクリスタルになっているらしい。
それを聞いた時「つまり国王様が亡くなってもルーナ王女様がどうせ許可出しただろうから現状は変わらないのか」と不適切なことを思ってしまった。ごめんなさい国王様。
解放軍が進軍を開始してから七日目。それなりに備蓄もできたのでフォレスワードに転移して門番から〝戦歴の腕輪″を受け取る。装備して再び転移泉に向かい、今度は〝天翔の扉″で解放軍と合流する。
間が悪くルーナ王女には会えなかったが側近の兵士からポイントを受け取る。ステータス画面で自分のポイントを確認してみると250と表示されている。
あれ? 確かラインが200くらいじゃなかったか? なんでこんなに高いのよ?
「おぉ、あなたがアルケ様でしたか! 我らが王の命を救っていただき、本当にありがとうございました!」
疑問に思っている俺に対し、こちらのことに気づいた側近は感謝を告げる。声が大きかったせいであちこちから視線を感じる。
「申し訳ありませんが、少しお時間をいただけないでしょうか? ルーナ王女様自らがお礼を申したいとおっしゃっていましたので」
「え? あ、はい。大丈夫です」
「ありがとうございます!」
見事な敬礼をした後どこかへと走っていく。ただでさえ目立っていたのにさらに視線が増えてきた。
しばらくすると側近を置き去りにしてルーナ王女様がこちらに走ってくる。
「あ、アルケ様。会えて、うれしい、です」
「まずは落ち着いてください。 これをどうぞ」
本来は飲み水用ではないのだが〝清水″を渡す。感謝を告げられ〝清水″を喉に流す。なにやら驚いた表情になったがすぐに引き締まった表情になる。
「あの時は陛下を助けていただき、本当にありがとうございました」
「いえ。国王様はその後大丈夫ですか?」
「はい。まだ全快とは言えませんがもう心配はいらないでしょう。今も会議にて様々な作戦を考えていますから」
「国王様も会議に参加しているのですか?」
「はい。私はまだ王女です。残念ですがいろいろと経験が足りていませんから」
自分のことを恥じてはいるが、その目には強くなろうとする意欲を感じる。この辺りは王族というやつなのだろうか。
「王女様。申し訳ありませんが、すぐに会議を再開しますので」
「わかっています。アルケ様、お会いできて早々ですが、これで失礼します」
どうやら会議中だったのを抜けてきたようだな。それじゃ、こっちも念のために用意しておいたものを渡しておくか。
「わかりました。では、最後にコレを渡しておきます」
「こ、これは前にお父様を助けていただいたアイテム!?」
「一つしかありませんので、万が一の時にお使いください」
調合の合間に試して唯一成功した〝キュアクロス″をルーナ王女様に渡す。これなら麻痺毒でも一度なら何とかなる。というかビックリし過ぎてお父様と呼んでるし、俺の両手を握り始めた。
「これは本当に助かります! 何度もありがとうございます!」
「いえいえ。それより、そろそろ行かれたほうが……」
ハッとした表情で振り返るルーナ王女様。そこには苦笑いしている側近の姿。
「そ、それではこれで失礼します」
握っていた手を外し、わずかに赤らめた顔で去っていくルーナ王女様と一度頭を下げた後追っていく側近。とりあえず俺は戻って調合をしますか。
「おい、何だアレは!?」
「何かのイベントの始まり!?」
「錬金術のお姉さん何渡しの!? すごい喜ばれてたよね!?」
よし、さっさと帰ろう。
戻ってきてまた調合の日々。あれから掲示板で俺の行動が話題になっていたらしいが、直接イベントには関係ないのですぐに別の話題になった。
今は新たに見えてきた街の解放がメインだ。どうやらかつては流通の要ともなっていた街らしく解放できれば新たな拠点になる可能性もあるらしい。
その時に知ったのだが、実はすでに町を二つ開放済みらしい。そのころはずっと調合だったからなぁ。
そして大規模な戦闘になると予想されたため、またお客さんが増えている。それでも反撃戦宣言時に比べれば少ないのでなんとかなっている。
≪それにしてもキュアポーション系がやけに売れてるけど、そんなに状態異常させるのか魔族って?≫
≪そうとは限らないんだが、麻痺毒があるから念のために持っておくプレイヤーが多いな。俺もだけどな≫
ラインから届いたコミュをつなぎながら調合を続ける。さすがに何度も調合しているアイテムは話しながらでも失敗することはない。
≪ふーん≫
≪ふーんって、お前戦闘関係ないと思ってないか?≫
≪いや、俺はアイテム職人だぞ? なんで戦闘しなくちゃいけないんだ?≫
【錬金術】はまぎれもなくアイテムを作るスキルだ。だからこそ、部類としてはアイテム職人に間違いない。……その割には戦経験多いな、俺。
≪えー、お前がいると戦闘が楽なんだけどなー≫
≪がんばれよ戦闘職≫
丁度調合が成功したタイミングだったので完成したアイテムをすぐに下の売り場に送ってもらう。前回のことがあったのでしばらくは遊女の方を増やしてもらえて助かったな。今度ティニアさんに何かお礼をしないとな。
さて、解放軍はどうやって街を解放するのかね。
さて次回は戦闘回なのか? それともまた調合回なのか? それとも別の何かなのか?
では、また次回です。




