第八話:準備と決意
またしても遅れて本当に申し訳ありません。執筆する時間はたっぷりあるのにつなぎの話が思いつかない。気晴らしに書いてるメインテーマであるエリア3の話ばかり完成されていく……
それと、前回の感想でお金事情についてご指摘があったので現在調整中です。買取ももう少し後で出そうかなと思ってましたが、もしかしたら今までの三章の話を書き換えるかもしれません。
まさかのアイスの注文に驚くも詳しい話を聞くことにする。
「実は昨日ハイフェアリー様同士の会合があったそうなのです」
「そんなのあるんですか」
「はい。詳しい話までは分かりませんが、聖樹の管理についてのお話だと聞いています」
聖樹というと、あの桜の樹か。そういえばあの時行って依頼一度も行ったことないな。ランク高い薬草も今なら扱えそうだから今度行ってみようかな。
「……あれ? なんでみなさんがハイフェアリーの会合があったことを知ってるのですか?」
「当然、私がお願いしたからよ」
遊女さんたちの後ろから聞こえてきた声。それと同時にモーゼのように遊女の方々が左右に分かれ、声の主であるアリサさん……とパロン様が姿を見せる。
「ってパロン様!?」
「こんにちは。お邪魔してます」
丁寧にお辞儀してくれるパロン様だが隣でアリサさんが同じように頭を下げる。こちらは謝っているようだが。
「ところで〝様″は止めていただけますか? 何回かお会いしてますし」
「いやいや! 里長であるパロン様を様付けしないのは失礼では?」
「アルケさんは見た目妖精族ですが異世界からの客人なのですよね? ならば私に遠慮しなくてもいいですよ」
パロン様の表情が懇願しているように目がウルウルしてる。運営のAI開発部の方々はどこまでAIを進歩させるつもりだ!?
何とか説得してもらおうとアリサさんを見るとさらに深く頭を下げている。謝罪だと思うのだが、頭を上げる様子が全くないことから「こっちに話しかけないで!」と伝えているのだろう。ずるいぞ、おい。
遊女の方々もどうしていいかわからず目をそらしている。こうなると選択肢が無いな。
「わかりました」
「本当ですか!」
「ですが、せめてパロンさんと呼ばせてください」
「……これ以上はさすがに無理そうですね。わかりました」
ふぅ。この場は何とかなったな。
「ところでどうしてアイスの追加を?」
「実は会合では交代で食事を出すのですが、今回は私の番だったので〝ダリルアイス″を皆さんにお出してとても好評でして。「ぜひ次も」とお願いされて、断れなくて」
「断れない?」
「私は長としてまだ20年しか経験していない若輩者なので」
まさかの先輩後輩関係があったのかよ。しかし、新しいアイスと言われても食材が無いな。
「今の時期だと私が管轄する範囲で旬の食材が無いので、これを渡しますのでお願いできないでしょうか?」
そう言うとパロン様、いやパロンさんは指先を動かすと空中に魔法陣が現れ、光ったかと思うと中心から何枚かの紙が出現した。どういう仕組み?
その紙を束ねて俺に渡してきたので受け取ると驚愕のメッセージが表示された。
『〝妖精の秘薬レシピ″×8を手に入れました』
「はぃ!? 何ですかこれ!?」
「各長、私も含めてですがアルケさんのお役に立てそうな薬の調合方法です。お役に立てればいいのですが」
困惑しながらもレシピを1枚づつ確認していく。しかし全く読めない。
「もしかして妖精専用の言葉で書かれてます?」
「いえ、そんなことはないはずですが」
無効としても予想外の状況らしく慌てているパロンさん。とりあえずもう一度見てみると『【錬金術】のランクが不足してます』という表示を見つけた。
「いや、判明しました。どうやら今の私では調合できる実力が無いみたいです」
「! そうなのですか!? それは大変失礼しました!」
先ほどと違い勢いよく、それでいて深く頭を下げるパロンさん。「すぐに別の物を」と言ってくれたが俺は「これでいい」と言った。
ランクが足りないということはおそらくこれが調合できるのはランク5、つまり最高ランクなのだろう。ならば当然効果は間違いなく高い。それを見逃すほうがもったいないと思ったのだ。
あとリゥムダガー同様、目標があるのはやる気が出てくるからな。
「それでは新アイスは完成次第、アリサさんに伝えますので」
「ありがとうございます。アリサ、勝手に食べないでよ!」
「私ってそこまで信用無いのですか?」
「そんなわけないのよ」「どうでしょうねー」と言い争いを続けている二人を見ているとただの騒がしい二人組にしか見えないが、終始遊女の方々が緊張しており、二人が帰った後全員気が緩んで床に腰をつけるように体を崩したのを見て「やっぱハイフェアリーって影響力あるなー」と感心した。
思わぬイベントがあったが〝黒鉄″作りに取り掛かる。努から早いうちに欲しいと言われたのでレシピ通りの調合をする。個人的にはここに調合粉末や他のアイテムを加えてより強固な物を作りたいが、今回は私情を入れるわけにはいかない。
なんせこれがあれば城壁を強化できる、さらに魔族の進行がまもなくならばここで時間をかけるわけにはいかない。
そうしてルーシアからもらった〝黒曜虫の甲羅″10個から〝黒鉄″5個が無事完成した。後はこれをラインに届けるだけなんだが、そのために向かったブレイズのギルドハウスには『ギルドメンバー全員外出中』のプレートが取っ手に掛けられていた。
「全員ダイブインしてないってことはないだろう。となると、まさか全員エリア3にいるのか?」
ブレイズは今や50人を超える大ギルドになっている。その全員が向かってるとなるともしや現在進行形で魔族の襲撃を受けている!?
「とりあえず、こうなれば俺がエリア3に行くしかないな」
幸いにして解放された転移泉の転移先はだれでも使用可能だから俺でもエリア3に行ける。さすがに街中にまでは進行されていないだろうから多分大丈夫だろう。
「念のため、アイテムは補充していくか」
一度ルーチェに戻り〝聖樹の籠″に保存しておいた攻撃アイテムを取り出す。その様子を見ていたエイミさんに呼ばれた。
「一体何をするんですか?」
「友人に先ほど作った物を渡しに」
「そのために、それがいるのですか?」
「ええ」
すると何かを考え込み、一度頷くと俺に直径5㎝くらいの小さな赤い珠を渡した。
「これは?」
「〝レッド・アイ″という魔力が込められた宝玉です。飲み込めば魔法適性が無い者でも5発くらいは《ファイヤーバレット》が撃てます」
え、なにそのチートアイテム的なものは。
「気にしなくても、この宝玉を生み出せる専用の樹木があるのです。〝フレイムボム″の登場によって最近は全く使われなくなり、保管庫も限界になったのでどうしようか会議しているところなのです。だからもしアルケさんが活用できるのなら、引き取ってくれませんか?」
ふむ。魔力が込められた宝玉ということはフレイムストーンの代替品になりえるかもしれない。そして魔法が使えない俺にとっても新たな攻撃手段になる可能性もある。
「なら、もらっておきます。できれば今お持ちの分全部もらえますか?」
「はい。えっと……全部で15個ですね」
少し前に見たパロンさん同様魔法陣を空中に描くと14個の〝レッド・アイ″が出てきた。あれって俺たちプレイヤーが持つアイテムボックスと同じようなものなのかもしれないな。
(装備は問題なし。最悪の場合はスフィレーンに頼ることになるな)
右手に光る指輪が一瞬きらめいたように見え、思わず笑みを浮かべながら俺は初めて最前線の場所へと向かった。
次回以降ですが、前書きにも書いたようにエリア3での話はそこそこ書きあがってるので、しばらくは水曜日投稿できると思います。
いつもお待たせして本当に申し訳ありません。




