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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第三章:希望を照らす想い
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特別話:クリスマス? いえクルシミマスです

タイトルへのツッコミは無しでお願いします。

「邪魔だ、どけー!」

 「右翼脆くなってるよ! 集中して!」

「いい加減にしろー!」

 「それはこっちのセリフー!」

「討伐対象隠してどうするんだよ!」

 「あなたたちには心が無いのですか!?」


さて、クリスマス限定フィールド“スノーコート”。そのうちの第三コートに俺はいる。全部で八コートまであり、上空には瞬く星々の前にスクリーンが浮かび、他のコートの状況を映している。なお、どこもここと同じような展開となっている。

なお、コートはどこも同じ形でサッカーコートの倍の面積があり、コートの外に広がる森が境界線となっている。つまり、森の中へは入れない仕組みなのだ。


「まあ、気持ちはわからなくないけどな」


今回のクリスマスイベントは討伐系で対象モンスターを狩ることで手に入る〝聖夜のチョーカー″を集めることだ。このチョーカーは普通に装備品としても使用可能だが、集めた数に応じてアイテムと交換可能となっている。

ここに連れてきた空ことエルジュによると24個集めたときに交換できるアイテムがかなり優秀なので最低でも一つは欲しいとのこと。そのアイテムとは〝育成の飴玉″。これを使うと30分間経験値が倍になるらしい。ただし、ドロップとコルは獲得できないので完全にレベル上げ用のアイテムだ。


そしてそう言ってたエルジュは今敵対する集団に向けて矢を放っている。討伐対象モンスターを守るために。


(しかし、これは明らかに意図的だよな)


俺は視線を戦闘から守っている集団の最後方に向ける。あ、俺は今小高い丘の受けにいるので全体をよく見降ろせるのだ。


そこには十数体の小人らしき存在がいる。頭にピンク色の熊の頭みたいな帽子をかぶり、金色の星と白い雪の飾りがよく似合う緑のドレスを着こなし、赤い靴を履いた小学生くらいの背丈。

単純に言えばピンクの小熊が擬人化してクリスマスっぽい衣装を着たって感じだ。名前はメリクマだ。そのまんまかよ。

その容姿に骨抜きになった女性プレイヤーたちが攻撃をためらっているところに斧使いの男性プレイヤーが攻撃し、その攻撃で一体が消滅した。HPはそんなにないらしい。


しかし、ここから男性プレイヤーの悲劇が始まる。いなくなった仲間を思っているのか消えた場所をじっと見つめ、さらには泣き出す子まで現れる。その光景を見た女性プレイヤーたちの心境が一つになった。


すなわち「なんてことしたんだ!」という怒りの感情だ。その結果男性プレイヤーに女性プレイヤーたちの攻撃が殺到。このフィールドでは特例としてプレイヤーからの攻撃でも痛みを感じる。あくまで痛みだけであってHPが減ることは無い。

しかし、攻撃されたほうはたまったものではないので反撃をする。それがきっかけとなって男性プレイヤーたちVS女性プレイヤーたちの争いが始まってしまった。


それをなんとか察知できた俺はすぐさま戦線離脱。この丘を登ってそこから戦いの生末を見守っているのだ。







戦闘開始からすでに30分が経過した。限定フィールドは八コートしかないので交代の意味も込めて1時間しかいられない仕様になっている。1時間が近づいてくるとメリクマたちがフィールドの外に逃げ始めてしまうのでそれまでに少しでも多く討伐する必要があった。

そういう意味ではこの争いはメリクマが逃げるために時間を稼ぐことこそ女性プレイヤーたちの目的なのだ。


守られているメリクマたちはたまに女性プレイヤーたちに話しかけられるが言葉を理解しているようには見えない。というかここからでもおびえているのが見えるのだが、どうやら女性プレイヤーたちにとっては男性プレイヤーたちが進撃してくるからだということになっているようだ。


 「みんな! あと半分よ! 憎き男たちからメリクマちゃんを守るのよ!」

 「「「「「「おおー!」」」」」」

「げ、もう半分過ぎたのか。そろそろ逃げ出すぞ! 全員急げ!」


お、どうやら本気で攻めるようで周りにも被害が出るにもかかわらず男性プレイヤーの魔法使いたちが範囲の広い魔法を使いだした。となれば当然それを妨害しようと女性プレイヤーたちも魔法で応戦する。

うーん、外から見てる分にはきれいな花火がたくさんあるように見える。周りの雪景色と合わさって幻想的だ。


そんなとき、指輪がチカチカ光っているのが見えた。お、クールタイムが終わったか。


「出てこい、パルセード」


指輪が光り、パルセードがその姿を現す。指輪を得て以降、クールタイムが終わったらいつも召喚してたからもはやおなじみの光景だ。あくまで俺限定だが。


「ちょうどいいや。パルセードあそこに行って怯えてるメリクマたちを元気づけられないか?」


パルセードは俺の視線に自らの視線を合わせ、納得したかのように頷くとそのまま駆けていった。

当然雪なんて初体験のため足が埋まって動けなくなってしまった。涙目で助けを求められたのですぐに救出。それ以降は慎重な足取りでメリクマたちのところに向かった。


そしてすぐさま拘束された。誰に? 女性プレイヤーたちに。

拘束されたと言っても同じように後方に匿っている状態なので話はできる。どうやら同じ言語を使っているのか安心した表情を見せるメリクマたち。この調子なら全員逃げられそうだな。

この一言で分かったと思うが、もし俺がこの戦闘に参加するなら女性プレイヤー側だ。パルセード、そしてパニヤードの存在を知っている以上、同じような小人型モンスターを相手にはできない。

甘いと言ってくれても構わない。でも、できないんだ! しょうがないじゃないか!!





いよいよ残り5分となった。ここでメリクマたちに変化が起こった。ここまでは後方で守られながら怯えていたメリクマたちが立ち上がってさらに後方へと走り出したのだ。それに気づいた女性プレイヤーが「あ!」と声を上げてしまったことで全プレイヤーにそのことが露見する。


「今だ! 魔法と矢をぶち込め!」


その隙を見逃さなかった男性プレイヤーたちの隊長が剣を掲げて降ろす。つまり、攻撃の合図だ。

それでもなんとか助けようとする女性プレイヤーたち。こうなると男性プレイヤーたちが悪で女性プレイヤーたちが子供たちを助けようとするヒーロー、いやヒロインだな。


逃げるメリクマたちを追いかける魔法と矢。それを迎撃する同じく魔法と矢。そして剣戟と怒号が飛び交うフィールド。最後の攻防が繰り広げられ、その様子は言葉で表現できないほど壮絶なものだった。


そして最後の一匹が森の奥へと姿を消して1時間が経過した。コートの四方隅に転移泉が出現し、女性プレイヤーたちは満足そうに、男性プレイヤーたちは悔しそうにコートを後にする。

俺も引き上げた後エルジュに『まだ続けるのか?』と尋ねる。


「当然だよ! あの子たちを守らないと!」


気合十分で宣言すると消耗した矢の補充に行ってしまった。どうやらすでにギルドメンバーを待機させておいたらしい。さすがだ。


(さて、バレないうちに退散しますかね)


俺はすぐさまルーチェに戻った。




「ただいま~」


返事が無いのも当然で今日は定休日なのだ。だから遊女の方々はそもそも来てないし、セリムさんとエイミさん両方がいないことからセリムさんの素材採取にエイミさんも同行しているのだろう。


「さて、忘れないうちにしておきますか」


俺はウィンドウを表示させる。それはパルセードの項目。


「まさかチョーカー持ってくるとはなぁ」


なんと、指輪に戻したパルセードがメリクマの一体からチョーカーをもらっていたのだ。そのチョーカーを呼び出したパルセードの装備画面に移す。結果、無事に装備された。


「はやく次の召喚をしたい!」


そんなわけで多くのプレイヤーにとっては必死の、俺にとってはうれしいクリスマスイベントとなった。




なお、エルジュは仲良くなったメリクマたちからなんとか24個集めたらしい。すげー。

さて、次回は30日の22時予定だったのですが、大晦日の内容なので31日0時に変更します。勝手な都合で申し訳ありませんが、ご理解よろしくお願いします。


では、よいクリスマスを♪

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