第九十九話:それぞれの変化+α
遅くなってごめんなさい!
長々とするのはやめようと思って簡潔にまとめました。
*ティニア視線*
「ほう、これは立派なものですね」
「ええ。素晴らしいですね」
『水仙』入口入ってすぐの部屋となる大広間。その中央には例の特殊な場所で拾ってきた長霊樹の枝が飾られています。枝とはいえ、さすがは長霊樹。その神々しさは言葉に表すことができません。
「ティニアさん、フェアリーガードの方がお越しになってます」
「あら? 今日は予定が入ってないはずですが」
「はい。緊急の要件とのことです」
穏やかではないですね。急ぎましょう。
「すいません、遅くなりました」
「いえ、こちらも急で申し訳ない」
部屋にいらしたのは三番隊隊長のミシェルさんですね。あら、ミシェルさんと言えば……
「もしかしてアルケさん関連ですか?」
「……確かにそうですが、私が来ただけでそう考えるのはどうかと」
ミシェルさんは苦笑してます。さすがに失礼でしたね。
「それで、どのような要件でしょうか?」
「このたびルーチェが新しくなることは知ってますよね?」
「はい、もちろん」
売り子として出張している子たちから聞いています。それがどうしたのでしょうか?
「実は、その際に新しい魔法陣を仕組むことになってます」
「新しい魔法陣?」
「六番体隊長エイミが密かに仕込みました。その魔法陣は音声魔法陣です」
またずいぶん珍しい魔法陣です。音声魔法陣とは魔法陣を通じて話ができる魔法陣ですが、流す魔力の量を変えることで複数の魔法陣で交流ができる魔法陣です。
この『水仙』だと大広間に設置されていて、ここで指名した遊女に部屋に向かうよう指示を出してます。
「しかし、なぜ?」
「どうやら客人の間でアルケの評判が上がっているようです。そこで広く情報を得るために設置することになりました」
「……なにかあったのですか?」
「再び魔族が発見されました」
!?
「間違いないのですか?」
「はい。前に確認された魔力と同じモノでした」
それは間違いないですね。また厳戒態勢となるのでしょうか。
「しかし、発見されたのは残光に近いものでした。向こうの狙いはここではないと思われるのが総合隊長の判断です」
「それでも、警戒はしておく必要ありますね」
「そういうことです」
またしてもアルケさんの力を借りることになりそうですね。しかし、力を借りるだけではありません。そのための武器も今作成中ですからね。
「どうかしましたか?」
「いえ。他に報告はありますか?」
「いいえ、これだけです。では、これで自分は失礼します」
「あら、遊んでいかないのですか?」
「これでも任務中なので」
相変わらず真面目な人ですね。
*ティニア視線・終*
*アリア視線*
「薬の補充はこれでいいですね」
「姉さんも大変ね」
「そう思うのなら手伝ってくれないの?」
「私まったくわからないもーん」
そう言いながら寝転がるアリサを横目で見ながら調薬が終わった薬を保管庫に入れます。そして一つのツボを確認します。
「もう少しかな?」
このツボの中身は新しい薬の試作です。アルケさんに誘われて参戦してみましたが、やはり私自身の力はアリサやティニアと比べると劣ります。
本職が薬師ですから攻撃を鍛えても仕方ないですが、いざという時のために備えておく必要がありますからね。
「姉さーん、お茶な~い?」
「右の戸棚、三段目!」
全くあれでもハイフェアリーとしては他よりも優れているから不平等ですよね。
「姉さーん! お客さーん!」
あら、急いで戻らないと!
「ごめんなさい!」
「いや、いいよ」
おや? いらしたのはオウルさんです。アルケさんから紹介してもらった鍛冶職人さんです。
「ほれ、注文の品じゃ」
「ありがとうございます。お代はこちらに」
「……確かにの。しかし、不思議なものを注文するの?」
確かにコレを鍛冶職人に注文するのはおかしいでしょう。しかし、これは私にとって必要な武器です。
「あら、少し軽くありません?」
「アルケから新しい鉱物をもらっての。それで軽量化に成功しておる」
さすがはアルケさん。あの人はいったい何を目指しているのでしょうか?
「その分多くの鉱物を使えたので強度と重さは申し分ないぞ」
それは好都合です。
「ところで、薬はいります?」
「……では、それを頼む」
え? それを求めるのですか?
「えっと、いいのですか?」
「お金はさっきもらったからの」
「あら、ピッタリ」
向こうのほうが一枚上手でしたね。まだまだ勉強不足です。
*アリア視点・終*
*ライン視点*
「こっち終わったわよー。合格したのは三人ね」
「ということは、合計で二十二人か。いよいよ大型ギルドじゃない?」
スバルの言う通り、ブレイズも合計50名以上のメンバーとなった。次のアップデートではギルド関連もあると書かれてたから少し考えたほうがいいな。
「とりあえずアーシェ、その三人はどうした?」
「今日は帰らしたわ。この後会議でしょ?」
「へ?」
会議なんてあったか?
「へって、スバル?」
「ごめん、忘れてた」
えっと、泣いていいかな? 俺、このギルドのマスターだよね?
「ほら、隅っこにいないで会議室に行くわよ」
「お前らには慈悲の心が無いのか?」
「いい加減、歩いてよギルマス!」
……今度アルケに相談しよう。人心掌握について。
この後会議では俺が考えていた次のアップデートに対してどうするかという話と中断していた第二エリア攻略について話した。これに関しては他のギルドとも連携を深めないとな。
*ライン視点・終*
*エルジュ視点・終*
「では、大型クエストに関しての報告は以上でよろしいですか?」
カリンさんが周りを見渡し、だれも発言しなかったので会議はこれで終わりとなった。
幹部の方々が退出していき、残ったのは私とカリンさん、そしてミオさんだ。なぜか会議中に二人から残るように指示されたのだ。なんとなく用件は想像がついてる。
「さて、エルジュさんに残ってもらったのはあなたの知り合い二人が持っている弓についてです」
そして私の想像通りの展開となった。
「まず先に言っておきますが、あの弓の出所についてはすでに知られてますよね?」
「錬金術のお姉さんことアルケさんと一緒にいたNPCの作戦ということは調べがついてますが、それ以上の情報はありません」
「それにしても【錬金術】だけでもすごいのに、お姉さん何者?」
「何者と言われても、ただの錬金術が好きなだけですよ」
実際それ以上に兄さんに特化したものなどない。他に思い付くのは女性よりも肌がきれいとかそんなくらいだ。
「なにも思いつきませんか? 特にNPC関連で」
「……しいていえば、NPCと思っていないところでしょうか?」
「どういうこと?」
「これが最初のVRMMOで普段もあまりゲームしないので、NPCをただのAIと思っていないのです。だからこそ、あそこまで好感度を上げられたのではないでしょうか?」
「なるほど。それは一考の余地がありますね」
それを最後に考え込むようになったカリンさん。ミオさんはそれを見て「もういいよ」と言ってくれたので会議室を退出した。
「あれ?」
「あ」
「やほ~」
「おわったの?」
扉を開けた先にはスワン・シオリン・リボンの三人が待っていてくれた。
「いつ終わるかわからないから先にダイブアウトしていいって言ったじゃん」
「遅くならないとも言ってたじゃないですか」
「そうそう! せっかく終わったんだからどこか食べに行こうよ!」
「え? 聞いてないよ!?」
ついさっき話題になっており、ついでに言えばこのギルドのみならずほとんどの弓使いから注目を集めてるっていう自覚無いよね二人とも。
ちなみに、シオリンもあのブレイズのギルマスであるラインさんと一緒にクエストしてたから注目されている。
しょうがない、すこし注意しておくか。
「よし! どこ行くの!?」
楽しく食事でもしながらね♪
*エルジュ視点・終*
*???視点*
「首尾はどうだ?」
「ほぼ制圧が完了しております」
「ほぼ?」
「はい。どうやら適わないと考え、この街に集結しているみたいです」
部下が空中に投影した地図を見ながら考える。確かこの街は例の場所とつながっている場所だったはず。状況によっては進行中にあの人間どもと戦うことになるか。
「よし。ならこの街を警戒する程度の戦力を残して、他は全て第二段階に回せ」
「よろしいのですか?」
「制圧してもいいが、この場所がどこか知っておろう?」
「わかりました。では、そのように」
投影した地図が消え、部下も去る。
「次は負けんぞ。異世界から来た人間ども!」
*???視点・終*
*運営視点*
「そっちはどうだ?」
「90%終了。後はアップデートしてからだな」
「ギルドもこれで活性化して欲しいですね」
「後はいよいよ判明するテイムモンスターの条件も楽しみだ」
「反応が怖いですけどね」
「お前ら! 作業終わったのなら他を手伝え!」
「「「「「は~い」」」」」
「向こうは大変そうですね」
「そりゃ、アップデートが控えてるんだ。当然だろ?」
「こっちは平和ですね」
「AIのデータ修正くらいしかやることないからな。表面上は」
「聞こえますよ?」
「いいじゃないか。それより、あのプレイヤーの情報は?」
「これです。すごい数値ですよね、コレ」
「……これなら次の段階に進められるな。ロックの解除許可は?」
「問題なしです」
「よし、少しばかりお仕事しますか」
*運営視点・終*
*次回予告*
到達する第三エリア。そこで待つのは……
「これが、新しいエリア?」
「嘘だろ?」
「あ!? た、助けてください異世界の客人の皆さま!」
一方、アルケのほうにも急展開が!
「君がアルケか?」
「えっと、どちらで?」
「私? 創造主かな?」
「アルケさんには知ってほしくなかった。闇の錬金術なんて」
「そんな、バカな」
「ハハハ! その程度か、人間の錬金術師!」
そして新たな力の覚醒。
「モウ、ウシナイタクナイ!」
「マスターノコト、ワラワセナイ!」
「「ダカラ……!」」
CWO
第三章
〝希望を照らす想い″
12月から投稿開始!
(11月中は誤字脱字修正に入るため)
明日詳しいことを活動報告に載せます。




