第九十五話:最終試練
ようやく終わりが見えてきた……
いつも通り朝食を作りながらこれまでのことを思い出す。いろんなことがあった大型クエストも残るは最後の遺跡のみ。
実は最後の遺跡は一切の戦闘が無い。その代わり何らかの試練があるみたいだが、それに関しては全ての情報が運営によって制限されているため掲示板にも載らない。最後は自分自身の力だけで突破しなければスキル枠増強剤は獲得できないのだ。
さらに他の遺跡と異なる点はもう一つある。この遺跡は今まで遺跡で集めてたアイテムがあればスキル増強剤を獲得できるという点だ。
実は最後の試練は単独で突破しなければならず、例えパーティーで入っても各自異なる場所に転移されてしまう。なお、これは運営から発表されているので間違いない。
それに加え、今までいっしょに戦ってきたリボンとスワンとは昨日の時点でお別れした。なんでも補習が終わっていない空と栞ちゃんためにこれから栞ちゃんの家で勉強会があり、それが終わってからダイブインするためいつになるかわからないと昨日伝えられた。そのため「スキル増強剤は各自で獲得がんばろう!」ということになったのだ。
まあ、アリアさんたちとは一緒に行くから一人ではないのだが。
ちなみに、一緒に戦ってきたNPCには運営、いや彼女たちからすれば神から何かの報酬が与えられることになっている。
……より強力なフライパンだけはやめてほしい。いや、マジで。
朝食を作り終えたところで空が起きてきたので一緒に食べ、その後空は栞ちゃんの家へ、俺は自室に行ってダイブインする。事前に時間を伝えておいたので転移泉にはすでに三人がそろっていた。
ついでに知らない男性プレイヤーもわんさかいた。
いろんな言葉が飛び交っているが、まとめると二つの部類に分けられる。
一つは「ねぇ、一緒に行ってくませんか?」みたいなナンパ系。あと装備もそこまで強いものに見えないことからおそらく三人の存在を知らないと思われる。少しでも知っていればもう一つの集団になっているだろうし。
そして集団の大半を占めるもう一つは「ぜひ、お力を貸してください!」というサポート要員欲しい系。ティニアさんとアリサさんの実力は掲示板でも話題になっており多くの人に知られており、一緒にいるアリアさんもスプライトでポーション売ってるNPCということがすでにばれている。その関連でアリアさんもお誘いを受けているのだろう。
まあ、もう少しでクエストが終わってしまうので少しでも強い戦力を求めるのはよくわかる。しかし、こちらとしてもさっさとクエスト終わらせたいので申し訳ないがお引き取り願おう。
「ちょっとすいませーン!?」
「なあ! ちょっと魔法使いの子貸してくれ!」
「何言ってんだてめえ! こっちのほうが先だ!」
「ジャマよ! あのポーション持ちの女の人今日だけ私たちのパーティーに……」
「そうはさせるかよ!」
声をかけた途端始まる言葉だけのPvP。様々な怒号が飛び交い、中には俺にレアアイテムのトレードを申し込んでくる人もいるがすぐに消す。
さてこれをどう納めるかと思った矢先、突然十何人のプレイヤーが吹っ飛んだ。ティニアさんかアリサさんの魔法かと思ったが、炎も雷も見えなかったぞ?
「そこまでです! いい加減にしなさい!」
声が聞こえてきた方向に全員が顔を向ける。そこにはエイミさんを先頭にフェアリーガードの団員が杖をこちらに向けていた。
「今のは手加減しました。これ以上騒動を起こすのなら、次はありませんよ」
おお、エイミさんでもあんな低い声が出せるのか。普段はおとなしい人が怒ると怖いという言葉を体現しているみたいだ。
まあその程度で止まるわけがなく、一人が勧誘をしたところでまた全員が勧誘を始め、俺にも再び人が寄ってくる。
「警告無視と判断。総員、遠慮はいりません!」
その言葉をきっかけに杖に集う色とりどりの魔法。さすがにこれはやばいと察した女性プレイヤーが逃げると同じように散らばるプレイヤーたち。それでも一部はいまだに交渉を続ける。
そのプレイヤーたちに向けて本当に魔法が飛んできた。
「「「「「ギャーーーーーーー!」」」」」
火・水・風・土の基本属性の魔法が次々とプレイヤーたちに直撃する。エイミさんがいることから第六部隊と思っていたがどうやら間違いない様だ。誰一人として俺やアリアさんには一切魔法が当たらないし、プレイヤーが避け当たりそうになったらすぐに魔法が消えた。
魔法職には有名なスキル〔キャンセル〕だ。どの属性魔法でも習得可能でさきほどのように放った魔法を消すことができる。しかしながらすぐに消えるまで鍛えるのは結構難しいと聞いている。それをあっさりこなすとは、さすが魔法を主とする第六部隊だ。
しばらく魔法が飛び交い、俺を除く全プレイヤーが去ったことでようやく三人と合流する。
「大丈夫……なわけないですよね、すいません」
「い、いえ」
「さすがに驚きました」
「でも、ティニアひそかに準備してたよね?」
「ええ。アルケさんの姿が見えたのであれ以上しつこいなら〔緋色炎舞〕で燃やしてました」
ティニアさんたちは笑っているが俺としては全く笑えません。果たして魔法でボロボロになるのと炎の舞で炎上させられるのはどちらのほうがマシなんだろうか。
さて、しょっぱなから面倒なことがあったがクエストフィールドに転移し、本来なら最後に行くはずだが、俺たちが二回目に突入した遺跡に向かう。
道中戦闘が数回あったが先ほどのうっぷん晴らしとばかりにティニアさんとアリサさんが魔法を連発したおかげで何の問題もなく進む。
遺跡に着くと懐かしいトラップの数々は前と同じ方法で解除する。入口の罠解除のためにまたしても犠牲になったウサギ型モンスターに感謝し、前に来た時に判明したろうそくの火をここに来る前に手に入れた枝に灯し、数体像が並んだなつかしい部屋に到着する。
それぞれの像に手に入れたアイテムを捧げる……ところで手に入れたアイテムが剣・盾・槍・そして〝ピースNo.5″の4つしかないことに気づく。しかし、もう遺跡はないはずだ。
とりあえずそれぞれの像に欠けている武器を捧げる。像はそれぞれ同じ顔をしており、全員が三つの武器を持っている。その中に一つずつ欠けている像があったので迷うことはなかった。
全て捧げると全ての像の目が光る。そして移動し始め奥に書かれていた扉が出現する。
恐る恐る扉を開けると強制的に転移された。
転移された先にはまだ扉があった。なお後ろは壁になっているので戻ることはできそうにないので、仕方なく扉を開ける。当然【看破】でトラップが無いことを確認した後で。
中には大量の宝箱と立て看板があった。とりあえず看板を確認する。
『ここにある26個の宝箱のうち、一つだけ奥に進めるアイテムが入っている。宝箱を開けるにはNo.5を看板下にある台座に置け。そうすれば5回だけ使用可能なカギへと変化する』
指示通り台座に置くと確かにカギに変化した。すると立て看板が光り、新たな看板へと変化した。
『そのカギを使って正解を開けよ。少ない回数に応じて特殊な特典ももらえるよ♪
ちなみに、ヒントはアイテム名でもある〝5″だよ。いろんな5を考えてみよう!
あ、5回外れても先に進めるアイテムは上げるから大丈夫♪』
……え、最後はクイズなの!?
さて、みなさんは解けますか?
答えは水曜日の投稿で♪




