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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第九十二話:決意の先に……

遅れてしまい、本当に申し訳ありませんでした。ラストバトルです!

突然のウィンドウに思わず動きが止まる。これまで一度も成功したことが無い【融合】の表示。何がトリガーとなって発動したのか不明なのでどうすればいいのか全く分からない。


その間にも戦況は動く。

ティニアさんは相変わらずスカーレットファンで応戦しているが付属している炎が前よりも小さくなっている。アリサさんはスワンから受け取った〝生命の甘露″で回復したため魔法でティニアさんを支援している。

一方エルジュはスワンが肩を貸して移動している。歩いているその先はリボンが倒れている位置だ。不安だが、回復させればエルジュが何とかしてくれるだろう。


(となると、この状況を変えるには何か大きな力が必要だ)


そしてその力となるかもしれないものが今目の前にある。ここで【融合】が成功すれば逆転への道が開けるかもしれない。


しかし、失敗すればパルセードが消滅してしまう。


(そういえば、もう一つの条件である特殊な加護を受けたアイテムって……)


その場所に触れてみると自動的に水の階で加護を受けたあの〝レインティア″がセットされた。

有機物のほうに触れてみると、やはり〝パルセード″と表示される。



どうするか悩んでいると再びパルセードが鎧を叩く。回復してきているとはいえその拳はあまりにも弱弱しい。


こんな状態で成功するとはとても思えない。しかし、全回復を待つ余裕はない。


視線を戦闘に戻せばとうとう炎が消えたスカーレットファンでは受け止めきれず吹き飛ばされるティニアさん。そのティニアさんを守るように雷撃を放つアリサさん。しかしその雷撃は白武者の刀によって弾かれてしまう。それでも追撃を放つ間に再び炎を灯して戦闘に戻るティニアさん。


なお、後輩三人はいまだに固まっている。いまだにリボンが倒れていることから、どうやらリボンを守ることに専念したようだ。





決断することができずにいるとさらに叩かれる鎧。その力が強くなっているのでパルセードが回復していることの証明なので安堵するが、同時に必死なその想いにどう答えていいかわからなくなる。


(失敗すればパルセードを失うことになる。アイテムのほうは何とかなる可能性があるが、今のところパルセードは西の遺跡のボスとしてしか登場していない。この先またパルティリングが手に入る確率は相当低い)


実際、リング関連の情報はよく出ているが、パルティリングの情報は一度も見ていない。つまり、それだけ手に入る可能性が低いアイテムだということだ。

だからこそ、この場で軽々しく【融合】を発動させて失敗すれば永遠に会えなくなるかもしれない。


「マスター」


パルセードの声が響く。その次を聞くのが怖くて耳をふさぎそうになる目に声が届いた。


「シンジテ、マスターノ、チカラ」

「俺の、力?」

「ミテタ。マスター、ズット、ダカラ、シンジテ」


パルセードの瞳から感じる自信。それはパルセード自身ではなく、俺を、その中にある何かを見つめている。


(俺の力。そんなもの、一つしかない)


そう、俺が信じられるほどの俺の中にある力。それこそ、俺がこの世界で生きる証。


【錬金術】


見てたのはおそらく指輪の中からなのだろう。それ以外に考えられない。


他人に信じろと言われているのだ。

その張本人である俺が信じないわけにはいかない。


「……いいのか?」


最終確認をするもパルセードはすぐに頷いてくれた。こうなれば、もうやるしかない。


しかし、すぐにどうやればいいのか戸惑う。


(我ながら錬金術のことになるとすぐ熱くなるのはどうかしたほうがいいな、これは)


パルセードにのせらせて決意したはいいが、舞台に魔法人を刻むことがなどできない。試しにリゥムダガーを刺してみたが全く傷つかない。


困惑する俺に再びパルセードの指が動く。その先には放置したままのウィンドウ。


〝パルセード″と〝レインティア″がセットされていることを確認し、一番下のYESに触れる。


するともう一度確認のためのウィンドウが表示されたので、一度パルセードと視線を合わせた後、再びYesを押す。


その途端、俺の体から溢れ出す紫色の霧状の何か。それは俺を中心に広がり、舞台に染み込んでいく。染み込んだ個所から舞台の色が変わり、木目しかなかった舞台にそれ以外のモノが刻まれていく。


(これって、【融合】の魔法陣?)


何度も失敗したらからこそわかるその形状。どういう理屈なのか【融合】の魔法陣が自動的に完成されていく。


(いや、よく見ればMPが少しずつ減っている。つまり、これはMPを消費して魔法陣を作っている……ってそれは魔法陣魔法じゃないのか!?)


エイミさんから教えられた魔法陣魔法。

杖などの道具で魔法陣を直接描くのではなく、魔力によって魔法陣を描く魔法。それによって普通は自分で覚えている属性の魔法しか使えないところを、他の属性の魔法も使えるようになる魔法使い職にとっては夢のような魔法だ。


いまだに成功したことは一度も成功したことないのに、まさかこんなところで見ることになるなんて夢にも思わなかった。


MPの霧が舞台に染み渡り、魔法陣が完成する。

MP同様紫色に発光する魔法陣。やがてその中央に〝レインティア″が出現する。中央に紋章らしきものが見えるのであの時加護を受けた〝レインティア″だ。


そして抱いていたパルセードも同様に腕の中から魔法陣の中央へと転移する。


紫色の輝きに包まれるパルセードと〝レインティア″。

ついに【融合】が始まるのかと思ったら、双方から加護の紋章が浮かび上がり、合わさって一つの大きな魔法陣へと姿を変え上空へ浮かび上がる。

上空の魔法陣が水色の閃光を放つと融合の魔法陣の紫色の発光と交じり合うように二つの魔法陣の間で水色と紫色の閃光が入り交じり合う。


やがて上空の魔法陣が下がり始め、逆に融合の魔法陣が上昇を始める。それぞれは互いに動きあい、パルセードと〝レインティア″が滞空する地点で重なり合い、強い発光となる。あまりの眩しさに思わず目を閉じても白く塗りつぶされる視界。


視界が元の黒を取り戻すと同時に目を開けると、そこには空中に浮かぶ一人の少女がいた。


青い髪だったパルセードと違い、水色の髪が足首に届くほど伸びている。

小学校低学年くらいだった背も小学校高学年になったと思わせるほど伸び、麦わら帽子は消えた代わりに左側頭部に髪飾りのように麦わら帽子型の小さなヘアアクセがあり、そこから腰に届くほど長いリボンが付いている。

服装もワンピースからゴシック調のドレスとなり、裾はまるで波のようなデザインとなっている。そのデザインは袖にも採用されていた。


そしてパルセードがそのまま成長したような顔立ちに閉ざされていた瞳が開く。

その色はまさに蒼。何にも支配されない力強さと威厳を纏った曇りなき蒼。


「初めまして、我が主。水の聖霊に仕えし雨の精霊ことスフィレーン。主の願いに応えるため、この地に降臨いたしました」


『【融合】成功! さらに特殊条件を満たしたことでさらに上位クラスである【神聖融合】に成功しました!』

『融合結果:スフィレーン』

『スフィレーン:別名〝雨の精霊″。雨を自在に操ることができる大精霊。その力で土地に豊作をもたらし、時に土地を守るため人々に天災を与える。〝天の女神″と呼ばれることもある』



舞台に降り立ち、膝をつけ自己紹介すると同時に表示される複数のウィンドウ。

しかし、俺はいきなりの事態にまたしてもどうすることもできず、呆然としていた。


「えっと」

「我が主がいまだ困惑の域にあることは承知しております。しばしこの場にてその命を待つおつもりでしたが、どうやらそういうわけにはいかないようですね」


立ち上がって顔を向けた先では吹き飛ばされアリサさんに突っ込んだティニアさんと追撃を与えようとする白武者。エルジュが矢を放つも勢いを殺せていない。


早く助けないと体が動く前に声が届く。


「この場はお任せを。私の力、その目にご覧になりましょう」


パルセードじゃなかったスフィレーンという存在に目を向けると左手を体の前に出している。するとその先に現れる巨大な魔法陣。


「喰らえ〔雨龍〕」


言葉を発し終わると同時に魔法陣から水の龍が姿を現し、巨大な口を開けながら白武者へと突撃していく。これには白武者も止まり、迎撃態勢を取る。

口の中へと飲み込まれる白武者。しかしすぐに水の龍は二振りの刀によって切り裂かれる。


「ほう、なかなかやりますね。なら、これでどうです?」


パチンと指を鳴らすと先ほどと同じ魔法陣が三つ同時に現れ、それぞれの魔法陣から水の龍が先ほどと同じように突撃する。

これを白武者は白とピンクの斬撃を飛ばして二匹を切り裂き、残る一匹に飲み込まれるもまたしても切り裂かれる。


「さて、これで少しは武器の威力を削れたでしょう」


三匹もの龍が倒されたのに全く焦ることが無いスフィレーン。すると今度は左手を前に向けたまま、右手を舞台に付けた。


「〔水刃〕・〔天露〕」


異なる言葉が発せられたかと思ったら左手に出現した魔法陣から水の真空刃のようなものが次々と放たれる。当然これも二振りの刀で対処されるが最後の刃を切り裂かれた瞬間白武者の頭上からバケツをひっくり返したような水が落ちてくる。


これにはたまらず白武者も顔から舞台に倒れこむ。その隙を逃すような存在ではなかった。


「では」


またしても新たな技を繰り出すのかと思ったらなんと白武者に向かって走り出した。小さなからだとは思えないほど速く、あっという間に白武者の元へたどり着くと白武者に、正確には白武者の濡れている部分に手を当てる。


「眠りなさい〔睡蓮〕」


白武者についた水すべてが淡い光を放つと音を立てて倒れる白武者。いやちょっと待て、白武者って眠らせることできたのか!?


「さて、これで終焉です」


眠らせた白武者から離れたスフィレーンは左手を動かす。初め何をしているのかわからなかったが、それが魔法陣を刻んでいるのだと完成された魔法陣を見て知った。


「消し炭になりなさい〔天雷〕」


瞬間、舞台そのものを破壊するんじゃないかと思われる轟音が鳴り響く。その正体は舞台はるか上空から飛来した巨大な稲妻。


およそ十秒程度鳴り響いた轟音が止むと、そこには無残な姿になり果てた白武者がいた。ポリゴン片にならないことからどうやらわずかにもHPが残っているようだ。


「さて、後は皆さんでとどめを」

「もしかして、わざとか?」

「はい。主とそのご友人に華を持たせるのは従者として当然のことかと」


いやいやスフィレーンさん? さっき「消し炭」とか言ってませんでしたか?

なんて考えていると白武者が動き出し、背中のブースターを噴射させて突撃した。その先にいるのはスフィレーンだ。


「!?」


想定外の事態だったらしく驚いて動こうとしないスフィレーン。

一方で俺は〝錬金術師の杖″を槍のように持ち、思いっきり投擲した。当然別の手にはリゥムダガーを握っているので【投擲】が付属されており、アクト〔ストライクスロー〕で放ったため一直線に白武者とスフィレーンの間に向かう


まだ未熟な俺が動く白武者を当てるのはまず不可能なため、狙いとしては白武者とスフィレーンの間に投げることで白武者を動揺さえ軌道を変えることが目的だったのだが、運よく白武者にぶつかる。


これで軌道がずれてくれればと思ったら白武者は急に勢いを無くし、舞台に倒れこむ。疑問に思っていると白武者にアイコンが表示され、それが【硬直】と気づく。

そう、今まですっかり忘れていた〝ゴブリンキングの核″を合成させたことで得たスキル【威圧】が発動したのだ。


「これで!」

「終わり!」

「ですよ!」


そのタイミングでエルジュの〔プラズマアロー〕、アリサさんの〔ライトニングスピア〕が命中し、とどめにティニアさんの〔緋色炎舞〕により【炎上】した白武者はとうとうポリゴン片へと姿を変えた。


「終わったの?」


だれかがフラグが立ちそうな言葉を発するも上空に表示された『CLEAR!』の文字を見て、俺たちは歓声を上げた。

というわけで、9月一杯お付き合いいただいた要塞華撃団との戦闘終結でございます。

しかし書いてみて、改めて戦闘シーンの文才の無さを実感しました。今後戦闘シーンはあまりないと思ってください。


新キャラスフィレーンの詳しい紹介は土曜日の投稿でお話しします。


では、また土曜日のいつもの時間にお会いしましょう。

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