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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第九十話:絶望の白

早くも10万PV増えました。やはり週2回だと早いですね。

あと、誤字を発見したので22時に投稿できませんでした。申し訳ありません。

敵対する俺たちと白武者。お互いにらみ合いが続き、緊張感が高まる。


その静寂を破ったのはエルジュだった。

素早い動きで矢を構え、すぐさま放つ。まっすぐ放たれた矢は白武者へと向かう。


白武者は動くことなく矢を右に持った刀で一閃し、舞台を転がった矢はポリゴン片となった。


たぶんこの攻撃で白武者の反応速度がどう変わったのかを確かめたかったのだろう、と思ったら俺以外の全員が驚愕の表情を浮かべている。


「どうした?」

「あの矢、さっきまで刀で弾かれたことなかったんですよ」

「うん。いつも刀を盾みたいにしてた」

「つまり?」

「反応速度がさっきまでより上がってる。あと、弾かれた距離も長いから攻撃力も上がってる。ようするに、全体的なステータスが向上してるってことだよ。強化素材がピンク武者なだけはあるね」


強化素材って……間違ってないけど他の言い方はなかったのか?


「さてと、こうなるとリボンはさっきの短剣必殺技があるとして、スワンは全く手が出ないね」

「そうですね。私の攻撃手段は矢のみですからね。短剣はあくまでもしもの時のための手段ですからそこまで鍛えてません」


この時点でこっちの戦力は5人。いやリボンの短剣はあの技しか使えないとすると実質4人+αみたいな感じか。まてまて、俺は戦力にならないから3人+α&壁役だな。


「あとは魔法だけど、全体的なステータスが上がってるならさっきよりも通じないってことですが、大丈夫ですか?」

「私は魔力量が心配ですね」

「逆に私は威力かな」


火力型の火属性を得意とするティニアさんと広範囲型の雷属性を得意とするアリサさん。その差がここに出て足枷になってしまったか。


「確認ですけど、アリサさんの魔力をティニアさんに譲渡できないんですか?」

「できるといえばできますが……」

「そこそこ集中しなくちゃいけないから場合によっては動かない的になっちゃうね」

「なら、そこは兄さんにがんばってもらいましょう」

「了解。てかずいぶん落ち着いてるな」


こういう状況なら戦闘開始みたいになるのがいつもなのに、ちょっと珍しい。


「そうだね。正直冷静にならざるを得ない状況って感じ。焦ってミスしたらすぐさまお陀仏だよ」

「というより、なんで攻撃してこないの?」


リボンが思わず声に出してしまったように白武者は全く動く気配を見せない。二振りの刀を構えているから戦闘態勢なのだろうが明らかにおかしい。


「たぶん待ってくれてるんだよ」

「敵が?」

「あまりないケースなんだけど、レアモンスターの中にはああいう反応する敵がいるの。しかもそういう敵に限ってものすごく強い」

「……参考までにどのくらいだ?」

「私が戦った最強は私を1としたら10以上はあるよ」

「エルジュちゃんの10倍!?」


リボンが大声を出すのも無理ない。使う武器によっても異なるがエルジュは間違いなくトッププレイヤーの一員だ。それの10倍って想像つかないぞ。


「あの時はトッププレイヤーと呼ばれている人ほぼ全員が集まったから。さすがに最強ギルドのアスタリスクがいなければ……」


とエルジュが話している最中に痺れを切らしたのか白武者が腰を落とし、背中のブースターが火を噴く。


「散開!」


エルジュの声で全員が思うように散らばる。

そして白武者が追ったのはティニアさんだった。


「ッ!」


とっさにスカーレットファンで応戦するも、白武者の力に対抗できず壁に向かって吹き飛ばされる。しかしさすがはティニアさん。スカーレットファンを舞台に叩きつけることで上空に逃げ、さらに翅で空を飛ぶ。


だが、それすらも白武者は予測していた。


そのティニアさんを襲うピンクの斬撃。威力も幅も違うがあれは間違いなくピンク武者が放ってきたあれの簡易版だ。

翅をはばたかせたばかりのティニアさんはそれを防ぐことができず、背中から壁に激突し、落下してくる。


「ティニア!」


すかさずアリサさんが落下地点に向かうも再び斬撃を放とうとする白武者。


「させるか!」

「させないよ!」


俺が盾を構えて突撃し、エルジュも矢を放つ。エルジュの矢は白武者の左肩に当たるも動きを止めることができず、俺も刀を振り下ろした衝撃波によって吹き飛ばされる。


「「!!」」


結果として落ちてきたティニアさんを抱きとめたアリサさんはまともに攻撃を受けてしまい、壁に激突してその場に伏せてしまう。


「いっけー!」


刀を振り下ろした隙を狙ってリボンが例の必殺技を放つ。さらにスワンが回復アイテムを持ってティニアさんとアリサさんに駆け寄る。


「私も忘れないでよ!」


さらにエルジュの〔プラズマアロー〕も合わさり、さすがにこれはいけるだろうと思った。だが俺の想像はすぐさま崩れ落ちた。


白武者は右手に握った刀に白いオーラを纏わせリボンの攻撃をそらし、左手に握った刀からピンクの斬撃を放つ。放たれた斬撃はエルジュの〔プラズマアロー〕を切り裂きそのまま直進する。エルジュはなんとか回避できたがそこには今まさにリボンが迫っていた。


「え!?」


リボンは高速回転しているため口を開くことはできないが目線は前に向かれているため慌てて軌道をそらすことに成功する。そのため二人にダメージはなく、二人が白武者に攻撃してくれたおかげで作れた時間でスワンが二人に回復薬を与えることができた。


なお、俺も何もしてなかったわけではない。万が一の可能性を込めて【看破】を発動させ何か弱点はないか探していたのだ。

結果としてなにも見つからなかったから意味がないのだが。


「大丈夫!?」

「だい、じょうぶ」


高速回転を終えたリボンにエルジュが近寄る。回転のせいで足取りが怪しいがすぐに復活するだろう。

俺もエルジュたちのもとに近寄り、すこし遅れて他の三人も合流した。


「さて、どうする?」


〝清緑の盾″を構えながら問う。しかしだれも言葉を発することができない。


何か手はないかと考えていると視界が眩しくなる。見れば白武者の二振りの刀が放つ白とピンクのオーラが上空に伸び、さらに交じり合っている。


「! 〔グランジェルド〕!」


とっさに俺が発動できる最も守備力の高いアクトを発動させる。

〔グランジェルド〕は【盾☆】のアクトで前方に土壁を形成するアクトだ。土壁と言ってもせいぜい2mくらいだが。それによって衝撃を受け止めることができ、土壁以上の攻撃でもある程度攻撃を緩和してくれるので自前の盾で防御できる。


交じり合った白とピンクの光だが今度は縮んでいく。土壁よりも少し長いくらいの長さで止まったそれは間違いなく二つのオーラの力によって形成された巨大な刀だ。


その刀が振り下ろされる。いや落ちてくる。土壁の上部にぶつかり、多少は速度が落ちたがそれでも視界を埋め尽くすほどの大きさだ。


「〔シェル〕ー!」


もはや半壊した〔グランジェルド〕を放棄し、今出せる最大出力の〔シェル〕を発動させみんなを守る。

だがその願いもむなしくあっさり壊れる〔シェル〕。


まるで世界そのものを破壊するかのような轟音。それでもなんとか生きていることを実感する。どうやら〔グランジェルド〕と〔シェル〕によってそこそこの威力を削れたようだ。それでもHPは1割以下。まさしく瀕死状態だ。


(みんなは……)


舞台に叩きつけられた衝撃で【ダウン】状態となってしまったらしい。【ダウン】は【気絶】のように体が動かなくなるバッドステータスだが実は【気絶】よりやっかいだ。なぜなら【気絶】なら何か衝撃を与えれば起きることもあるが、【ダウン】は横に表示されたカウントが0にならないと動けない。

カウントは『26』と表示され刻一刻と少なくなっている。少し経ってから『26』ということはおそらく最初に表示されたのは『30』と推測される。やはり想像以上に重い攻撃だったようだ。


動けない俺に近づいてくる白武者。この段階でだれからも攻撃がないということは全員【ダウン】になっているのだろう。

俺の近くまで来た白武者はピンクのオーラを纏った状態の刀を振り上げる。そこから斬撃を飛ばし直線状の全員を葬るつもりなのだろう。


(ここまでか……)


もはや打つ手もないのでせめて安らかに死ねるように祈りながら目を閉じる。



















バシャーン!



「……?」


突然鳴り響いた音に驚いて目を開ける。


そこには〔グランジェルド〕に匹敵する大きさの青い丸い何か。よく見ればそれは水でできた巨大な盾だった。


そして水の盾と俺の間に立つ一つの存在。


小学生低学年くらいの背に蒼のワンピース。そして水色の麦わら帽子。

その姿を間違えるはずがない。


「ぱるせーど?」

とうとう登場! 白武者相手にどう立ち回るのか!?


続きは土曜日です。

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