第八十九話:己が持つ力
やりましたー! 水曜日の投稿で900万PVを超えました!
みなさん、ご愛読ほんとうにありがとうございます!
この調子でまさかの1,000万PVに向けてがんばります!
CWO「行くぞ作者よ。 ストックの貯蔵は十分か?」
何か策はないかと考えるがなにも思いつかないまま時間が流れていく。せっかくティニアさんが用意してくれた人形も少しずつだが薄くなってきている。
残された時間はもう残りわずかだ。
すると何かが叩きつけられた音が聞こえ振りむくとエルジュが倒れていた。
「大丈夫か!?」
「へ、平気」
言葉とは裏腹に表情に余裕がない。これはかなりまずい状況だな。
「兄さんのほうはどうな……」
エルジュの視線の先には魔力人形のティニアさんとピンク武者が戦っている。とりあえず説明は後回しだ。
「あれはティニアさんの魔法だ。でももう制限時間が少ない」
「……とりあえず私は上に戻るよ。一人でも抜けたら厳しいから」
翼を広げ再び上空へと昇っていくエルジュ。あのエルジュすらボロボロになって戦っているんだ。俺もあきらめるわけにはいかない。
(何か、何かないのか!?)
手持ちのアイテムを確認する。しかし錬金アイテム各種と素材、回復系のアイテム。そしてそのどれにも属さないあるモノ
(そうだ。あるじゃないか)
アイテムボックスからそのあるモノを取り出す。それは〝簡易錬金窯″。そう、俺ができる最大の攻撃手段は錬金アイテムしかない。
今持てる最強の〝グレンダイム″は当てることができない。なら、それを補助するアイテムを作ればいい。
(今手持ちの錬金アイテムは〝レインティア″・〝スノープリズム″・〝ライジンディスク″の三種類。この中で動きを制限できるのは〝レインティア″と〝スノープリズム″。〝ライジンディスク″も落下地点にいないと意味がないから今回の目的に合わない)
頭の中で何を混ぜればいいか考える。しかし戦闘中であることを忘れてはいけないので念のために〔シェル〕を発動させ身を守る。これで錬金窯が壊される心配もない。
(〝調合水″と〝調合粉末″は絶対に必要。しかしこれはだけではつなぎとして弱い)
〝レインティア″と〝スノープリズム″はどちらも水系のアイテムだ。相性は問題ないだろう。しかし片方は上から落ちるだけに対し、片方は広範囲しかも持続するタイプだ。
となればそれらの特性を足す、もしくは強化できれば足止めになるはず。
実はこの瞬間〝スノープリズム″だけでもできるのではと考え魔法人形ティニアさんが離れた瞬間に投げてみた。ピンク武者は刀で〝スノープリズム″を切るもそれによって吹雪が発生。
うまくいったかと思ったがピンク武者はそのまま突撃してきた。やはり鎧武者なだけあって魔法抵抗力が高いようだ。よくよく考えてみればここは要塞遺跡でしかも相手はそのボス。魔法抵抗力が高いのは当然だ。
ピンク武者の攻撃は魔法人形ティニアさんが横から攻撃してくれたおかげで俺にはダメージが無かったが、やはり今のままではダメだ。
(とりあえず、試してみるしかない)
錬金窯に〝調合水″+〝レインティア″+〝スノープリズム″を入れ〝調合粉末″を入れる。当然一つずつでは失敗すると思っているが何度も調合する時間もないためぶっつけ本番で成功させるしかない。
混ぜながら様子を見てそのたびにハラハラしながら調合を進める。しかしここであることに気づく。
(やばい、〝レインティア″と〝スノープリズム″は固形だから調整ができない!)
普段は少しずつ量を調整するがそれができない。
以前〝グレンダイム″を試したときは〝フレイムボム″だけだったから迷う必要が無かったが今回は〝レインティア〝と〝スノープリズム″の二つを使っている。
できれば二つの特性をどちらも引き出したいが、こうなるとどちらか片方に絞ったほうが成功率は高くなるのは今までの経験からわかっている。
(今回は足止めが一番重要。そして確実に効果を発動させるためには広範囲が必要不可欠)
その考えからベースを〝スノープリズム″にして、〝レインティア″は同じ属性ということから強化材料と考えて調合を進めていく。
最初の調合からベースとなる〝スノープリズム″を2個加え、調合成功率を上げるために〝調合粉末″を足す。
結果として『〝調合水″×1+〝レインティア″×1+〝スノープリズム″×3+〝調合粉末″×2』で調合し、見事成功した!
〝アクアブリザドン″・錬金アイテム・R
〝スノープリズム″が強化された姿。持続時間の延長に加え、水属性アイテムを足したことで攻撃力も増している。
効力:C+
まさかの一発成功に歓喜するが自分の中の冷静な部分が「これではまだ足りない」と叫んでいる。
(そうだ。さっき使った〝スノープリズム″もランクRだった。あれは強化してランクRだったからこれももっと上のランクを目指せるはずって簡易錬金窯でそれができるのか?)
どうするか考えた矢先、突如声が響く。
「アルケさん! もう持ちません!」
それは上空のティニアさんからの警告。思わず上を見て、その後すぐ魔法人形のほうを見ると本来ならその体で見えないはずの景色がぼんやり見える。つまり、それだけ存在が薄くなっている証だ。
(もう時間が無い! でもこのままではうまくいくと思えない!)
すでに一つは完成しているのでレシピは問題ない。しかし素材の面では心もとない。
(なら、強化とは別の方向で攻めるだけだ!)
完成したばかりの〝アクアブリザドン″を再び簡易錬金窯に入れ、そこに〝ポイズンタブレット″とこのクエストフィールドで採取した毒草を入れる。
なにも足止めは直接な攻撃方法でなくてもいいのだ。
(失敗したらこれまでだな)
毒のせいか簡易錬金窯の中が紫色に染まっていき、さらに安定させるため〝スノープリズム″・〝調合粉末″を入れ、ついでに毒草もさらに入れていく。
そして、無事に完成した。
〝ヴェノブリザスタル″・錬金アイテム・HR
悪化した雪の結晶。衝撃を与えると周囲に猛毒の成分を含んだ雪による吹雪を発生させる。
効力:B
【永眠】:吹雪発生時に3%の確率で吹雪の中にとらえた敵を死に至らしめる
【猛毒】:5秒ごとにHP-30のダメージを与える毒を吹雪に捕らえた全員に与える
「エー!?」
思わず悲鳴を上げてしまったその性能。うん、これは売っちゃダメな奴だな。
そして俺の大声で隙ができたピンク武者に最後の攻撃とばかりに剣を振るう魔法人形ティニアさん。しかしピンク武者も間一髪それを刀で受け止めるも姿勢が崩れる。
すると一瞬こちらに向かってほほ笑む魔法人形ティニアさん。
一体何なんだと思っているとその体から炎を吹き出す。吹き出た炎は帯状になってピンク武者に巻きつき動きを止める。
これこそまさに最後の攻撃なんだと感じ、〝清緑の盾″を持っていた左手で完成したばかりの〝ヴェノブリザスタル″を握る。本来の利き腕は右腕の俺が左手で持った理由は腰から抜いた〝リゥムダガー″だ。
〝リゥムダガー″を握ったことで特殊効果が発動し、俺自身に【投擲】スキルが付属される。まだ練習が十分ではないので最初のアクトしか使えないがそれでも何かの足しにはなるはず。
「〔ストライクスロー〕!」
ただ真っ直ぐに物を投げるだけのアクト。一応攻撃力が足されるもののスズメの涙程度。しかし相手が動かない巨大な的なら確実に当てることができる手段だ。
真っ直ぐピンク武者に飛んでいき、額に該当する部分にぶつかる。
発生する紫色の吹雪。どうやら【永眠】は発動しなかったようでピンク武者は吹雪を耐えている。一方で魔法人形ティニアさんが姿を変えた炎の帯は吹雪によって消えていく。
(助かりました。ありがとうございました)
心の中で感謝と別れを告げ、再び〝清緑の盾″を構え〝錬金術師の杖″を装備する。攻撃が成功したといえこれでHPが0になるとは限らないのだ。
やがて吹雪が消える。同時にピンク武者は倒れるもその体はいまだ健在だ。
HPバーを確認すると見た感じ全くないように見える。つまり、ほんのわずか耐えきったようだ。
待っていれば【猛毒】で死ぬだろうが、相手は戦士。せめてもの手向けとして俺がとどめを刺すべきだろう。
俺は〝リゥムダガー″を投げる。今度は攻撃力が高い〔スパイラルスロー〕だ。
回転しながらピンク武者に向かい、そしてその体を貫くリゥムダガー。その数秒後ピンク武者の体がポリゴン片へと爆散し、床には突き刺さったリィムダガーだけが残る。
(これで残るは……)
「「「「「キャアーーーー!」」」」」
後は白武者だけと思った俺の耳に飛び込んでくる悲鳴。上空を見上げるとどんな攻撃をしたのかこちらの全員を吹き飛ばし、降りてくる白武者。それを追うように降りてくるピンク武者の幽体。
このとき俺は悟った。
俺は最高にとんでもない間違いをしていたのだと。
床に降り立つ白武者。そして一体化するピンク武者の幽体。
その瞬間、白武者が持つ二刀のうち一本の刀身がピンク色のオーラに包まれる。
いつの間にか俺の周りにはパーティーメンバー全員がそろうが、全員真剣そのもの。
そして、すべての武者の力を吸収した最強の白武者との最終対決が始まる。
実はこれまで登場した毒物系は今回登場した〝ヴェノブリザスタル”のために用意してました。いやー長かった。
では、また水曜日にお会いしましょう。




