八十七話:機械の翼
最近タイトルを考えるのが一番大変です。自動的にタイトル考えるツールどこかにないかな~。
当然現れたウィンドウに驚いていると周りからも声が上がる。どうやら俺だけでなく全員の前に出現したようだ。
ウィンドウに目を通すと『味方もしくは敵の戦闘可能人数が半分以下になったため、このまま全体バトルに突入します』という文言とカウントダウンタイマーが表示されている。時間的にあと1分弱だ。この間に準備を整えってことだろう。
「ティニアさん、全員の回復お願いできますか?」
「わかりました」
ティニアさんが〝生命の甘露″を取り出し全員に配る。HPに関しては俺が作ったポーションで問題ない。
そして全員が全回復し、それぞれが装備を確認し終わったところでちょうど時間となり、俺たち全員が舞台に転移される。
対面する俺たちと要塞華撃団。
こちらは6人全員に対し、向こうは無傷とはいえ白・ピンク・黄色の三体。
「ここはまず黄色か?」
「そうだね。回復持ちさえ倒しちゃえば勝利したようなものだし」
いつものように戦闘前の準備タイム。本来ならここでどう戦うか考えるのだろうけどこの状況なら回復持ちを倒す以外にありえない。
白とピンクは戦ったことがないけど近接以外の攻撃手段はないはずだから遠距離からボコボコにすればいい。……こっちのほうが悪役になってるな。
さてそろそろ戦闘開始だ。〝清緑の盾″を構え準備を整えると白武者が急に両腰の刀を抜き手前で交差した。向こうも同じように戦闘の構えかと思ったらその体が急に輝きだす。
「なんか嫌な予感がする」
エルジュの言葉が誠になったかのように輝きは増していく。すると輝きは上空へと伸びる。さらに上空から黒武者・緑武者・紫武者・赤武者と今まで倒してきた武者鎧たちが降臨してくる。
「え!? 復活するんですか!?」
「でも、なんか薄くないですか?」
スワンの指摘通りそれぞれは幽体と思えるくらい薄い。そして四体の武者鎧はそのまま降下し、降下地点にいた白と一体化する。
すると白武者の輝きが増し、あまりにも眩しいため目を閉じる。
輝きが消えてきた頃合いで目を開けるとそこには先ほどよりも太った、訂正各種装甲が強化されている白武者がいる。当然力も上がっているだろう。
しかしそれ以上に問題なのは背中。全体は見えないが肩から鉄の板が生えている。まあ、元ネタ通りならただの板じゃないことは間違いない。
他の武者鎧は見た感じパワーアップはしていない。でも油断大敵だな。
そんな感じで冷静に戦況分析をしているところに鳴り響く戦闘開始の鐘の音。同時に白武者は戦闘の構えになる。それによって背中に隠れていた二つのブースターが姿を現す。ああ、やっぱりそっちになってたか。
「作戦変更! 私とスワン、リボンの三人で白の相手! 兄さんはピンクを抑え込んで! ティニアとアリサは黄色を速やかに殲滅! その後兄さんと合流して!」
「「「「え?」」」」
俺以外の全員が急変したエルジュに驚く。
空は自分の想像以上にヤバい展開になると鬼司令官と呼ばれるほどの性格へと人格が変わる。なお、戦闘そのものはきちんと覚えており、戦闘後は「さっきまでの勢いはどこ行った!?」とツッコまれるほどしおらしくなる。
どういうことかというと空の全力ですら対応できるかわからないほどヤバい状況になったということだ。
「何してる! さっさと動け!」
「「「「は、はい!」」」」
さて、これ以上はいろいろ危ないので俺も盾を構えなおしてピンクに向かう。
その間に向こうも接近してくる。なお、白武者はなぜかブースターではなく普通に走ってきてる。使用回数とか使用時間とかの制限でもあるのか?
「イクヨ!」
もはや口調すら怪しくなったエルジュが翼をはばたかせて突撃する。同時に白武者もブースターによって空へと浮上する。遅れてスワンとリボンも飛んで行ったので向こうは三人に任せよう。
俺は同じく走ってきたピンク武者を迎撃する。盾で刀を受け止めるが想像以上に重いので次からは受け流すようにする。
上様での経験が活きているのか思った以上に苦戦していない。上様のほうが力もスピードも上みたいだしこれならなんとか抑えられそうだ。
と思っていたら急にピンク武者が走り出す。その先には逃げ回る黄色武者を炎と雷で蹂躙しているティニアさんとアリサさんがいるので〔ハウル〕を使って意識をこっちに向ける。
……元ネタ的に考えると必死に逃げ回っている少女を助けようとする剣士を無理やりこっちと戦わせているということになる。これ間違いなくこっちのほうが悪役だな。
そんなどうでもいいことを考えながら盾と〔ハウル〕で予定通りピンク武者の足止めに成功し、視界の端で黄色武者が紅の拳と稲妻の拳のダブルナックルでポリゴン片と姿を変える。二人とも部類では魔法使いじゃなかったかな?
黄色を倒した二人はそのままこっちに向かって魔法を放つ。〔ハウル〕を使用し盾で受け流しているため俺とピンク武者は結構接近しているが、二人とも優秀なんて言葉がかすむくらいの腕前なので俺に魔法が当たるということはない。
このままいけばピンクも楽に倒せると思ったら背中に衝撃を受け舞台に顔をぶつけ、さらに体が全く動かなくなる。
(一体何が!? ってマヒしている!?)
自分のHPバーの隣にマヒ状態を表すアイコンが出ていることに気づく。先ほどの攻撃が原因だと思うが舞台の床しか見えていない今では何が起こっているのかさっぱりわからない。
一つ分かっていることといえば先ほどの衝撃が背中に当たったことから攻撃してきたのは白武者ということ。つまり、全力のエルジュ+スワンとリボンの援護があっても白武者を抑えておくことはできないということだ。
マヒしているため向こうからは狙い放題のはずが最初の衝撃以降攻撃が全く来ない。そのままマヒが治り急いで上半身を起こして戦況を確認する。
まず先ほどまで戦っていたピンク武者はティニアさんとアリサさんの二人と戦闘中。しかもピンク武者は白い輝きを纏った刀で魔法をスパスパ斬っている。HPがすでに半分以下なので、おそらくHPに応じて変化する設定だったのだろう。
そして白武者を確認するため上を見上げるとそこでは高度な空中戦が行われている。スワンは矢を放ち、リボンは緑武者でも見せていたアクトで攻撃しているが白武者が早く当たっていないようだ。
それ以上に問題なのはエルジュだ。攻撃に加わっておらず後方に避難しながら何かを飲んでいる。ってあれは俺があげたポーションだ。
(エルジュが回復しなければならないほどダメージを負った!? それほどまで強いのか!)
それを知った俺は急いで立ち上がり、近くに転がっていた盾を拾って構えなおし、こちらに背中を向けていたピンク武者に〔スパイクタックル〕を当てる。それによってピンク武者の意識を二人から俺に向けさせる。
「二人とも上空の援護を! あの白武者かなり強い!」
「わかりました! 行きますよアリサ!」
「で、でも!」
「こっちは大丈夫です! 早く!」
再び二人に意識を向けようとするピンク武者を〔ハウル〕でこっちに戻しながら二人に願う。ようやくアリサさんも頷いてくれ背中の翅をはばたかせる。
上空に魔法を放って援護してくれると思っていただけにその行動は思いもよらなかった。そういえば飛べるんでしたね。
こうなればこちらの五人VS白武者一体なので何とかなるだろう。
一方、こっちも一人でピンク武者を相手にしなければならず、さらにさっきよりも攻撃が重いので受け流すのも大変だ。
(ここからが本当の勝負!)
一旦ピンク武者の刀をはじいて距離を取り、〝ガーディロッド″を装備する。
右手に〝清緑の盾″左手に〝ガーディロッド″という守備全開の装備で俺は迫りくるピンク武者との第二回戦を始める。
次回は16日=水曜日です。そろそろ90万PVに到達しそう。




