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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第八十六話:弓に込めた想い

今回はエルジュ。

*エルジュ視点*


戦闘開始の鐘と共に翼を広げ紫武者に突撃する。私の役目はこっちだから赤武者には一切注意を向けない。というより、向けられる余裕もないだろうけど。


(実際、まだこれ使いこなせてないんだよね~。大丈夫かな?)


光りの壁まで追い詰めたことで十分距離は取ったと判断し、一旦後退する。弓の先に刃があるので近すぎるとダメージを与えられないからだ。

しかしそれは向こうの薙刀も同じなのでお互いに超近接戦、インファイトではなく少しばかり距離を取った状態での戦いとなる。


自分の新たな相棒を構えながら少し苦笑する。本来なら矢を放つためだけの弓に刃を取り付けるなんて行為どう考えてみても私しかいないだろう。




私が弓にこだわり始めたのはかなり昔、私がまだ小学生、しかも低学年だったころだ。

めったに何か一つのことに夢中になることがない兄さんが一生懸命に話してくれたことがあった。それは錬金術と呼ばれるゲームのキャラクター。当時は今ほど興味がなかったからあまり真剣に聞いてなかったけどいつも楽しそうに話す兄さんが輝いて見えた。


だから、自分でも何か試してみようと思ったのが、私がゲーマーになったきっかけだった。まあ、兄さんは覚えていないだろうけど。




たくさんある中で最初に興味を持ったのは定番の魔法使いだった。いろんなゲームをプレイしては魔法で敵を倒していくのが楽しかった。


そんなある日、最新のアップデートで錬金術が追加されること知り、挑戦してみようと思った。しかし、周りの反応は冷ややかだった。


「あんな後衛にもならない職業必要ない」

「作れるアイテムは確かに貴重だけど、必ずしも必要じゃないから意味ない」

「せっかく鍛えたスキルだろ? ごみスキルごときに費やす時間がもったいないよ」


ほとんどの人が『錬金術=使えない』と思っていた。もちろんそう思っていない人もいただろうけど圧倒的に少数だった。


そして、兄さんもその事実を知っていたことを知った。

それを知ったとき、私は兄さんにどう接すればいいのかわからなかった。

でも、兄さんは変わらなかった。ずっと錬金術のあこがれを捨てなかった。


だから、とうとう訊いてみた。「なんでそこまで想えるの?」と。


兄さんは少し考えて答えてくれた。


「俺は特に上手にできることなんてないだろ? だからいつもみんなの後ろにいた。その姿が錬金術に似てるって思ったんだ。だから、錬金術は成長した自分のように思えるんだ」


正直全く理解できなかった。だからこそ、兄さんの想いを少しでも知りたいと思い、次のゲームからはあえて苦手だった弓を使うようにした。

当然初めは全く当たらず、なんども挫折しそうになった。でも、大好きな兄さんの想いを知りたくて、ずっと練習した。





(それが今や、こんなことまでできるようになってるなんて、あの頃の私が見たらどう思うのかな)


振り下ろされる薙刀を弓の上部に取り付けられた刃で受け流し、回転させて下部の刃で紫武者を攻撃する。


この構造はダブルセイバーと呼ばれる二つの片手剣を一つにまとめたような武器を元にしている。しかもダブルセイバーと違って弓なのでとても軽い。だからこそ、力が弱い私でも扱うことができる。

その分攻撃力も本来のダブルセイバーと比べればはるかに攻撃力不足だと思うのが欠点だが、そこは鳥人族の持ち味であるスピードで補えばいい。


そうして相手の攻撃を受け流しては返す刃で攻撃するカウンタースタイルでじわじわとダメージを蓄積させていく。元々ティニアさんの紅の拳で与えていたダメージがあるからすでにHPバーは残り1/3だ。


すると紫武者が大きくジャンプして後退し、構える。あれはティニアさんの時に見せた必殺技の構え! しかもなんか知らないけどチャージが終わってる!?


(さすがにこれは無理!)


すぐさま刃が出たままの状態で矢を構える。放つのは〔プラズマアロー〕の劣化版と言える〔ライトニングアロー〕だ。劣化版だけあって威力は負けるがその分早く準備が終わる。今は拮抗するよりも相手の攻撃を防ぐほうが大事!


「〔ライトニングアロー〕!」


賭けだったがどうやら相手もまだチャージが全力じゃなかったおかげでこちらが先にアクトを放つことができた。

放たれた矢は稲妻を纏いながら紫武者に向かい、見事命中!


これで時間を稼げると思ったらチャージの光を放ちながら紫武者が突撃してきた。


(ゼロ距離攻撃!?)


攻撃を確実に相手に命中させるために相手に肉薄してから攻撃を放つゼロ距離戦法。魔法使いにとって死に際の戦法とか戦士にとって決死の捨て身戦法とかいろいろ言われている。

大きいリスクはあるが、当たれば最高の結果が約束される。


まさかその戦法をAIが選択してくるとは思ってもいなかったので反応が遅れる。そのせいでもはや逃げられない距離にまで迫られた。


(上に逃げれば助かる。でも!)


ここで逃げるわけにはいかない。兄さんならそうするはず!


そう、私の理想は実の兄。どれだけ意味がないと言われようと、どれだけ使えないと言われても錬金術への憧れを捨てず、そして今その想いを実現しようと努力し続ける兄の前で逃げることだけはしたくない!


私は再び矢を構える。それは【洋弓】用の魔矢ではなく通常の矢。しかし、この矢は今回の私の切り札!


「受けてみなさい! 兄さんが作ったその力を!」


放たれる矢が紫武者の薙刀の先端に当たる。

その瞬間、矢は爆発し、雨が降り、氷が舞い、雷が落ちる。


そう、これは兄さんが作った〝フレイムボム″〝レインティア″〝スノープリズム″〝ライジンディスク″の全てを【合成】によって一つの矢にしたモノ。集めた素材を兄さんに直談判して調合してもらい、アイテムの情報を隠すため兄さんをよく知るシュリさんに協力してもらい、何度も【合成】繰り返してようやく完成した矢。


レシピが完成した時はすでに素材が品薄だったので手持ちにあるのはたった三本、今一本使ったので残り二本になったけど、兄さんの前で見せられるのならこれ以上の使う場所として適している場所はない。


全ての攻撃を受けたことで勢いを無くした紫武者だが、それでも必殺技を放とうとする。しかし、それを待ってるほど私は甘くない。


「〔五月雨・二式〕!」


〔五月雨〕は【弓】で覚えられる最初の広範囲技。一本の矢を天に放つと、それを中心として広範囲に矢の雨を降らせるアクト。

〔五月雨・二式〕はその上位版、正しくは変化版で放った矢が当たった敵に集中して矢の雨を降らせるアクトだ。


それにより完全に勢いを無くし、隙だらけの紫武者に最後の一撃となる〔プラズマアロー〕を放つ。避けることも受け止めることもできないまま紫武者は〔プラズマアロー〕を受け、そのままポリゴン片と姿を変えた。


一息つきアリサさんのほうを見れば、アリサさんも何かを叫びながら赤武者に稲妻の拳を突き出していた。そしてその勢いのまま赤武者の右腕を吹き飛ばし、さらに発生したプラズマによって赤武者を粉々にしていた。


「エー」


正直自分なりにだれも想像できない戦いをしたと思ったら向こうはそれを上回っていた。ほんと、なんで兄さんの知り合いのNPCって化け物ばかりなんだろうか。


そして私たちは舞台から転移され、みんなの元へと戻った。



*エルジュ視点終わり*


「さすがアリサですね」

「ふふふ。すごいでしょ!」

「でも、まだ調整不足ですよね?」

「へ?」

「また、おしおきですね」

「い、いやー!」


二階で暴走した時の再現のようにお仕置きされるアリサさん。まあ失敗すればエルジュも危なかったので止めるようなことはしない。


「やっぱすごいねエルジュちゃん」

「本当ですね。その弓触ってみてもいいですか?」

「いいけど、先に刃しまうね。これけっこう大変なんだ」


後輩三人はぼのぼのみたいなのでこっちもスルー。しかし【錬金術】のLv上げのために、そして人前では使わないことを条件にエルジュが持ってきた素材を調合したが、あんなふうになるとはな。

しかもルーチェで買えるものは要求してこなかったということはわざわざルーチェで買って準備したということだ。これは今度なにか好きなものなんでも作ってやろう。


あと一回全体バトルの前に戦闘があるなと思っていた俺の前に突如ウィンドウが現れた。

以前ダブルセイバーの話をしたので登場させてみましたが、しっくりこなかったのでいつも通りの弓でのバトルとなりました。どこかに良い教本もしくは映像ないかな?


それと、先週から始めるはずだったストックの放出を今回から始めます。

9月中は毎週水曜日と土曜日に投稿しますので、次回の投稿は12日(土)になります。


アルケ「放出の割には週二回なのか?」

作者「見直しとか訂正とかしてたら思った以上のストックが作れなかったので」

アルケ「ならしょうがないか」



???「ワタシノデバンハ?」

作者「9月末登場予定だから待ってね」

???「私は?」

作者「君はもうちょい先」

???「え~。待ちくたびれたわ。このスフィ……」

作者「名前言っちゃだめ~!」

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