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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第八十話:加護

本日7月29日はなんと、作者の誕生日でもあります!

ハッピーバースデー、私!

ようやく見つけた祭壇は四方に小さい塔が立ち、その間に短い石の階段とこれまた石でできた台座が置かれている、全て灰色の石で造られた、まさに祭壇といった感じだ。


しかしここにきて最大の問題に全員が気づいた。


「それで、水系のアイテム持ってる人、手挙げて?」


俺の問いかけに手を挙げる人は誰もいない。ある意味当然だ。このパーティーには水属性持ちの武器を持ってる人間なんていないし、魔法使いもいない。

というより、ミオさんの杖みたいな特殊な杖を持ってるプレイヤーのほうがはるかに少ない。


となるとこの祭壇が宝の持ち腐れになってしまうわけだが、一応俺には水系アイテムがあるにはある。〝レインティア″だ。

〝スノープリズム″も水系だが、今回は持ち合わせていない。あれは範囲攻撃アイテムなので味方にもダメージを与えてしまう。そのため、パーティーで行動する今回のクエストには不向きと思って持ってこなかったのだ。


だから加護を得ることはできるのだが、〝レインティア″は使い切りのアイテムだ。それに加護を与えれば切り札にはなるが、それならすでに〝グレンダイム″がある。火属性攻撃が効かない敵には有効だが、それが出てくる前にはおそらく〝グレンダイム″以外にも切り札はできている……たぶん。






祭壇に到着してからすでに5分くらいは経過している。その間にどうするか話し合いをしたが結局いい案は出てこず、しょうがなく〝レインティア″を使うしかないと俺は提案する。


全員同意してくれたので祭壇に向かう。石段を登り、中央の台座の前に立つ。そこには窪みがあり、ここにアイテムを置くのだろう。


一番品質がいい〝レインティア″を取り出し、窪みに置く。しかし反応がなかった。


「……」 「「「「「……」」」」」


思わず俺は振り返ると全員が顔をそらす。うん、気まずい雰囲気なのはわかるが、だれか何か言ってほしい。




さらにしばらく経っても何も起こらないので、試しに〝レインティア″を置いたまま祭壇から降りる。


すると四方の塔が青く光りだし、その光が塔の頂上に集まる。集まった光は一旦球状で留まるとアーチのように台座に向かう。

青い光が台座全体に集まり、台座全体が青く染まる。


その光景を全員見つめ、光が消えた後で台座に向かってみると〝レインティア″が仄かな青い光をまとっている。これが加護が与えれられた証なのだろうかと状態を確認してみる。




〝レインティア″・攻撃アイテム・R

品質の高いレインティア。通常よりも雨の範囲と攻撃力が増している。

*水の加護:水系アイテムの基本ステータスを30%アップする。




「30%ってどうなんだ?」

「普通に高い数値だよ。私が知ってる能力上昇系の最大効果って15%だよ」

「つまり、その倍なのか」


そう聞くとすごいことなのはわかるが、一度きりしか使えないアイテムには勿体ない効果でもあるな。

他にアイテムはないのでその場を去ろうとする。








「……なあ、足が動かないんだけど?」


他のメンバーはすでに10mくらいは離れているのに、俺はいまだに祭壇から5歩圏内にいる。実際はそれ以上歩こうとすると枷にかけられたように全く動かなくなる。


「【呪い】でしょうか?」

「えっと、アリサ。解呪の魔法できる?」

「ごめんティニア。少し習ってきたけどあそこまでは無理」


この状況に怯えているのか誰もが俺から少しずつ遠ざかる。ちなみに、俺も逆の状況だったら間違いなく遠ざかっているだろう。


「心当たりがあるとすればさっきの〝レインティア″だけど……」

「加護ですからね。さすがにそれはないと思いますよ」


さっきの〝レインティア″を取り出すも何の反応もしない。つまり、これは関係ないということだろうか?


すると、リボンが何かに気づいたように俺を指してくる。しかし俺から一番遠ざかっているので何を指しているのかわからない。

なお後で空から聞いた話になるが、リボンもとい世良ちゃんは大のホラー嫌いらしい。


代わりにエルジュが大声で俺に声をかける。


「兄さ~ん! 指輪が光ってる~!」

「指輪?」


よく見れば右手の薬指、パルセードのドロップ品である〝パルティリング″、その宝石部分が確かに点滅している。


(つまり、これも水系アイテムということか?)


踵を返し、再び祭壇を登って台座に〝パルティリング″を置いてから祭壇を降りる。

四方の塔が再び光り、台座に向かって放出される。その光量はさきほどよりも多い。かろうじて目が開けられるくらいだ。


ようやく光が収まり、台座に向かうとそこには先ほどと対して変わりない〝パルティリング″があった。


(〝レインティア″みたいに光ってないな。加護は得られたのか、これ?)


指輪を持ち、変わってないところがないかあちこち確かめてみる。その間に他のメンバーも集まってきた。


「どう?」

「変わってるところがない」

「失敗ですか?」


エルジュたちが集まってくるまでに【看破】を発動させたが増えた文章は無い。もしかして本当に失敗したのか?


「でも綺麗ですよね。銀のリングに青い宝石ってシンプルですけどやっぱり好きです。宝石に刻まれた模様も素敵ですし」


スワンのつぶやきに驚いて宝石部分を見てみれば、宝石の表面に模様というより紋章のようなモノが刻まれている。こんな紋章なかったはずだ。となると、これが加護の紋章ということなのだろうか。


そのことを全員に告げてみるも全員納得のいく答えは出てこず、試しにもう一回台座に置いてみたがまったく反応無し。仕方ないので祭壇を後にし、出てきたジャンプフィッシュを倒して次の階に進むことにした。


なお「なんかスッキリしないから」と言う理由で遭遇したジャンプフィッシュはアリサさんのフライパンアタックで昇天してもらいました。

祭壇に着くまでは壁にぶつけても死ななかったはずのジャンプフィッシュがフライパンの一撃で昇天って、あれ持ってる人の感情によって攻撃力変化させるような性能でもあるのか?



そんなわけで15匹目のジャンプフィッシュをパコーンした時点で全滅したらしく、目の前に『次の階層へ転移されます』というメッセージとカウントダウンが始まった。ティニアさんとアリサさんには神のお告げがあったらしく慌てることなく全員六階に転移された。






そして訪れた六階はジャンプフィッシュを除くこれまで登場した要塞遺跡のモンスターが大集合で、時には狭い空間にモンスターがうじゃうじゃいるモンスターハウスにも遭遇し、次の階に行けることを示す矢印が登場するころには疲労困憊とまではいかないが、結構疲れていた。


「とりあえず、一度休憩しましょうか」

「そうね、みんな疲れてるでしょうし」

「矢の補充もしておきたいし。あと少しで無くなるところだったよ」


実際は疲れている組と余裕組に分けられている。疲れている組は俺、スワンとリボンの三人。一方余裕組はティニアさんとアリサさん、そしてエルジュだ。

戦闘に慣れているエルジュはともかくあの二人、特にティニアさんの体力と魔力がおかしい。花魁ってそんなに体力がいるのか? そして普通の妖精族なのにハイフェアリーのアリサさんと一緒の時間魔法使ってるのに魔力切れしないのはどうしてなんだ?


しかし、その疑問はすぐに解決されることになった。


「アルケさん、これどうぞ」


疲れていたため座り込んでいた俺にティニアさんが差し出してくれたグラス。そこには見覚えのある蒼い液体が注がれていた。


「そっか。そういえばあったな、そんな便利なものが」


その液体とは〝生命の甘露″。俺が最初に『水仙』を訪れ、苦痛を味わった大量の鑑定をした時にティニアさんが休憩として持ってきてくれたあれだ。効果は【MP回復:大】。つまり、魔力切れしないほど魔力があるのではなく、回復させていただけだった。


「でも、どこに持ってたんですか?」

「実はこういうところに」


着物の袖に手を入れるとそこから竹製の筒が出てきた。おそらく水筒のようなものだろう。


(この場合、どうやって収納しているのかは聞かないほうがいいような気がする)


ありがたく〝生命の甘露″をいただく。【盾】のアクトを使いまくったのでMPを回復できるのはありがたいし、冷たいのどごしが精神的に疲れていた体に浸透する。

視線を動かしてみれば、ティニアさんはアリサさんにも〝生命の甘露″を渡し、エルジュはスワンとリボンにも矢の補充を指示していた。


そんな風に休憩をしてから、俺たちはいよいよ最後の戦闘階でもある七階に向けて歩き出した。

次回も水曜日投稿がんばります。

しかし、いよいよ連載一周年まであと少しですね。なんか緊張してきてます。


記念話間に合うかな?

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