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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第七十六話:暴走

この話で第一章で書いた話数を超えてしまいました。ここまで読んでいただきありがとうございます!


アルケ「それで? あとどれくらいで終わるんだ二章?」

作者「どれくらいだろう? まだ書き終わってないし」

アルケ「……見切り発車バンザイ!」

作者「万歳!」


アリア「二人とも……いい加減にしなさい!」

作者・アルケ「ギャァー!」

銃型の攻撃に耐え続けることもう十分は経っただろうか。いきなり視界に大量の雷光が見え驚いていると攻撃が止んでいることに気づく。

急いで確認してみると銃型が回復持ちと合流していた。


「やば!」


〝清緑の盾″をいったん投げ捨て慌ててリィムダガーを構えるが、回復持ちは銃型と一定間の距離を保ったまま動こうとしない。触れなければ回復させられないはずなのでその行動に戸惑っていると二体同時に後方へと下がりだし、そのまま走って行った。


「逃げた?」


エルジュの話では武者鎧のモンスターは倒すまで付きまとってくるはず。それが逃げたということは、つまり……


「敵が逃げ出すほどの何かが起こっ!?」


その様子を見ている俺の目の前を通過する雷光。突然のことに驚くが、右から来たので右を見てみれば、そこには横たえながら雷光を放出し続けるアリサさんとそれを巨大な炎の扇でスワンとリボンを守っているティニアさんがいた。


「……はぁ!?」


人はあまりにも驚いたとき、叫び声を上げるよりもその光景を理解できず呆れるらしいがまさに今の俺がその状況だった。


俺が上げた大声でこちらの存在に気づいたのか無差別に放出していた雷光のいくつかがこちらに向かってきた。

急いで投げ捨てた〝清緑の盾″を拾い直し、前方に構える。


「〔レジスト〕!」


〝清緑の盾″に光の膜が発生し、雷光を防ぐ。

〔レジスト〕は【盾】のアクトで魔法抵抗力を高めることができる。なお、防御力を高めるアクトは〔ブロック〕だ。


なんとか雷光を防ぐことには成功したがそこから断続的に雷光が飛んでくるので動くことができなくなる。

しかし雷光がこっちにも向かってきたせいで楽になったのか、ティニアさんの声が聞こえてきた。


「大丈夫ですか!?」

「大丈夫です! それより何が起こっているんですか!?」

「アリサの魔力が暴走しているんです!」

「何で!?」

「思った以上に回復持ちが速くて攻撃が当たらなかったアリサが無茶したからです!」


なるほど、状況は理解できた。しかしアリサさんらしくないな。

だが、今はそんなことを考えている場合じゃない。


「このままだとどうなりますか!?」

「アリサの魔力が尽きるのを待つのが一番なのですがっ!」


いったんティニアさんの声が止まる。よく見れば先ほどよりも炎の扇が若干小さくなっている気がする。


「その前に私の魔力が持ちません!」


必死なティニアさんの声に俺も自分のMPを確認する。

〔レジスト〕は魔法攻撃を防ぐごとにMPを消耗するアクトだ。盾を覆っている光の幕を発生させるのにMPを使うからだ。

MPの消耗量自体は少ないので俺のほうはまだ余裕があるが、相手は魔力が多い妖精族の中でも魔力が多いハイフェアリー。このままでは俺のほうもMPが尽きてしまう可能性がある。


(さて、どうする?)


一番確実な解決策はアリサさんが制御し直してくれることなのだが、雷光の音に負けないよう大声を出しているのにもかかわらず横に倒れた姿勢から微動だにしないことから意識を失っていると思われる。


となれば、なんとかしてこの雷光を止めるしかない。


「何か方法はありませんか!?」

「せめて近づければ何とかなるんですが!」


えっ、この雷光の中を進むんですか? 特にアリサさんの周りなんてハリネズミの背中みたいな感じで雷光が飛んでいるんですが。


「どうやって!?」

「こちらに来れますか!? そうしたら私が何とかします!」


つまり、俺がスワンとリボンを守ってティニアさんが攻撃に移ると。てか、なんであの二人は動かないんだ?


「スワンとリボンの状態は!?」

「二人とも【麻痺】してます!」


どうやら雷光があふれだした頃に二人とも攻撃されたらしい。それに気づいたティニアさんが急いで二人を守ろうとして今の状態となっている。


状況を理解した俺は少しずつティニアさんのほうに移動する。〔レジスト〕を使っているとはいえ雷光の中を進むのは結構勇気がいる。

さらに進むごとに雷光の軌道によっては後ろから攻撃される可能性も増えているのでかなり慎重に進まなければならない。〔レジスト〕は盾の周りにしか展開できないから前方に盾を構えている以上、後ろを守ることができないからだ。


結局ティニアさんの元にたどり着いたのはそれから約一時間後後のことだった。





「さて、どんな感じですか?」

「もう少し時間をください」


ティニアさんから防御役を交替し、ティニアさんの魔力が回復するのを待っている。その間に二人の麻痺も解け、いまだに戦闘を続けているエルジュの支援に向かっている。


ティニアさんが立てた作戦だが、まずアリサさんに触れられるほど接近する。そこからティニアさんの魔力をアリサさんに流し込む。これだけだ。

アリサさんの魔力量を増やしているように思われるが、妖精族はそれぞれ魔力の質が異なるらしく、自分とは違う魔力が入ってくるとすごくくすぐったくなるらしい。

その感覚は脇腹をくすぐられるのと同じ感覚とのこと。妖精族も人族同様脇腹が弱いらしい。


そうすることで強制的にアリサさんの意識を取り戻そうという作戦だ。


「しかし、そう上手くいきますか?」

「この魔力を流す方法は昔から伝わる方法ですから」


なんでも冒険中に気を失った味方の意識を強制的に戻す方法として考案され、今でも伝わっている。いったい誰だ考案したのは?



「そろそろいけそうです」


俺が合流してからしばらくしてティニアさんから声がかかる。

それを合図に少しずつアリサさんに近づいていく。そのアリサさんはいまだに雷光を発生し続ける。聞いてはいたが、実際に見るとハイフェアリーの魔力量の多さに驚かされるな。仮に人族でこのMP量を得ようとするならどれだけLvを上げればいいのやら。


「大丈夫ですか?」

「はい、問題ありません」


〔レジスト〕で消耗するMPよりも少し多いMPを消耗することで〔レジスト〕の範囲を大きくして進んでいく。こうしないとティニアさんまで守ることができないからだ。


(その結果として【盾】のLvが上がったのはうれしい誤算だけど)


実はアリサさんのほうへ進みだしてすぐに『【盾】の新しいアクトを覚えました』とウィンドウが表示されたからだ。正直邪魔だったが。当然どういうアクトか確認している余裕などない。


そうして進み、増えていく雷光に怯えながら少しずつ足を進めていく。アリサさんに近づくにつれ雷光はその威力も高め、消耗するMPも多くなる。


(ギリギリだな)


アリサさんまではあと少し。このまま行けばなんとかMPは間に合う。ティニアさんによれば触れたら魔力を流すまでは数秒あれば問題ないとのことなので大丈夫だろう。



その後は特に何もなく、ついにアリサさんのところまでたどり着いた。

しかし、そこで問題が発生した。


「……これ、どうやって触るんですか?」

「……どうしましょうか?」


横たわっているアリサさんは体自体が放電しており、どこにも触れる場所がない。触った途端感電することは間違いない。


「ちなみにティニアさん。【麻痺耐性】とかあったりします?」

「そんな便利な力ありませんよ」


ティニアさんはないと言ったがプレイヤー側には実は存在する。実際は武器にそういうスキルが付属されるのだとシュリちゃんから聞いたことがある。それでも多少ダメージを軽減できる程度なのが現状らしいが。


ともあれ、このままではアリサさんに触れることなく時間だけが過ぎ、俺のMPが先に尽きてしまう。そうなればどのみち感電してしまう。


そのことを告げるとティニアさんが意を決したように立ち上がる。そのせいで防御する範囲が広がり慌ててMPを盾に注ぐ。


「いきなり立たないで下さいよ」

「ご、ごめんなさい。でも、これで何とかします」


よく見るとティニアさんの右手が炎に包まれている。ティニアさんが接近戦用に編み出した魔法だったよな?


「これで雷光を遮断させます」

「そんなことできるんですか?」

「これもアリサの雷光と同じく魔力の塊ですから」


そう言うとティニアさんはアリサさんの体めがけて手を伸ばした。


雷光と炎がぶつかり、表現できない音が響く中、とうとうティニアさんがアリサさんの体に触れることができたらしく「いきます!」と声が響く。


すると「ぬにゃー!?」なんて変な声がアリサさんの口から発せられた。


「にゃ、にゃにす……」

「いいから制御を取り戻しなさい!」

「にゃい!」


いまだに変な声を上げながらも意識を取り戻したアリサさんは雷光を消し、俺はおもわず地面に倒れこんだ。

次回も水曜日投稿に向けてがんばります。


???「ワタシノデバン、マダ?」

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