第七十五話:レアモンスター
作者「私は自重を捨てる!」
アルケ「上様の時点ですでに捨ててるんじゃないのか? てか単にネタがないだけだろ?」
作者「それは言わないで……」
*6月25日 改稿というより補足*
空白を入れて本文最後の5行をコピーし忘れていました。誠に申し訳ありませんでした!
「それから三階から登場する厄介な敵がいるんだ」
「厄介な敵ですか?」
「そう。ただレアモンスターだから会うことはないと思うんだけど念のためにね」
全員がさらに真剣に聞く体制になったところでエルジュが続きを話す。
「そのモンスターとは全身が鎧、兄さんや二人にわかりやすく言うと戦国時代の武者鎧型モンスターがいるの」
「武者鎧のモンスター……なんか強そうだね」
「リボンの想像通り、この要塞遺跡最強のモンスターだよ。しかも複数のタイプがあるの」
「タイプって?」
「一番目撃例が多いのは両手に剣を持った完全攻撃型。よく連撃してくるから迂闊に近づいちゃダメ」
「他のは?」
「次に目撃例が多いのは長剣一本だけの敵で、しかも斬撃を飛ばしてくるの」
斬撃を飛ばすって、そんなこともできるのか。プレイヤーでも使える人いるのかな?
「そうなんですか。威力はどれくらいかわかりますか?」
「……ティニアさん、全く驚かないんですね」
「アルケさん知らないんですか? ミシェルもできますよ?」
なんと身近にいました。今度見せてもらおう。
「でもそれ以上に厄介なのがいて、実は回復持ちがいるの」
「それは面倒ですね」
「一応他と比べると防御力は低いみたいだけどね。でも回復持ちは必ずある敵とセットになって登場するの」
面倒なのにさらに壁役もいるのか。ぜひとも会いたくないな。
「その敵が銃使いなの」
「銃!?」
へぇ。とうとう銃まで出てきたのか。シオリンが目をキラキラさせている様子が簡単に想像できるな。
「「じゅう?」」と困惑しているティニアさんとアリサさんにスワンとリボンが説明している。
「二人とも説明サンクス。それでこの銃使いも同じように武者鎧で、射程は弓よりあるけど攻撃力は半分くらい。でも近づいた時に攻撃されると結構ダメージもらうから注意してね」
「もしかして散弾か?」
「その可能性もあったんだけど、だいたい同じ位置に立っていた二人の片方しかダメージを受けなかったらしいから銃の性能かスキルじゃないかって言われてる」
すでに検証済みか。しかし上様といい、銃使いといい、やはり次回のアップデートに関係していると考えられるなこのクエスト。
「その回復持ちと銃のセットが出てきたときは素直に逃げるから」
「それだと次の階へと行けないのでは?」
「大丈夫。このレアモンスターは次の階への条件には含まれていないみたいだから。それにこのパーティーだと倒すのに時間もアイテムも必要になるから無視したほうがいい」
「なるほど、わかったわ」
全員が納得し、俺は今まで聞いたエルジュの話を頭の中でまとめる。
「つまり、武者鎧のモンスターが現れたらまずどの武器を持っているかを確認する。そして二体いたら素直に逃げる。一体ならば……一応戦うか?」
「ううん、戦うのは逃げられない状況になった時だけ」
残りのメンバーにも確認を取り、基本方針は決まった。まあ、レアモンスターらしいからどうせ遭遇しないだろう。
俺はそんなに気負うことなく三階に上る階段へと足を乗せた。
そして見事にフラグを回収することになった。
「まさか階段上ったすぐ後に遭遇するなんてな」
「しかも二体いますね」
ティニアさんの言う通り通路の先には武者鎧が二体。ここからだと何も持っていないように思えるが、それは右半身しか見えないだけだ。銃使いは左手に銃を持ってるらしいからな。
「とりあえず下がりましょうか」
「そうだね。まだ気づかれていないみたいだし」
スワンとリボンが言う通り俺たちはそっと下がろうとする。しかし、後ろからガシャンガシャンと足音が聞こえてくる。
俺たちは全員視線を交わし、全員が同じ結論にたどり着く。
そう、俺たちはレアモンスターに挟み撃ちになってしまったのだと。
後ろから聞こえてくる足音だがまだこちらに来るには時間があると思い、緊急作戦会議を行う。中心となるのは当然エルジュだ。
「とりあえず、回復持ちを倒すのが最優先。兄さんが盾で突撃して銃使いの攻撃を防ぐ。他は全員で回復持ちに総攻撃。特にアリサさんは例の対策を使ってください。出し惜しみは無しです。後ろが追いつく前に一気に攻めます」
「わかったわ。でも、後ろが弓だったらどうするの?」
「……それもそうですね。なら私が後ろの一体を担当します。私も弓ですが接近戦もできますので」
「よし、ならそれでいこう。みんなも大丈夫?」
全員が頷き、戦闘準備を整える。
エルジュが後方に下がり、全員でもう一度頷く。それを確認するとエルジュは走り出し、同時に俺も盾を構えながら走り出した。
近づいたことで相手もこちらの存在に気づき銃を構える一体と後方へと移動する一体。俺の相手は銃を持ってるあいつだな。
てか、銃というよりバズーカ砲じゃないのか、あれ? 左腕そのものが武器になってるぞ。いや、銃身が細く長いからライフルの一種なのか?
そんな俺の戸惑いを無視して銃口をこちらに向ける武者鎧。それに対し〝清緑の盾″を構え衝撃に備える。
そして放たれる銃弾。一瞬の閃光のすぐ後で盾に来る衝撃。これまでで一番大きいがHPは全く減らない。新しくなった盾の性能に感謝しながら接近する。
その間に他のメンバーは回復持ちへ攻撃を始める。回復持ちの武者鎧の回復手段は相手に触れること。触れている間はずっと回復させることができるのだ。
逆を言えば相手に触れさせなければ回復を防げるということでもある。
俺は盾から伝わる衝撃に耐えながらみんなが回復持ちを倒してくれるのを待つことになった。
*アリサ視点*
「出し惜しみは無し」と聞いているので、さっそく青白い雷光を纏いながら〝アシュレイ″で突く。最初の攻撃だからかいきなり当たり、後方へとのけぞる……ヨロイナントカって言う敵。
しかし、その次から警戒されまったく当たらなくなった。
そこでスワンちゃんとリボンちゃんに矢を射ってもらうことで相手の移動範囲を抑え、ティニアの攻撃で隙を作り、私がそこに突撃するというあらかじめ考えておいた作戦を実行することになった。
「アリサ!」
「任せて!」
ティニアの〝スカーレットファン″を避けたヨロイナントカめがけて突撃する。他人頼りになってしまっているが、これが一番効率いいので文句は言うまい。
そしてそろそろ十回目の当たりの後、後方へとジャンプするヨロイナントカ。……言いにくいから後でもう一度名前教えてもらおう。
このまま逃げてくれればアルケさんの援護にも迎えるのだが、どうやらそういうわけではないらしい。
「たしか回復持ちは攻撃してこないんだよね?」
「そう聞いていますが、油断しないように」
隣に立つティニアのいつも通りの冷静さに気を引き締めて〝アシュレイ″を握りなおす。
するとヨロイナントカはその場で少しジャンプすると、なんと足を胴体に組み込んだ。敵だからってどういう構造しているのだろうか?
そしてそのまま空中に浮かんでいる。よく見れば収納した場所から風が吹いているように見える。
(風属性魔法を利用しての空中浮揚?)
風属性魔法の強さが強ければスワンちゃんやリボンちゃんのように翼がなくても空を飛ぶこと自体は可能だ。しかし、魔力の燃費と比べると効率はあまりよくないので妖精族なら自らの羽で飛ぶ。そのほうが楽だしね。
なんてことを考えていると浮かんでいたヨロイナントカはそのまま空中移動を開始した。その目標は間違いなくアルケさんが足止めしているジュウと呼ばれた武器を持っているヨロイナントカだ。
「させません!」
少なくなってきた雷光を補填し、再び突撃する。しかし、先ほど以上の速さで避けられてしまう。
二人が矢を射ってくれるもまるで関係ないとばかりに動き回っている。
「ここは私が!」
ティニアの声がしたほうを見ると〝スカーレットファン″の扇部分が燃え上がり、元の大きさから考えると三倍以上の大きさになっている。
どうやら魔力を与えることで炎を発生させ、自在に大きさを変えることができるみたいね。
しかも重さは変わらないみたいで巨大な炎の扇を自由自在に動かしている。それでもヨロイナントカの動きを制限するのが精一杯みたい。
(こうなったら、危険だけどやるしかない)
私は足を止め、纏わりつく雷光の威力を増していく。
実はまだこの方法、完全に制御できるわけじゃない。正直今以上雷光を増やすと私自身が焼き焦げる可能性もあるけど、ここでがんばらないと!
(お願い!)
出力を20%くらい増して〝アシュレイ″を構える。そしてタイミングを合わせて突撃する。
攻撃は当たったがそれによって生じた余波を制御できず私は雷光を体に浴び、体が動かなくなった。
でも、それ以上に問題なのは雷光が暴走を始めてしまったのだ。
(だめ……せいぎょ、しない……と)
しかし再び襲ってきた雷光により、私は意識を手放してしまった。
*アリサ視点 終*
戦闘の途中ですが、3000字を超えたので今回はこれまで。というより、ここで切らないと他で切れなかったので。
ところで登場したモンスターの元ネタがわかった方どれくらいいますかね? 曲のほうが有名なので案外知っている人は少ないのでは、と思っています。
次回も水曜日に投稿します。アリサさんはどうなるのか!?




