第六十三話:ダンジョン遺跡
大変申し訳ありませんがエイプリルフールの話は現在執筆中です。明後日までには投降します。
〝ダンジョン遺跡″の前まで来ると行列が出来ていた。さすが一番有名な遺跡なだけはある。
「どれくらいかかるかな?」
「おそらく三十分ぐらいではないでしょうか?」
スワンとリボンが話しているが、一番前は見えないものの思ったよりも早く前に進んでいるのでそう時間はかからないだろう。その予感は正しく、スワンの想像よりも早い二十分くらいで入り口に辿り着いた。
「さて、いざ突入なわけだが……」
「とりあえず一番簡単といわれている右の入り口に進みますか」
実は〝ダンジョン遺跡″には三つの入り口があり、右が一番簡単で、真ん中がそこそこの難しさ、そして左が一番難しいと言われている。左はこれまでのCWOに存在する攻略ステージで一番難しいと言われており、連日挑戦するチャレンジャーたちで絶えない。
実は努ことラインがクエスト終わらなかった最大の原因はこれで、時間が無いから簡単な方に行けばいいのに「難しいステージに挑戦してこそのゲームだろう!」と力説してそれに賛同したパーティーメンバーにより、最後までここの挑戦を繰り返していた。
……結果? 今も真っ白になっていることから想像はつくだろう。
つまり、ラインとエルジュがそろっても攻略できなかったほどの極悪ステージで未だにクリアできた人はいない。ボスまでなら辿り着いたパーティーがいくつかあるらしいがそのボスがとんでもなく強く、HPを半分まで削ったパーティーもまだ存在していない。
まあ、一番楽なステージに進む俺達には関係のない話だ。
右の入り口に入り、進んでいくと登場してきたのは青いねばねばした丸い物体。一瞬俺でも知っているような超有名雑魚キャラかと思ったが、丸い体を伸縮させて攻撃してくる様子がとても気持ち悪かったのでそれとは違うと認識した。
ねばねばした体のせいか物理体制が強く、アリサさんとティニアさんの魔法準備が整うまで俺が〝翡翠の盾″で攻撃を受け止め、スワンとリボンが素早い動きで翻弄し、アリアさんがすきを見て状態異常を引き起こす粉をまいていた。
結果アリアさんの粉は効果が出ず、アリサさんとティニアさんの魔法によってモンスターの撃破に成功した。
「いきなり魔法しか効果が無いモンスターね。これで一番簡単なんて冗談きついよ」
「そうですね。剣や槍など近接系武器しかいないパーティーにこれはしんどそうです」
魔法で消耗した魔力の回復を待ってる二人が話している。これから先またしてもあのネバネバが登場するのは間違いないと思うので確実を極めるために慎重に行くことにする。幸い夜時間になってもモンスターが強化されることはないので今日中に〝ダンジョン遺跡″を突破するつもりだ。クエスト期間もそろそろ終わりに近づいてくるから急がないといけないという理由もあるが。
そうして進めていき、予想通りネバネバモンスター(名前を覚えるのがめんどくさい)を倒していくと下へと降りる階段を発見した。
念のために【看破】を発動させ何も変化が無いことを確認してから降りる。さすがに序盤から無いとは思うが万が一を想定して行動するようにしている。
その理由は“パーティーの誰かが死亡すれば全員最初からやり直し”という〝ダンジョン遺跡″最悪の性質のせいだ。一方でソロでも訓練できるとソロプレイヤーたちも多く挑んでいる。
地下二階、地下三階は一階と特に変わりなかったので割愛。
しかし四階はまさに“死”だった。
「またですね」
「もう、やだ」
スワンとリボンはすでに涙目になりながらも矢を用意する。
ティニアさんとアリサさんは目に殺意を灯しながらお互い火属性の魔法を唱え始める。
アリアさんは悲しそうな目をしながら〝鋭羽弓″を構える。スワンに所有権があるが、眠らせておくのももったいないという理由からアリアさんに貸している。NPCだからか〝装備″という概念は無いようで他人の武器でも使えるらしい。
さて、俺達が相手をしようとしているのはこういうダンジョンではおなじみのモンスター、ゾンビである。それも人型から動物型まで様々で、今回出てきたのは人型だ。腐った肉の臭いと質感がかなりリアルになっている。
実はホラーって結構好きなジャンルなので内心「すげー!」と興奮しているのだがそれを表面に出さないよう何とか抑えている。こういうときだけはラインがいてくれたらいいのに。あいつも結構好きな方なのに。
そして近づいてきたところでスワンとリボンの弓が放たれ行動が鈍くなるとアリアさんの杖から放たれた輪が動きを封じる。これは【光属性中級】のアクト〔キャプチャーサークル〕で、光の輪を放ち相手の上部に来ると下降&収縮して相手の動きを封じる魔法だ。結構便利そうな魔法だが光の輪自体の耐久値が低く、長時間拘束するのは厳しい。一番有効なのは離脱の時と言われるくらいだが少しの時間があれば十分。その間に詠唱を終えたティニアさんとアリサさんの魔法が放たれ、ゾンビは全て燃やされた。訂正消滅した。
「早く下に降りたいですね」
「ホント。これ以上見るのはごめんだわ」
「私も同感ですね」
NPC三人の言葉を聞きながら下に降りる階段を探していく。
しかしいくら歩いても階段が見つからず、ついには四階に辿り着いた目印として傷つけておいた傷跡を発見してしまった。
「どういうことでしょうか?」
「事実として同じところに戻ってきたわけよね?」
一度下の階に下りると階段が消えてしまい、上の階には戻れなくなる。「もし下の階が迷路のようになっていたら困る」というリボンの発言から一応階段から降りたところには傷跡を付けておいたのだが、まさか本当に役立つとは全く思っていなかった。
ちなみに途中でリタイヤしたい場合は〝ダンジョン遺跡″に入った時点で全員に支給される〝モドリ玉″を使えばいい。このアイテムは手持ちアイテムの数にはカウントされないためこれを持てないプレイヤーはいない。NPC三人も当然もらっており、それぞれポケットに入れている。
「さて、これからどうしようか」
「とりあえず、ここまでの行動を思い返してみましょう」
「とは言っても、いたるところでゾンビを燃やしたこと以外特に何も無かったじゃない?」
アリサさんの意見は正しく、この四階では曲がり角を曲がったら必ずゾンビに出くわしてきた。そういう物かと思ったがこれまでの階と比べてもあまりにも多すぎるような気がする。
「もしかして?」
「アルケさん、何か思いつきましたか?」
ティニアさんの声で全員が俺を見つめてくるが、果たしてこの考えであっているのだろうか? もし違っていたら全員から袋叩きに合う可能性もある。
「あくまで思いついただけで確証は無いんだけど……」
「それでもいいわ。今は行動しなくちゃいけないんだから」
アリサさんが言うので思いついたことを話してみると、案の定全員嫌そうな顔をした。
「どうする? やってみますか?」
俺の問いに誰もが誰か別の人の顔を見つめるが、結局他に案がないことから試してみることにした。
その後、俺が考えた通りに行動すること十五分後、ようやく階段が出現した。
見つけたのではなく、文字通り出現したのだ。
「ビンゴでしたね」
「こういうのは止めてほしいよ」
「まあ、ゲームだしね」
これはスワンとリボン、つまりプレイヤー側の感想。
「正気とは思えませんね」
「悪質にもほどがあります」
「このダンジョン作った神って絶対に性格ねじ曲がってるよね」
これはNPC三人の感想。
どういうことかというと、四階の突破条件は“一定数のゾンビを倒すこと”だった。最後は三体同時に倒したので正確な数は分からないがおそらく三十体は〝塵″にしただろう。文字通り全てのゾンビは火葬された。
「さっさと次に進みましょう」
「そうだね」
「賛成です」
「こんなところ早く出ましょう」
「出ちゃダメだよティニア」
言ってることは違うが、全員現れた階段を走って降りて行った。
俺は降りる寸前気配を感じたので振り向くと、闇の中に浮かぶゾンビの手が見えた。もう少しすれば全体も見えただろうが、下から呼ぶ声が聞こえるので右手を突き出し、拳を握りしめ、親指だけを立ててから降りて行った。
俺は見えなかったがゾンビの手も同じように親指を立てていた。
*おまけ*
「所長?」
「ダンジョンと言えば〝ゾンビ系モンスター″だろ? どうせなら〝首なし騎士″とかも入れたかったのだが」
「それはちゃっかり上級編に入れてましたよね?」
「顔が無いから相手の目を見て攻撃を予測することができない。実に上級編の相手にふさわしいじゃないか!」
「……今度所長が逝ってきますか? 上級編?」
「どこかおかしくなかったか? 今の発言?」
「「「「「いいえ。至って正常ですよ?」」」」」
「仲いいな君達」
なお、前書きの執筆中は嘘ではありません。ネタが思いついたのが昼前だったのでまだ完成してません。
アルケ「せっかくなら冒頭では嘘をつけば?」
作者「私は誠実な人間でありたいのです!」
アルケ「3日に1回の更新はすでに守られていないようだが?」
作者「(逃走)」
次回は4月8日(水)に投稿します。その前にエイプリルフールネタを投稿します。




