表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
143/229

第六十一話:弓の強化

突然のアリアさんの発言で場が沈黙に染まる。

その中でアリサさんが驚いた表情を見せる。


「えっと、姉さん? どこでやるの? 道具とか無いよ?」

「いや、そこじゃないと思うのだけど」


ファイさんがツッコミを入れるが確かにその通りだ。


「アリアさんって、弓作れるのですか?」

「リボンさん。アリア姉さまは元々弓使いだったんですよ」

「そうだったんですか!?」

「ええ。でも薬剤師を目指していくうちに弓よりも杖のほうが採取の安全が確保できるからって今のスタイルになったのよ」


なるほど、そういうことならアリアさんでも弓の強化はできるということか。って納得していいのか?


「それで、どうやって道具を調達するの?」


アリサさんが再び話を戻す。そういえば道具が必要と言ってたな。


「可能ならば一旦戻って持ち込みたいのですが……」

「それは無理ですね」


最初にダイブした時に持っていたモノ以外はドロップ品しか持ち込めない仕様がここでも障害となる。


「となると、お借りするのは……」

「残念ながらその道具を使っている人はだれもいませんでした」


まあ当然だろう。妖精族による弓の強化なんて一度も聞いたことない。


「なので、一度あの集落に戻りましょう」






売却に行っていたガンツさんのメンバーが合流してから苦労して進んできた道を戻り、前の集落に戻ってきた。いくつか新しいログハウスが立っているのでまた新しい人たちが訪れているのだろう。


「おや? お前さん達北の方に行ったんじゃなかったのか?」


近くにいた人にトオルさんの所在を訊き、対面する。たった数時間離れただけなのになぜか凄く懐かしく感じるな。


「ええ。そこでちょっと困ったことになりまして」


俺が代表して話をするとトオルさんは唸りだした。


「実物が無いと少し厳しいが、それでもよければ作ってみよう」


なんとか了承を得たところで話す相手をアリアさんに交代する。アリアさんは手に杖を持っており、地面に何かを描いていく。


「あれは?」

「姉さんがいつも使ってる道具の絵。口で伝えるよりもこっちの方が理解しやすいかなって」


俺とアリサさん、ティニアさん以外は横からその絵を見ている。俺も加わって見てみたが、アリアさん絵上手い。さらに描きながらどういう物か説明もしており、トオルさんは「ふむふむ」と頷いている。


三つの絵が描き終えアリアさんがトオルさんに訊ねると「これだけあればなんとかなる」と言ってトオルさんは手の空いてる〝カーペンターズ″のメンバーを集め出した。アリアさんは追加されたメンバーに再度説明している。


トオルさん達が道具を作成している間、俺達はガンツさん達と話をしていた。主に売却していたガンツさんメンバーが愚痴を吐いている。


「あれだけの素材で補助アイテム三つですか?」

「ああ。ひでぇぼったくりだよ」

「研磨するだけでそんなに必要なんですか!?」

「あんたもそう思うよな。サイドアーム用意しておいて正解だぜ」

「魔石ですか。そんなものも売っているのですね」

「けどずいぶん高いわね」

「欲しいが、あれは手が出せねえよ」


そんな話をしているといつのまにか夜時間となっており、空は黒く染まり、星が輝いている。


「街頭とかが無いから星が良く見えるな」

「私たちが知ってる星座とかあるんでしょうか?」

「どこかにないかな~」


俺、スワン、リボンの三人で星空観賞を楽しむ。

ティニアさんとアリサさんはタッグチームを組んでガンツさんたちとタッグ同士の模擬戦をしている。いつのまにか集落にいた他のパーティも参戦しているがティニアさんとアリサさんのタッグチームは連戦連勝。近接戦になってもほぼゼロ距離から魔法をぶっ放すあの二人はやはりどこかおかしい。


「お~い、出来たよ~!」


そんな雰囲気の中、まるで夕ご飯ができて子供を呼んでいる母親のような声でアリアさんが呼ぶ。模擬戦も中断し、全員で完成した道具を見るために集まる。


「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

「へぇ~、良く出来てるわね」

「ここまで再現できるとは。良い腕をお持ちなのですね」


そこにあるのは確かに地面に描かれていた三つの道具。


聞いていた話では〝作業台″〝加工用の道具″〝統合用の道具″を作ると言っていたが、完成したのは『弓全てが横たえられるほどの大きさの丸いテーブル』『テーブルに添えられた長方形の物体』『テーブルに添えられた木製の杖』の三点だ。


「これで、できるんですか?」


どうしても疑問がぬぐえずアリアさんに問うとアリアさんは首を振った。


横に。


「これからが本当の準備です」






ログハウスが全く立っていない場所に完成した三点の道具を置くアリアさん。未だに疑問顔な俺達に対し、トオルさん達はなぜかワクワク顔だ。


「何か知ってるんですか?」

「ワシも詳しくは知らん。だがあれが見た目だけの物ではないことは作ったわしらがよく知っている」


トオルさんからアリアさんに視線を戻すとアリアさんは木製の杖を持ち、口を動かしている。その様子から何かを口ずさんでいる?

その行為を一分以上すると、アリアさんを中心に地面が光り出し、光の線が浮かび上がる。


ちょっとまて、この反応って、まさか……


「【魔法陣魔法】?」

「残念アルケさん。これは【儀式詠唱】だよ」

「儀式……詠唱?」


アリサさんの言葉に全員が再度アリアさんに注目する。光り出した地面はその輝きを増し、その規模が大きくなる。


「〔グリーブ〕!」


アリアさんが発したその言葉により、地面の光が一気に収縮し、光の柱となってアリアさんを包む。

光が消えるといつものアリアさんがいるだけで特に変わりはない。


いや、テーブルが光っている?


「儀式は無事終わりました。さあ、始めましょう」


アリアさんは満面の笑みで戻ってくるが何が起こったのかさっぱり分からない。


「えっと、アリアさん?」

「はい?」

「今のは?」

「弓を作ったり強化したりするための道具に魔力を浸透させたのです」


アリアさん曰く『妖精族が弓を作る際には、事前に用意した道具に自らの魔力を流し込むことで自分専用の道具とする必要がある』とのこと。そのために道具を作る過程で幾つも魔法陣が刻まれているらしく、さっきトオルさんが言っていた「見た目だけの物ではない」はこのことを意味していた。

魔力を流すことで内部の魔法陣が発動し、各道具の外側及び内側全てに魔力が浸透される。浸透し終わったら残った魔力は成功を祈るために天へと捧げるため、光の柱となる。


この一連の流れを行うために長い詠唱が必要となるため、これは【儀式詠唱】と呼ばれているらしい。


「それじゃ、弓の強化をしましょうか」


アリアさんは選別しておいた強化に必要なドロップをスワンに出してもらい、それらをテーブルの周りに置いてテーブルにスワンの弓を横たえた。

そして魔力を流した杖を持ち、再び何かを唱え始めるとテーブルに置かれた長方形の道具から光が伸び、ドロップそれぞれに光が当たる。するとドロップにも光が浸透し、やがて光の玉となる。光の玉はテーブルを周回し始め、それが集まっていき、やがて光の帯となっていく。


光の帯は徐々にテーブルに向かって収縮し、最後にはテーブルと同じ大きさとなる。


今度はテーブルに置かれた弓が浮かび、光の帯の中心で止まる。


「〔プロゼクト〕!」


アリアさんが先ほど唱えられた言葉とは異なる言葉を放つと光の帯が弓に吸収され、目が開けられないほどのまばゆい光が辺りを照らす。


閃光が消え眼を開けると、いつのまにかこちらに体を向けていたアリアさんの腕には一張の弓が抱かれていた。

今回の話ですが、実はアリアさんは最初弓使いの設定でした。しかし「妖精+弓使いだとエルフ族みたい?」と自分で思い、杖を使うキャラに変更しました。でもこの設定何かに活かせるかもと残していたデータを発掘し、今回の話を思いつきました。


次回は3月25日(水)に投稿します。さて、弓の出来栄えは如何に?


アリア「過剰評価されたら困るのは作者では?」

作者「orz」



*用語解説*

サイドアーム:所謂サブ武器。アイテムポーチにメイン武器以外にも武器を“持つ”ことができる。しかし、装備するにはウィンドウから装備欄を選択しなければならない。


*魔石*

魔法が込められた石。今のところは極稀のドロップ以外入手方法無し。込められているのは【~属性初級】で覚えられる魔法のみだが魔力が必要無いので戦士系のプレイヤーたちに需要がある。

なお、アルケが【錬金術】で作ったアイテムは魔石ではないのでご注意。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ