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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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特別篇:男にとって勝負の日?

告知無しですが、ホワイトデーのお話です。

“2月14日が乙女の勝負の日ならば3月14日は男が試される日である”


昔バレンタインデーとホワイトデーに関する書物を読んでいるとこんな言葉が書かれていた。

初めて見た時は“本当か?”と疑っていたが今この瞬間、それは心理であったと確信した。


「マジでどうする?」


アトリエの中で俺は錬金釜の中身を混ぜながらずっと考えていた。


今日は3月10日。あと4日でホワイトデーだというのにお返しの品が全く用意できていない。

一応新作のアイスを二種類作ったのだが、一部の人に対してはそれだけでは足りない。


それはアリアさん、ティニアさん、そしてアリサさんの三人だ。


この三人からはランクSpとLdのバレンタインチョコをもらっている。それだけに何か特別なモノを送る必要があるのだが、その品が全く思いつかない。


なお、一体だれがどのチョコをくれたのかはいまだに教えてもらっていない。


「よう! 調子はどうだ?」


完成した錬金アイテムをアイテムボックスに入れた時にラインが尋ねてきた。

突然の訪問ではなく、事前に相談されていたので普通に出迎える。


「あまりよくはないな。未だに思い付かない」

「いや、新作アイスなんて間違いなく入賞候補作っておいて何言ってんだか」


ラインの発言にある〝入賞″だが、実は3月1日に運営からこんなイベントの案内が届いたのだ。



『来たる3月14日のホワイトデーにちなんでプレイヤーの皆様にイベントの告知です。3月13日午前0時までに〝女性に贈るプレゼントの品″でコンテストを行います。出品権利は男性プレイヤーのみ、投票権利は女性プレイヤーのみにあります。

男性プレイヤーの方々は運営から送られた〝プレゼント箱″に出品する品を入れてください。3月13日0時の時点で〝プレゼント箱″は回収され、一時間以内に全ての品が画像や解説付きでコンテスト専用ページに表示されます。

女性プレイヤーの皆様は品を確認していただき、一人三票まで投票することができます。一品に三票でも構いません。投票期間は3月15日午前0時までです。


上位三位までの品を作った男性プレイヤーには必ず、その品を投票した女性プレイヤーは抽選で特別なプレゼントを用意してあります。

いずれもこの機会でしか獲得できないモノとなっております。


皆さま、がんばってください!』



俺としては特別なプレゼントと言われても正直どうでもよかったので、作るついでに参加してみよう位の気持ちなので気楽だが、ラインとしてはどうしても入賞したいらしく、俺に何かいい知恵はないかと尋ねてきたのだ。


「それで、何かいいアイディアはないか?」

「それより、俺が作ったことがバレた時の対応は出来たのか?」

「まあ、一応な」


口調からそれなりに自信はあるようなので考えておいたアイディアを伝える。


「ラインはプレイヤーレベルが高いだろ?」

「まあ、トッププレイヤーだと思っているが、それがどうした?」

「ならそれを利用して〝レンタル券″なんてどうだ?」

「……どういう意味だ?」


想像通り意味が伝わらなかったようなので用意しておいた紙を見せる。


「こんな感じでチケットを作るんだ。作る相手はそっちで決めてくれ。そしてそのチケット一回でクエストとか採取とかにラインをパーティーに加えることができる」

「だから〝レンタル券″か」

「そういうこと」

「つまり、俺自身がプレゼントとなるわけか。面白そうだな、それ!」


どうやら満足してくれたようで助かった。

ちなみに、このアイディアは空が机に置いていた読みかけのライトノベルの挿絵に描かれていた体にリボンを撒いていた女性を見た時だ。一瞬“どんな本読んでんだ?”と思ったが、そこはスルーした。






俺が伝えたアイディアを気に入ったラインは「さっそく頼んでくる!」とアトリエを去ったが、俺は相変わらず品が思いつかないままだった。

ここにいても意味が無いとルーチェの納品を届けた後ダイブアウトする。ちょうど空もダイブアウトしたようなので相談に乗ってもらうことにした。


「バレンタインのお返しか~」

「定番ならクッキーとかなのかもしれないけど、何か違うんだよな」

「まあ、ランク高いのを貰ったのならそれなりのお返しが必要だよね~」


買い置きしてあったお菓子を食べながらテレビを見ている空。一方スマホで『ホワイトデー・お返し』で必死に検索している俺。

くそう、これが現実と言うやつか。


「あ、これ欲しいな~」


空のつぶやきに顔を向けているとテレビの画面では宝石の特集を放送していた。


「おっきなエメラルド~! あんなの一度でいいから貰いたいな~」


画面に映っているのはエメラルドの指輪。当然お値段もかなり高いが確かに見た目はとても鮮やかだ。こんなものを贈れたら喜ばれるのも当然……


「!」





「つまり、これを元に加工してほしいと?」

「そうです。可能ですか?」


再びCWOにダイブインした俺は急いでアトリエの在庫をアイテムボックスるに入れてからある場所を訪れていた。


「しかし、いいのか? これはかなり良いインゴットだと思うのじゃが?」


俺が指し出した〝翡翠″と〝鉄″のインゴットを見てもったいなさそうな顔をするオウル。そう、俺はテレビで見たエメラルドの指輪をインゴットから作ろうと考えたのだ。

これなら加工は他の人間の手を借りているが一応俺が作ったモノを元にしているので俺からの贈り物にはなるだろう。


なお、本物の宝石を買ってくることも考えたのだが一人分ならまだしも、三人分となるとさすがに資金が足らなかった。ちくしょう。


「まあ、お前さんがいいなら作ってみよう。この紙に書いてある通りに作ればいいのじゃな?」

「ええ。あくまで希望であって無理に近づける必要はないですよ?」

「儂も職人じゃ。頼まれたことは正確にやり遂げてみせようぞ」


やばい、オウルさんかっこいいです。


「あと、これは報酬の前払いとして受け取ってくれ」

「ん? なんじゃこれは?」

「〝焔石″っていうアイテムだ。一定時間火を出すことができる。結構高温になってるから役に立つと思う」

「ほう、面白いモノじゃの。これも【錬金術】か?」

「ああ」


オウルは掌より少し大きめな赤い石、つまり〝焔石″を持って作業場へと入っていった。


後はオウルを信じて待つだけだ。






そして迎えた3月14日当日。

運営から送られてきた〝プレゼント箱″には新作アイスの一つを入れておいたので結果を待つことにしよう。ラインは入賞候補と言っていたがさすがにそれはないだろう。


「お久しぶり」

「お久しぶりです、セリムさん」


アトリエにダイブした俺を最初に出迎えてくれたのはセリムさん。実はホワイトデーのお返しが完成するまでエイミさんの自宅に住んでもらっていたのだ。

エイミさんに頼む前は申し訳ない気持ちだったが「それなら思う存分お話を聞けますね!」と目をキラキラさせたのを見た後は正直人選間違えたかなと思ったが元気そうで何よりだ。


「セリムさん、これチョコのお返しです」

「ありがとう。これは?」

「こっちがキュイチという果実から作ったアイスとこっちがピリンという同じく果実から作ったアイスです」

「え? キュイチ?」

「……もしかして苦手でした?」

「ううん。キュイチって回復効果がある珍しい果物だから驚いただけ」


確かにキュイチは珍しいらしいが、アイスが好きなとあるハイフェアリーの長さんからよく生えている場所を教わったので実は容易に入手できるのだ。

もちろん誰にも教えないことが条件だが。




セリムさんからエイミさんの自宅での生活を聞いてるとエイミさんが来たのでエイミさんにもアイスを渡す。

そしてルーチェの納品ついでに売り子三人にもアイスを渡した。今日お返しがあるといったら全員ルーチェに集まったのだが、実は他にも二人にプレゼントを用意した男性プレイヤーがいたらしく、またしても行列ができていた。

ちなみにチョコ作戦は成功したらしく、以前ティニアさんに訊いたら三人を指名する人が急増中らしい。それにちなんで“売り子をやりたい”と言ってる遊女の方が何人かいるようなので「二号店なんてどうですか?」と言われたことがあるが丁重にお断りしてる。

理由? そんな暇あるか!







そして本日のメインイベントであるアリアさん・ティニアさん、アリサさんへのお返しの時間だ。なお、遊女の皆さんにはすでにアイスを振舞っておきました。どうやらピリンのほうが反応良かったのでこれから定期納品のアイスをピリンにすると言うととても喜んでくれた。……俺、アイス屋だったっけ?



チョコをもらった時と同様、フライパン部屋に向かう。もはや本来の名前全く覚えていません。


部屋に入るとなぜか俺以上に緊張している三人の姿。それを見てこっちの緊張が取れたのでそれぞれの正面に座り、それぞれにプレゼントを渡す。

アリアさんには指輪、ティニアさんにはイヤリング、アリサさんにはペンダントだ。オウルは宣言通り俺のデザイン、実際はネットから持ってきたのを忠実に再現してくれ、アリアさんに至っては泣きながら喜んでくれた。

……なぜかティニアさんからは「じー」みたいな目で見られ、アリサさんはすごい笑顔だった。なぜこうなった?







こんな感じで無事に喜んでもらえたのでまあ、なんとかなったホワイトデーだった。


ちなみに、俺が出品したキュイチとピリンのアイスは第5位。残念ながら入賞にはならなかったが、そこそこいい評価なのでルーチェで販売することにした。最も、ピリンは『水仙』にも卸さなければならないのでキュイチが多めになるが。


そして1位はまさかの〝ラインレンタル券″だった。しかもレンタル券は本人の知らないところで複製され、ラインはレンタルの多さで大変な目に合ったらしい。すぐさま運営が対応してくれたらしいけど、すまなかった努。今度ジュースでも奢ることにしよう。

実は感想欄に「ホワイトデーの話楽しみにしてます」と書かれているのを見るまですっかり存在自体を忘れてました。


本編は前回お伝えしたように、来週の水曜日に投稿します。

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