表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
135/229

第五十五話:傭兵のまねごと

なんとか更新できました。ついでに今回長いです。

あと、活動報告にも書きましたが、モンスター文庫一次通過いたしました! これを励みに今後もがんばっていきます。

鍛冶をしていたドワーフ族の男性プレイヤーによると一昨日クエストをクリアした最初のパーティーが現れたそうだ。ここ最近は調合ばかりで情報収集を怠ってたな。


しかし例の〝スキル増強剤″はクエスト期間が終わってから使うことにしたらしい。どうやら使ってしまうと例え期間中であっても二度とクエストフィールドに転移できなくなってしまうかららしい。


『まだまだ攻略していない場所もあるからもう少しフィールドを探検したい』という理由で彼らは未だにフィールドに転移しているようだが、この情報により“急いで攻略”から“のんびり攻略”に変えるプレイヤーが多くなり、それによって鍛冶や生産系のスキル持ちの需要がさらに高まった。


そのため、俺にこの情報を教えてくれたプレイヤーはもっと大きな集落がある北を目指すことにしているらしい。なんでもそこには回復アイテムを作れる集団がいるらしく、その集団目当てで大勢のプレイヤーが集まるので自分の【鍛冶】スキルを上げやすいと考えたらしい。


同じ目的で昨日まで俺にポーションを求めていたプレイヤーたちも北に向かったらしい。なんでも北には遺跡とは違う洞窟があり、そこのモンスターはそこまで強くないのにえられる経験値が多いようだ。


「それで? なんで自分の方針が決まっているのに私たちの動向を探りに来たの?」

「確かにそこを目指すのが一番理想的なんだろうが、生憎私は戦闘系のスキルをあまり育ててないのだ」

「つまり『私たちもそこに移動するのであれば一緒に連れて行ってくれないか?』ということですか?」

「アリア姉様、それは直接的過ぎませんか?」

「いえ、そちらの方がおっしゃる通りです」


すると全員の視線が俺に向けられる。そういえば俺がリーダーでしたね。


「せっかくの情報ですが自分はここに居座るつもりです。もう店も建ててもらったので」


俺としても【錬金術】のスキルレベルを上げるためならその集落に向かった方がいいのかもしれないが、俺はそこまで積極的にレベリングをするつもりはない。あくまで自分が楽しむためにCWOをプレイしているのだから。


「そうですか」


残念そうに頭を落とすプレイヤー。しかし、ここで「ではさよなら」だと人としてどうかと思ってしまうな。


そう思っていた俺の視線がわずかに動く。その視線の先にいた人物は俺の視線に気づくと笑みを浮かべてくれた。


「いいんですか?」

「まあ、これもいい訓練になるから」


いきなりの展開に戸惑うプレイヤーに俺が視線を向けた相手、アリサさんが声をかける。


「私があなたをそこまで連れて行ってあげる。報酬は……向こうの情報提供でどうかしら?」


その後俺はそのプレイヤーとフレンド登録を交わし、万が一のため攻撃アイテムをアリサさんに持たせて見送った。あ、プレイヤーの名前はレギルだった。




アリサさんを見送った後、俺は閉店中の臨時ルーチェで調合をする。この空いてる時間にある程度在庫を確保しておきたいからな。そのためにアリアさんには薬草を、ティニアさんには調合水の生産をお願いした。

女性のティニアさんに水汲みは申し訳ないと思ったが、さすがは魔法が得意な妖精族。【水属性魔法】で水を生みだして次々と桶に入れていった。おかげで大量の調合水を確保できたのだが多すぎたので、まだ普通の水の状態で集落に残っている他のプレイヤーに分けた。特にカーペンターズの皆様には喜ばれた。



夜時間が近付く頃になってアリサさんが帰還。おもったよりも離れてなかったのかと思ったが「面倒だから【風魔法】使って飛んだ」と返事が返ってきた。


どうやらエルジュも使っていた〔ウィンドアーマー〕の応用らしいのだが、飛べるほどなのかと疑問に思ったが「正確にはかなり早い速さでステップ移動する感じかな?」と言っていたので納得した。つまり、『飛んだ』と言うより『跳んだ』という事だ。


アリサさんによると集落の入り口が見えたあたりから引き返したとのこと。「そこまででいい」と事前にレギルさんが言っていたのもそうだが、これ以上だと夜時間になってしまうと判断したらしい。さすがにアリサさんでも夜時間のモンスターは手ごわいという事だろう。


俺は戻ってきたアリサさんに周辺で偶然見つけたランゴを使ったアイスをプレゼントした。ティニアさんがもの凄く欲しそうにしてたので今度見つけたら作ってあげよう。


その日はそれ以上特に何も起こることなく、平和な一日だった。

この調子なら明日は放置していた西の遺跡に行ってみようかな。




日曜日。現在CWOは昼時間まっただ中。

スワンとリボンが今日も来れないと連絡があったので西の遺跡は断念。せっかくパーティー組んだんだからフルメンバーで行きたいからな。


というわけで今日は【融合】に挑戦している。

普段なら人目が無いところで挑戦するがクエストフィールドで行おうとするとどう考えても俺一人では太刀打ちできないレベルのモンスターに囲まれる可能性が高い。


そこでログハウスの中で挑戦することにした。このログハウス防音完備で壊れにくい。プレイヤーが建てたモノなので当然耐久値があるがその値は恐ろしく高い。

さすがは元大工が建てただけのことはある。


そんなわけで遠慮なく挑むことができる。

さあ、レッツチャレンジ!


…………ドカーン!!





「今度は何したんですか?」

「ちょっと実験を」

「爆弾作り?」

「まだどうなるかは分からない」

「でも、すごいですね、これ」


ティニアさんの言葉に全員が振り返るとそこには天井が半壊し、壁もボロボロになった “元″ログハウスがあった。


「あと少しで何かがつかめそうだったんだけど……」

「もしかしてその度に爆発してたんじゃないですよね?」

「いや、その時は本当に小さな爆発であそこまでの被害はなかった」


冷静に分析する俺だが聞こえてきた足声にすぐに振り返る。


「この度はご迷惑をかけてすいません」

「かまわん。壊れたモノは直せばいい」


その人は臨時ルーチェや他のログハウスを建てた〝カーペンターズ″のギルドマスターだ。名前はトオルさん。本名ではないそうだ。


「棟梁、少しよろしいですか?」

「どした?」

「保存の木材の在庫が厳しくなってきてます。いかがしましょうか?」

「そうか。外からの補充もできないか」

「となると、現地で木材に加工する必要がありますね」

「木だけならそこらじゅうに生えているからな」


あれこれ意見を言い合う二人だがそこにはある問題がある。


「モンスターをどうするかだな」

「ええ。俺達、戦闘能力はそこまで高くありませんからね」


……聞いたことある話だな。


「だったら自分が手伝いましょうか?」

「できるのか? 生産職に見えるが」

「一応の戦闘は出来ますし、この二人は戦闘に関してはプロです」


そう言われた二人のうちの一人であるティニアさんは「え? 私もなの?」みたいな顔をしているが当然だろう。現状のパーティーにおいて戦闘で頼れるのはティニアさんとアリアさんだけだ。スーパーアリアさんはノーカウントで。


「わかった。ならワシが行こう」

「お一人だけでいいんですか?」

「まずは使える木なのか見分ける必要がある。その程度ならわし一人で十分じゃ」




アリアさんに事情を伝えるついでに「休憩しててください」と伝え、俺とティニアさん、アリサさん、トオルさんで森に入る。しばらく歩いているが木ばかりで方向感覚が狂いそうになる。


「あまり良くない木ばかりだな」

「そうなんですか? これとか結構太いですけど?」

「確かに太さはあるが叩けばわかる。これは空洞が多い」


試しにとトオルさんが切って得られたのを見せてもらうと〝木材(不良品)″だった。

CWOでは特定のスキルと特定のアイテムを使うと【伐採】のようにアイテムを獲得できるスキル、通称【職業スキル】が発動する。例えば【鍛冶】と〝ツルハシ(発掘用)″があれば鉱物を発掘できる【発掘】というスキルが発動する。ちなみに発動するスキル名は最初に発見した人が命名できるらしい。

なお、俺がトオルさんから今使った鉈を借りても木を切ることができるが木材は手に入らない。


「でも、なんで空洞が?」

「シロアリでもいるのではないのか?」

「しろあり? なんですか、それ?」


アリサさんの言葉に辺りから音が消えたようにシーンとした時間が流れる。

…………落ちついて考えてみよう。CWOにシロアリは確認されていない。

となれば当然この空洞を作ったのはシロアリ以外の何か。

そしてここはモンスターが徘徊するフィールド。


つまり、答えは簡単だ。


「来た!」


突如現れたのはまさにアリ。色は黒だがその大きさは現実のアリの果たして何倍だろうか。

というか、今までこんなモンスター見たことないぞ。


「サイデント! しかもでかい!」


サイデントとは大きさを変えることができるロックアントの派生型モンスターだ。なるほどあいつなら自分の体を小さくして木の中に隠れられるな。

現れたのはロックアントサイズだが最低でも二十匹はいるな。


「あれは銀の触覚! 通常よりも強い個体も混じっている!」


見てみると確かに中には触覚が光を反射してキラキラ輝いている固体がいる。ああいう強化の見分け方ならある意味大歓迎だ。……つい最近見た真っ赤な何かに比べれば。


そんなことを思いながら俺を前に、横にティニアさんが並びその後ろにトオルさん、そして最後尾にアリサさん。万が一後ろから奇襲を受けた時に備えて考えておいた陣形だ。


「さあ、久しぶりに体を動かしましょう!」


そういえばずっと売り子でしたねティニアさん。たまにしゅくせ……じゃなかった整列担当に変えてあげよう。


「派手に行きます! 〔フレイムタワー〕!」


発動したのは【火属性中級】の一つ、〔フレイムタワー〕。自分から少し離れた場所に炎の柱を地面から天に伸ばす魔法。熟練者ならある程度自由に出す位置を指定できるらしく、この魔法を好んで使う魔法使いは多い。


ティニアさんは結構魔力を使ったのか5つのフレイムタワーが地面から天にのぼる。


しかしここであることを思い出してほしい。

今俺達はどこにいるのか、ということを。


「木、木が~!?」

「ちょっとティニア!? なんでこんなところで【火属性魔法】なんて使ってんのよ!?」

「ご、ごめんなさ~い!」

「いいから早く消化!!」


その後〝レインディア″とティニアさん&アリサさんのダブル【水属性魔法】で何とか鎮火。襲ってきたサイデントの集団は当然全焼。一応ドロップはもらえたけど。


ちなみに、これ以降十分な木材が集まるまで一切モンスターと遭遇することはなかった。

ついでに俺達が帰ってきた後、すでに状況を悟っていたアリアさんにティニアさんが引きずられて行った。その後どうなったかは…………ガクガク震えるティニアさんを見れば一目瞭然だろう。

次回の更新も来週の2月11日(水)予定ですが、来週から3日ごとの更新に戻せるかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ