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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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特別篇:それぞれのお正月

新年あけましておめでとうございます。

本年もCWOをよろしくお願いします。

元日。それは新年の始まりを告げる日。

子供たちはお年玉を求めて親戚に群がり、餅つきや初詣に人が集う。


そんな現実の光景とはかけ離れた、いやまさしく別世界と言う光景がCWOでは展開されている。


「「「「「メェ~!」」」」」

「「「「「「「「「「待て~、羊~~~~!!!!!」」」」」」」」」」


辺りに門松や注連縄が巻かれた木々が並ぶお正月特別フィールド。そこには大量の羊とそれを追いかける人の群れ。



『お正月特別イベント―羊追いかけてお年玉争奪戦―』



このイベントは羊型のモンスターを倒し、ナンバー付きの札を手に入れる。そしてイベント終了後に公開される当選番号によってセルがもらえるというもの。

その金額は1セル~1万セルまであり、1万セルの当選数もそこそこ用意されている。


しかし当たる確率よりもきついのが逃げ回ってる羊型モンスター。どう考えても羊とは思えないほどの速さで走り、さらに弓矢や魔法などの飛び道具系はモコモコの体毛で威力が軽減されてしまう。

そしてこの体毛は素材アイテムであり、この体毛を使って服を作成すると【遠距離攻撃/魔法耐性・中】という効果が付属される。そのため札よりも体毛目的で羊を追いかけているプレイヤーも多いがドロップ率はかなり低いらしい。


なお、羊は一切攻撃をしてこないが、その群れに巻き込まれると群れ全体が走り抜けるまで永遠と突撃によるダメージを受けることがあるプレイヤーによって証明されている。


……誰なのかは本人の名誉のために伏せておこう。惜しい友人を亡くしたものだ。




しかしこのイベント一番の敵は羊ではない。


「[ライトニングスピア]!」

「「「「ギャァ―――!」」」」


「おい、誰だ魔法撃ってきたやつ!」

「あれ最近有名なギルドのやつらだ!」

「構うな! 羊を殺せ!」

「やらせるな! もう一発、放て!!」


このイベントなんと他のプレイヤーを殺すことが許可されている。つまり、羊を倒すついでに邪魔な他のプレイヤーも一網打尽しても文句が言えないのだ。

ちなみに死亡した場合は死亡した場所で30秒動けないだけでデスペナみたいなものは存在しない。そのためか、イベント制限時間が半分を過ぎた今までの間に多くのプレイヤーが殺し、殺されている。正直羊以上に死んでるプレイヤーのほうが多いだろう。





ちなみに、俺はこのイベントに参加していない。ではなぜ状況が分かるのかと言うと、その光景を見ているからだ。




アトリエに増設したテレビ(・・・)で。


このテレビは箱型ではなく液晶タイプで現在アトリエの壁にかけている。画面の大きさは現実には存在しないほど大きい。小型のスクリーンと同じくらいじゃないだろうか。


「う~ん、魔法の威力がいまいちですね。やっぱり耐性があるからでしょうか?」

「ううん。あれは魔法を放った人の威力が弱いからだよ。多分習得したばかりじゃないかな?」

「個人的にはあの可愛らしいモンスター相手に攻撃をしているのはあまりいい気分じゃないですね」

「アリア姉さまは相変わらずですね。あ、アルケさん私にもお茶もらえますか?」


ティニアさんがお茶のお代わりをしてきたのでダリル茶を入れ直す。ついでに全員分を入れておこう。


なお、今アトリエにいるのはもう一人。


「やっぱり欲しいですね。あの羊さんの毛」

「シュリさんは鍛冶師なんですよね? 裁縫技術も習得しているのですか?」

「【裁縫】ってスキルあるんですか?」

「聞いたことはあるよ。 確かそのスキル取った人お店も出してるはずだよ」


同じくテレビを見ているのはシュリちゃん。お正月どうしてるかと思って訊いてみたら一人でのんびりする予定だったようでせっかくだから誘ったのだ。


「本当はアーシェと何かしようかと思ったのですけど……」


シュリちゃんの視線の先、テレビの画面の一部にはそのアーシェが鞭を使って羊を誘導している。ブレイズは主力メンバー一人がリーダーとなって5つのグループに分けて参加している。唯一参加していない主力メンバーはカナデちゃんだ。回復担当だからというわけでなく、正月は帰省しているかららしい。


「しかし、面白い催しですね。今度やってみましょうかしら」

「えっと、ティニア? どうやってやるの?」

「遊女のみんなにあの格好してもらって出迎えるの。面白そうじゃない?」

「姉さんはどう思う?」

「そうね……作るのが大変そうだし、暑くないかしら?」

「姉さん、そこじゃなくて……」

「確かにそうですね」

「……っえ? 気にするのそこなの?」


お茶を持ってくると何やら楽しそうに話していたので想像してみた。

……基本着物の遊女の方々が羊のコスプレ姿か…………無いな。


「お茶持ってきました」

「「「「ありがとう(ございます)」」」」


さて、のんびり観戦するとしましょうか。





イベントは無事(?)終わり、多くのプレイヤーが一旦ダイブアウトして当選結果を待ちわびているため、CWOの中はいつも以上に静かだ。


俺達は場所を『水仙』に移し、アリアさんとティニアさんが共同で作ってくれた〝おせちもどき″を堪能している。

〝もどき″なのはおせちのことを話してそのイメージで作ってもらったからだ。CWOには栗とか無いからな。


「美味しい」

「ああ、家で食べるのよりもおいしいかも」

「そうなんですか?」

「よかった……」


二人の料理の腕前は想像以上で食べた料理全てが非常においしかった。





「中でもこの伊達巻みたいなのがすごくおいしい」


俺は伊達巻もどきを食べながら感想を言うとなぜか部屋の雰囲気が変わった。


アリアさんは急に顔を伏せ、ティニアさんは不満そうな表情になり、アリサさんは爆笑。

シュリちゃんは俺と同様に雰囲気が変わったことに気づいたのか部屋の中をキョロキョロしている。


「アルケさん、それ本当?」

「え、本当って何が?」

「その料理、美味しいってこと」

「それはもちろん。この中じゃ一番おいしいと思いますよ」


俺のその一言にアリアさんの頭から湯気が出て、ティニアさんは胸を押さえながら横に倒れた。


「ティニア!? まだ傷は浅いわよ!?」


アリサさんや。そのネタどこから仕入れた?




その後も俺がおいしいモノを選択するとティニアさんが落ち込み、アリアさんはずっと俯いたままだった。

シュリちゃんに「何でああなったのかな?」と訊いたら「何でわからないんですか?」と返され、それ以降は誰も何も言わないまま静かな食事となってしまった。


……俺、何したんだろうか?



*おまけ*

ライン「お、当選発表時間だな。まあ、苦労して百枚も集めたんだ。一枚くらいは当たって…………」


その後、現実のある部屋で一人の青年が真っ白に染まった。

次からは本編に戻りますが、三日後に投稿できるかどうかはちょっと微妙です。

なんとか三日後にできるようがんばります。

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