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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第四十四話:いきなりの選択肢

その後もモンスターに何度か遭遇するも俺が引きつけ、他のメンバーが魔法と矢で攻撃。HPが危なくなったらアリアさんがポーションを投げて回復させてくれる。


本来NPCの三人には俺とスワン、リボンの頭上に表示されているHPバーが見えない。

しかしクエスト仕様なのか三人には俺たちがどういう状況なのか感覚的にわかるらしく、言葉に出してお願いすることも無くなったため、順調に探索を進める。


しばらくして川が流れている場所に着いたので一息入れることにする。


「この水は飲んでも問題ないようですね」

「そんなことわかるんですか?」

「コレは経験による勘ですけど」


手を川に入れ水を掬っただけで水質が分かるなんてどういう経験をすれば身に着くのか気になるが、今は飲み水を確保できたことを喜ぼう。

一応ティニアさんがお馴染みの〝生命の甘露″を持ってきてくれているが貴重なMP回復効果もあるので温存しておきたい。


なお、最初にイベント限定フィールドに転移した時のアイテム以外は持ち込めない。

さらにイベント限定フィールドで手に入れたアイテムも元のエリアに戻ったら再度イベント限定フィールドに持ち込むことはできない。装備アイテムだけは例外らしいが。


「さて、次はどっちへ進む?」


ここまではまっすぐ進んでいたが道中遺跡のヒントになりそうな場所はなかった。このまま闇雲に歩いていてもそれは時間の無駄になるだけだ。


「なら、この川に沿って探してみませんか?」


悩む俺たちの中で声を上げたのはリボン。


「遺跡というからには昔人が住んでいた場所ですよね? だったら水がある場所にあると思うんですけど……」

「確かにそうね。四大文明だってそれぞれ川が近くにあったし、いいんじゃないかしら?」


リボンの言うことももっともなので俺たちは川に沿って行動することにする。


しばらく歩くと川を挟んで反対方向に獣道らしき道を発見する。


「さて、行ってみたい人は挙手」


手を上げたのは全員。事前にこういうときは多数決と決めていたのだ。


幸いそこまで深い川ではなかったので歩いて反対側に移動する。

ティニアさん魔法で起こした火で女性陣が服を乾かしているが、俺はその輪には入らない。旧式とはいえフェアリーガードの正式装備。防水機能もしっかりついている。


乾くのを待っている間に俺は獣道付近の草を調べてみる。


「コレは形が違うけど毒草だな。嗅いだ事のある臭いだ」


アリアさんに教えてもらったことの一つ『草の種類仕分けは鼻で行う』。


CWOは無駄にクオリティーが高いので同じ種類の草なのに生えてる場所によって形が異なることもある。そのため、種類を分けるときは嗅いで選別するのが手っ取り早いそうだ。

まあ、【識別】を使えば一発だがMPは節約しないとな。


「アルケさ~ん、終わりました~」


しばし確認していると声が聞こえたのでみんなの元に戻る。


「アリアさん、獣道の入り口付近に生えてる草はほぼ毒草なんだけど、こういう場合この奥に人がいると思いますか?」


アリアさんは俺が指す毒草地帯に近づき、同じように嗅いでいる。


「確かに毒草のようですが、毒の香りが弱いですね。どちらかというとコレは対虫用の毒草みたいです」

「対虫用の毒草なんてあるんですか?」

「あるぞ。殺虫剤の原料のような感じで」


質問をしたスワンも俺の説明で納得したようだ。


「そしてこの毒草はあまり水が多い場所では普通生息しません。おそらく誰かがどこからか持ってきて植えたのでしょう」

「つまり、この先には……」

「遺跡がある、かもしれません」


アリアさんの推測を聞いて再び多数決を取る。今度も全員一致だったので獣道を進むことにする。


「さっきの凄いですね。薬剤師だと皆さんできることなんですか?」

「それはわかりませんが、私の場合父が厳しかったので」

「お父さん普段はのほほんとしてるのに薬になるとうるさいからね」

「そうね。よく言ってました『お前の腕がこの薬を飲んだ人の命を左右する。だからこそ真剣になれ』って」


なかなか凄い人なんだなアリアさんとアリサさんの父親って。いつか会ってみたいものだ。




獣道を進むこと三十分は経過しただろうか、ようやく上空の木々の間に明らかに人工的に作られた物が見えてきた。


「あれが遺跡?」

「多分な。一応周りを警戒してくれ。他の参加者と鉢合わせの上にバトルなんて展開はご免だ」


足音を立てないよう、これまでより慎重に足を進める。


ようやく木々を抜ける辺りで音が聞こえてきた。この音は俺何度聞いたことのある音、すなわち戦闘の音だ。


「どうしますか?」


ティニアさんが杖を構えている。いざとなれば介入する気満々のようだ。


「一応確認しましよう。もしかしたら他のパーティーと遺跡を守るモンスターとの戦闘かもしれませんし」


やたら好戦的なティニアさんに驚きながらも冷静に状況を見極める。こういうときはあくまでも冷静沈着に。俺たちは無理に行動する必要はない。


(折角のアピールチャンスが……)

(気持ちはわかるけどイメージ壊してるだけよ?)

(そんな!?)


後ろが騒がしいが無視してそっと足を進めていく。


木々の隙間から覗いてみるとそこには十人以上のプレイヤーがゴーレムと思われる石の巨人のようなモンスターと戦闘中だった。ゴーレムは巨大な棍棒らしきモノを持っており、それを振り回している。あれは結構痛そうだな。


「くそう! さっさと倒れやがれ!」

「そうよ! 私たちには時間が無いんだから!」

「死ね! この木偶の坊!」


てかおい、なんでここで戦ってるんだよお前ら。ついでに栞ちゃん、いやシオリンよ。口調がヤンキーのそれになってるぞ? 女性だからレディースのほうが正しいのか?


そんなことを思いながらしばらく戦闘を見ているがゴーレムはなかなか倒れない。ラインとエルジュは大技を連発しているが、それでもゴーレムは倒れない。


(そういえば、前にセリムさんから聞いたことがあるぞ)


アトリエに来たばかりの頃のエイミさんから「【錬金術】の歴史について教えてほしい」と訊かれたことがあった。当然ながら“CWOでの錬金術の歴史”については無知にも等しいので、専門家であるセリムさんにお願いしていろいろ聞いたことがある。


そして知ったことの一つに、【錬金術】の派生スキルの存在がある。

その中の一つが【錬生】だ。


この【錬生】は文字通り生きた物体を創るスキルで、有名なのは〝ホムンクルス″すなわちセリムさんのような存在のことだ。


ちなみに、現状このスキルの習得条件は不明。セリムさんから教えてもらったことで公式ページのスキル一覧に加わっているが、果たしてどれだけの人がその存在を知っているのやら。


ゴーレムも元々は【錬生】の産物らしい。

現在ではゴーレムは【土属性魔法】スキルを上達させることで習得できる〔ゴーレムを召喚できる魔法陣〕の方が有名だ。最もプレイヤーの誰かNPCから聞いた話なので明確なアクト名は未だに判明しておらず、「ランク4の魔法ではないか?」と言われている


魔法陣で作ったゴーレムと【錬生】で創ったゴーレムでは異なる点がある。

魔法陣で作ったゴーレムにはHPがあるが、【錬生】で創ったゴーレムは創る際に核にしたモノを破壊する必要がある。要はブローケンヴァインの目玉と同じだ。


そして【上級錬金術】を習得した俺にはその場所を【識別】で見ることができる。

また【錬金術】が無くても【看破】なら違和感には気づけるようだ。



というわけで【識別】した結果、やはりあのゴーレムには核があった。その場所は頭部。


なんとも分かりやすい位置だが、ゴーレム自体が大きいのでなかなか頭部にダメージが与えられていないようだ。さらに一番攻撃力の高いと思われるラインの攻撃が足に集中している。あれではいくらやっても倒せないだろう。


エルジュや遠距離攻撃が可能なプレイヤーの中には頭部を攻撃している人もいるが、残念ながら現在戦っているメンバーの大半がラインと同じく近接攻撃型だ。

もしかしたらブレイズのメンバーなのかもしれないがメインのメンバー以外顔覚えてない。


「どうかしましたか?」


長いこと戻ってこなかったせいか声に振り向くと全員がすぐ後ろにいた。


そこで現状ついて話してみんなの意見を問う。


「エルジュちゃんたちなら助けたいんですが……」

「別行動と言ってしまったので助けにくいですね」


二人の意見には俺も賛成だ。俺がここで様子を見続けていただけなのもそれが大きい。

アリアさん達も俺たちの事情を知って困惑した表情を見せている。


さて、本当にどうしよう?

ではまた三日後に。

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