第四十一話:クエスト発表
更新するだけで精一杯の現状のため、誤字脱字を直したいのにその余裕が無い。
感想も返事をしたいのに。
本当に申し訳ありません。
「やったぞー!」
「よくやった!」
討伐に成功し歓喜の声を上げる獣人族プレイヤーたち。
「てか、俺たちいらなかったんじゃね?」
「まあ、いいじゃん。良いもん見れたし」
「獣化だっけ? 獣人族も結構やるじゃないか」
一方戦闘に参加することなくほぼ感染しただけのエルフ族プレイヤーたち。
明暗とまではいかないが温度差を感じる各陣営をよそに、数人の獣人族NPCたちはブローケンヴァインが塞いでいた道を急いで駆けていく。
そういえばファイさんが「『時間が無い』と獣人族NPCの代表が言っていた」と話していたな。てっきり付近のレッドベリーのことだと思っていたのだが、実はその先にこそ目的の物があるということか。
「お疲れさまでした」
そんなことを考えているとファイさんと獣人族NPCの男性が近付いてきた。
「お前さんの早さには驚いた。俺も早さには自信があるが、それ以上だったよ」
見た目ヒョウのような獣人族NPCは見たままのようなスペックのようだな。しかしヒョウよりも早いってことは無いだろう。もしそうならさらにランクアップしたらどうなるんことやら。あ、スキル検証掲示板を見ればわかるかな?
「さて、これで依頼は達成でいいのかな?」
「ああ、十分だ。報酬は街に戻ってから渡そう」
他のプレイヤーもそう言われたのか、もしくはすでに知っていたのか一様に街へと歩いている。
ファイさんが他の獣人族プレイヤーに呼ばれてそっちに行ったのを見て、俺はそっとヒョウの獣人族NPCに問いただした。
「それで、この先には何が隠されているんだ?」
街に戻り、それぞれコルやらアイテムやらをもらっている。戦闘には参加しなかったが、急な申し出に駆けつけてくれたということでエルフ族プレイヤーにもわずかだがコルを与えられていた。
俺もセルをもらったが、討伐に一番貢献したということで「何か他に欲しい物は無いか?」と訊かれたので、この付近では強力なモンスターの素材や特殊な木の実をいくつかもらった。これでさらに【錬金術】の研究ができる。
最後に獣人族NPCの代表が皆に礼を言って討伐作戦は幕を閉じた。
一旦ダイブアウトした俺は複数の掲示板を見ていた。その多くがワイルドストリート関連だ。
「やっぱり、アップデートされた場所と今回の場所は関連性が無い」
実はブローケンヴァインが塞いでいた先にはアルバ―ロのような隠し里があるのではないかと考えたプレイヤーは多く、討伐作戦後あの先へ進んだプレイヤーが数名いたのだが、その先は木々が生い茂るだけで行き止まりだったらしい。
その後調べても何も発見できず、さらに【識別】のランクアップスキルである【看破】でもなにも見つからなかったので、捜索はそこで打ち切られた。
しかし、俺は確かにあの先に進んでいく獣人族NPCを見ている。そして彼らは戻ってこなかった。ここから推測できるのはあの聖樹に至る道のように生い茂る木々のどれかがカモフラージュである可能性だ。
実際、あのカモフラージュは【識別】を使っても判明できなかった。【看破】ならわからないが、おそらく無理だろう。あのカモフラージュは〝フェアリーサティファ″があってこそ突破できたのだから。
あくまで推測でしかないが、俺が問いただした時にヒョウの獣人族NPCは明らかに俺を警戒した目を見せた。アレは間違いなく俺を疑っている目だ。
となれば、今あそこに近づくのは危険だろう。
「まあ、俺は妖精族だし、関係ないよな」
掲示板をすべて閉じ、俺は眠りについた。
それから数日は特に何も無く、おだやかな日々だった。
ブローケンヴァイン討伐により新たに〝ブローケンヴァインの核″を獲得したが、その効果は【増殖(蔓)】。
【増殖】は大型植物系モンスターの核に共通するスキルで、その後ろの()によって能力が変化する。
今回俺が獲得した【増殖(蔓)】は武器の伸縮力を高めるモノで、主に鞭系の武器の強化に使用されている。鞭系は使わないのでブレイズに赴き、アーシェにプレゼントした。向こうは「お礼したい」と言ってくれたが特に何も思いつかなかったので「欲しいモノができた時に協力してくれればいい」ということにしてもらった。
その際、ブレイズの男性メンバーが青ざめた顔をしていたが俺には関係ないと無視した。まあ、がんばってくれたまえ。
変化といえばそれくらいだった平凡な時間が壊れたのはある日の朝のことだった。まあ、『壊れた』は大げさだが。
「とうとうクエストが発表されたな!」
「気持ちは分かるが落ち着け」
教室に着くなり俺に声をかけてきた努が声を上げる。そう、ついにスキル枠増加クエスト、いやイベントといってもいいそれが発表された。
スキル枠増加クエスト、その名は『トレジャーハント』。
名前から察する通り、特殊なフィールドで行う宝探しだ。フィールドはジャングルをモチーフにしたいかにもな場所だが、単に宝箱を探せばいいものではない。
実はそのフィールドには遺跡が複数存在し、それぞれ試練が隠されている。それを突破できればスキル枠増加アイテムが隠されているフィールドへ転移するための手段のヒントを得ることができ、そのヒントを集めて辿り着いた先に待つ最後の試練を突破すればアイテムGETとなり、そのアイテムこそ〝スキル枠増強剤″だ。
……何度も思うが、運営のネーミングセンスは大丈夫なのか?
「というわけで、いっしょにやろうぜ!」
「メリットは?」
「戦闘なら俺が、頭脳的な謎ならお前が解く。お互いに利益しかないだろ?」
俺もスキル枠の増加はしたいし、戦闘系の試練なら俺は苦戦するだろう。その考えなら努の言うようにどちらにも利点がある。
しかし、そこには一つの落とし穴があった。
「そのサバイバル期間中に期末試験があるが、そっちは大丈夫なのか?」
「ほわっつ?」
まあ、想像どおりだな。中間テストもこんな感じだったからな。
昼休み、いつもの中庭で一人落ち込む努。そこに新たな同類が現れた。
「やあ、いらっしゃい二人とも」
「こんにちは努さん」
「良い天気ですよね」
「どうしますか、あれ?」
「気にしないでいいよ」
「いいんでしょうか? なんだか雨が降っているような雰囲気ですが……」
心配そうに見つめる世良ちゃんだが、あえてそこに混ざろうとはしないだろう。
すでに分かっていることだが、努は頭が悪い。ついでに空も良くはない。
「ところで栞ちゃんはどれくらい?」
「え~と」
「この間のテストで唯一補習を受けるレベルです」
「ちなみにどんなテスト?」
「先週行った授業の復習です。なのでとても簡単でした」
「簡単じゃなかったよ~」
話から推測すると心ちゃんは優等生、世良ちゃんは普通もしくは少し下くらい、そして栞ちゃんは絶望的。こんな感じかな?
試験の範囲の広さは中間試験以降なのでそこまで広いわけではなく、今からでも十分間に合うだろう。
しかし、この学校の期末は生徒達から『天国と地獄の境目』とか『楽園に辿り着く最後の難関』とか『閻魔様の道標』など様々な異名を持っている。
その理由は期末試験において赤点を取った生徒に与えられる補習の存在だ。
中間試験にも補修があるが、そこでの補習は再度試験を受けるだけで場合によっては一日で終わる。
しかし、期末試験の補習は“ある一定の点数”をとれるまで拘束される。その点数は教科ごとに異なるが、基本平均点がボーダーと言われている。
つまり、あの三人は補習を合格しない限りCWOをプレイできないのだ。あ、補習確定かつ平均点を獲得するのも難しいことは言うまでもない。
「よし、クエスト開始から補習まで時間がある! その間に全ての試練を突破しよう!」
「そうです! それならばいくら補習があっても問題ありません!」
「さすがです、先輩!」
「そんなに早く終わるんですか?」
「さあ? でも報酬がスキル枠増加なんだからそう簡単にはクリアできないと思うよ?」
いよいよ変な笑いまでしてる三人を見つめる俺達。
「まあ、俺たちは俺たちのペースで進めればいいよ」
「でしたら、私たち三人で今回のイベントに参加しませんか?」
「あ、それは楽しそうです」
断る理由は無いのでその提案を承諾した。
その後、三人から「何で協力してくれないの!?」と怒鳴られたが「だったら勉強教えてやろうか? 向こうでも」と告げると「さあ、クエストの準備を始めよう!」「「おう!」」と勝手に団結して行った。
それを見つめる心ちゃんと世良ちゃんは苦笑いを浮かべていた。
さて、クエストに参加することになったはいいが、もう一つクエストにはある要素が組み込まれていた。
それはクエストには三つの形式で参加できるということ。
一つ目はソロ。これは試験ごとにヒントを得られるようだが全てを一人でしなければならない。
なお、今回のクエストには専用の掲示板があり、その掲示板には試練に関連する単語は一切載せることができないようになっているため、ヒントの流出はありえない。それ以外の情報、例えば『~に遺跡がある』とか『~に○○というアイテムがある』などはOKらしい。
二つ目はパーティー。ソロと違いヒントは無い。『三人寄れば文殊の知恵』ではないが、人数が多い分誰かしらが試練を突破できればパーティーメンバー全員が突破になる。まあ、こういう大規模イベントにソロで参加する人はそう多くなく、大抵がパーティーでの参加となるだろう。
そして三つ目が混同パーティー。なぜ“混同”と名がつくかというと、なんとこのパーティーにはNPCを入れることができるのだ。
入れられる条件は全部で二つ。
一つは好感度が高いこと。ある意味で当然のことだ。というより、好感度システムはこのために作られたものではないかと噂されている。
二つ目は相手が承諾してくれること。本来住んでいるエリアではない外のエリアに出るため、キッチリ事情を説明して理解を得る必要がある。これも好感度の高さが関係するが、その人の設定にも関係してくる。例を挙げると『いつも店番しているNPCが店を離れることができるわけない』という感じだ。
なお、連れていけるNPCは最大三人までで、戦闘職でも生産職でもどちらでも構わない。
この情報が提示された時、掲示板が大いに盛り上がった。中でも『これで念願のデートができるぜ!』と誰かが書きこんだときは掲示板が一気に燃えたらしい。
誘いに成功したのかはその後の報告が無いので定かではないが。
「さて、心ちゃんと世良ちゃんには承諾を得てるし、俺も誘ってみますか」
情報を見て思いついた三人の顔を脳裏に浮かべ、俺はCWOにダイブした。
さて、浮かんだ三人とはだれのことなのか?
その答えは三日後の次話で。
アルケ「いや、バレバレだろ?」
作者「(T_T)」




