第三十七話:フェアリーガードの隊長たち
先に言っておきます。今回は各部隊の隊長&副隊長の自己紹介、そして各部隊の特徴だけでの説明話です。
ミシェルの案内で着いた部屋は各部隊の隊長と副隊長が集まり会議や経過報告をする場のようで部屋の中央に円形のテーブルが置かれていた。
部屋に入るとすでに椅子に座っている人物が5人と椅子の側に立っている人が5人。
「よく来てくれました、アルケ様。よければそちらの席に座ってください」
俺から見て真正面、すなわち部屋の一番奥に座る男性から話しかけられたので、指示通り入り口に一番近い椅子に座る。
その間にミシェルは誰も側に立っていなかった人の側に、エイミさんは俺が座った椅子以外で唯一開いていた椅子に座った。
つまり、そこがいつも使用している席なのだろう。
「さて、本日は忙しい中集まってくれて感謝します」
「別にかまわないでしょう。私も例の攻撃アイテムを作り続けている者と一度会ってみたいと思っていましたし」
最初に声をかけた男性を追うように話を続けたのはミシェルの前の男性。つまり、ミシェルが所属する三番隊の隊長さんか。背中に背負ってるランスが武器なのか?
「確かに、私も一度会ってみたいと思ったが、以前制作者と会うのはその者と直接の面識のある三番隊副隊長ミシェルだけだったはずではなかったのか?」
次に言葉を発したのは三番隊隊長さんの対面に座る男性。しかし、それだけでは彼が何番隊なのかがわからない。せめてその人の前に「~番隊」みたいな物でも置いてくれればよかったのに。
「そのことについてですが、本日欠席の総合隊長から言伝を預かっています」
最初の男性が懐から手紙サイズの紙を取り出した。そういえば、総合隊長いないな。今まで気づかなかった。
「『まず、忙しい中集まってくれたことに感謝する。そして集合を命じておきながらその私がここに出席できないことを詫びる。詳しくは話せないが、第二陣と言えばここにいる者たちには伝わるだろう』」
第二陣? まさか新しくCWOにダイブしてきたプレイヤーのことなのか? いや、新しい戦力の可能性もあるから決めつけはよくないか。
「『本題だが、今回アルケ様を隊長達と会わせることにしたのは第六番隊隊長エイミが関係している』」
「へ?」
え? なんでエイミさんが驚いているんだ?
「『実はこのたび、エイミ隊長がアルケ様の家に嫁入りすることになり……』」
「ちょっと待ってください! なんですかそれは!?」
顔を真っ赤にして怒鳴るエイミさん。一方俺は突然の事態に驚き、むしろ何も反応することができなかった。
「『ちなみに、場を和ますための冗談である』」
「(ブチッ)」
あ、なんか聞いたことのあるような音が聞こえた。思わずどこかにフライパンが無いか探してしまう。
「『場が和んだところで本題だが、最近我々が所持している以外で攻撃アイテムを所持している者がいると言う情報が入ってきている』
何!?
「『アルケ殿がそれを知っているかはわからないが、多くのスプライトの住民から“樹海に置いて他の種族、すなわち外からの客人と思われる者たちがフレイムボムを使用している場面を目撃した”と情報が上がっている』」
話を聞いて納得する。おそらくルーチェでフレイムボムを買って行ったプレイヤーたちだろう。思わず俺以外にも攻撃アイテムを販売しているプレイヤーがいるのかと思った。
「『最初はわずかな人数だったが、現状すでにスプライトの住民ほぼ全員がこのことを知っている。そこで、もうアルケ殿の存在を隠す必要は無いと思い、これまで避けていた我々との直接の面会を試み、今後の連携をより確かなモノにしたいと考え、今日全員に集まってもらった』」
総合隊長の意見はよくわかる。
というより、何度かルーチェの販売整列でフェアリーガードの隊員借りてるから、どちらかというと「今さら」とか「ようやく」みたいな感じだな。
「『後は一番隊隊長に委ねる』……というわけで、本来なら総合隊長がまとめるのですが、今回は私、一番隊隊長フィンが主導となって進めさせていただきます。皆様、よろしいですか?」
座っている隊長全員が同意する。そういえば、隊長達の中で女性はエイミさんだけなんだな。副隊長なら三人ほどいるみたいだけど。
「では、まずは自己紹介から始めましょうか。わかりやすく部隊番号順でよろしいですか?」
対面の男性、一番隊隊長さんが俺見ながら話していたので「ええ、お願いします」と返答する。
「ありがとうございます。では、改めて。フェアリーガード一番隊隊長を務めておりますフィンと申します。後ろに立つのが副隊長のララです」
「ララと申します。お会いできて光栄です」
二人とも一礼してきたので同じように頭を下げ、ついでに一番隊について話してくれた。
一番隊は主にフェアリーガードが主導で行う儀礼や式典に置いて要人を警護するための部隊で、スプライトの警備や樹海の探索などは行わない。いわゆるSPみたいな感じだ。
最後にまたしても一礼して右隣に座る男性に目を向ける。
「では、次は私ですね。二番隊隊長の二番隊隊長のケーファです。見てわかるようにランスを使います。後ろに立つのが私の補佐をしてくれているミリィです」
「ミリィです」
「このようにあまり性格を表にしないので、そういう者だと思ってください」
なんだがこれだけでもいろんなタイプの人がフェアリーガードに入ると分かるな。
ちなみに、二番隊は防衛を主にしており、全員が攻撃よりも守りに重点を置いているらしい。そういう意味ではランスは確かに最適な武器と言えるな。
「次は私だな。三番隊隊長リオンだ。私もケーファ同様、妖精族の中では珍しい大剣の使い手だ。後ろに立つミシェルについてはもはや説明は不要だろう」
三番隊は主にスプライトの警護を担当している、まさに警備隊だ。また事件や事故の対処など警察に近い仕事もしており、時に事件を起こした犯人に対処するためや事故の際の陣面救助に備えて攻撃面により力を入れている部隊でもある。
まさに守りの二番隊と攻めの三番隊というところだろう。
「次は我らだな。四番隊隊長レインと副隊長のセラだ。我々は基本表舞台に立たず、裏方に特化している」
「隊長の話に補足させていただくと私たちはフェアリーガードの皆様の傷を癒したり、有事の際に皆様に様々な付与の力を与えたりしている部隊です」
話を聞くと、つまり四番隊は回復や補助的な能力の集団ということか。一見地味に見えるけど、彼らのような役割が部隊としていると分かると戦いに対しての安心感が得られる、結構重要な部隊だな。
ブレイズのカナデちゃんも同じような立場だったな。できれば交流する機会を設けてお互いに能力の向上とかできないだろうか?
「次は私たちですね。五番隊隊長のセリンと申します。四番隊隊長のレインとは兄弟になります。私の方が弟です」
「そして副隊長のルークだ。我々は守りに特化した部隊だ」
よく見れば五番隊の二人は盾を背負っている。それだけで彼らがどういう役割かよくわかるな。
しかし、セリンさん。見た目といい、名前といい、一目見ただけでは女性に見えるぞ。
「そういえば、アルケさんは珍しい盾を持っているそうですね。今度ぜひ拝見させてください」
「ええ、構いませんよ。その代わり、【盾】についていろいろ指導してくれませんか?」
「その程度でしたら、喜んで」
よし、これであまり鍛えられていない【盾】が鍛えられる! スキル枠を増やすクエストのために手数は増やしておかないとな。
「最後になりますが、六番隊隊長のエイミです。こっちは副隊長のミスト。以前にも説明したけど、私たちは魔法特化部隊です」
「補足させてもらうと、正しくは魔法攻撃特化部隊です。一応防御魔法も使えますが、守りに力を入れている五番隊にはわずかに劣ります」
「ホント、いちいち細かいですね」
「隊長がそういう人なので」
魔法特化部隊である六番隊。この部隊についてはエイミさんからいろいろ聞いているので問題ない。
ここまでの話を要約すると、一番隊は式典・二番隊は守り重視・三番隊は攻撃重視かつスプライトの治安維持・四番隊は支援特化・五番隊は防御特化・六番隊は魔法特化となる。
正直六番も部隊必要なのかといつも疑問に思っていたが、これはこれでバランスが取れていたんだな。
「では、自己紹介はこれくらいにして本題のアドレスの交換とアルケ様へのフェアリーガードへの依頼を伝えます」
へ? 依頼?
説明話だけで終わってつまらないと思う人もいると思うので、次話は明日(11月20日)に投稿します。




