表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
106/229

第二十八話:突然の告白

昨日から3話連続投稿実施中。これが第3話目です。

さて、魔武具を創れるインゴットが公になったことでさらに【錬金術】の力が広まった。まあ、あの時にいた面々にだけだけど。


しかしその効果はすさまじく、あれからブレイズ・ヴァルキリー・セラフィムのトップギルド三つが合同で第3エリア解放を掲げた。

これまでギルドが合同で何かをしたのは第1エリアボス攻略戦だけだったため、この宣言は大いに盛り上がっている。特に、一部は犬猿の仲とまで言われていたヴァルキリーとセラフィムが協力する事実はプレイヤーに大きな話題を呼んだ。


なお、小競り合いを続けていたギルドメンバーは「ヴァルキリー/セラフィムに負けてたまるものか!」と言う風に燃える組と「一緒になんてできるか!」と言ってギルドを脱退する組に別れた。

カリンさんもアポリアさんも残念そうだが無理強いはできず、彼らには謝るとともに少しだけ情報を話したらしい。といっても「第3エリアに行けば魔武器が手に入るから攻略を進めることにした」としか言ってない。それだけではシュリちゃんの魔武具情報まではたどりつけないだろう。第3エリアでは魔武具が買えるのはβ版ですでに判明しているし。




そんな中、俺は調合を繰り返していた。


PVPがあったせいで中断していたが、いまだにブローケンヴァインは討伐されてない。

実はファイさんたちプレイヤーもPVPを観戦に来ていた。その目的は技術を盗むこと。


ブローケンヴァインを倒すには襲い来る蔓を何とかしながら唯一HPを削れると思われる目を攻撃しなければならない。そこで、その方法は無いかとPVPに出場するプレイヤーを見て、その技術を有効活用しようと考えたらしい。


なお成果はあったが、今のファイさんたちでは真似するのは難しいらしく、模倣するのかどうかは検討中とのこと。


できればその結論が出るまでに今の調合を完成させておきたい。


ちなみに、〝錬金術師の杖″はしばらく断念。そのかわり、老人の店にセリムさんを連れて行き、杖を一本プレゼントした。しばらくはこれで十分のようだ。





「やっぱり無理かな?」


現在挑戦しているのは〝ポイズンボトル″の調合。セリムさんのヒントからおそらくブローケンヴァインは毒属性攻撃に弱い、もしくは【毒】になりやすいのではと考えている。しかし、これはあくまで予想であるためファイさんにも話してない。

そのため、その検証には俺自身が【毒】に出来るアイテムを創る必要があるのだが、やはり〝ガラス砂″が無いと無理なのだろうか。


俺は失敗し、黒焦げの何かになったそれを廃棄物用の〝聖樹の籠″に入れる。〝聖樹の籠″をこんなことに使っていいのかと思うが、定期的に中のモノは処分しているので問題ない。

どう処分しているかは知らない。だって俺がしてるわけじゃないから。


「大分溜まったみたいだな。それじゃ、連絡しますか」


廃棄物を入れた〝聖樹の籠″の中身を確認し、コミュを送る。


相手先から連絡があり、しばらくすると回収に来るとのこと。


そしてやってきたのは鎧を着た妖精族のNPC、ぶっちゃければミシェルだ。


「よう、いつもすまないな」

「こっちは助かってるからいいよ」


以前失敗して使いものにならないコレをどうしようか考えてるとき、たまたま訪れたミシェルが「いらないならもらえるか?」と言ったので、それ以降ある程度溜まると連絡して持って行ってもらっている。


「では、失礼する。あとで〝スノープリズム″の追加注文書を送る」

「なあ」

「うん? どうした?」


サラっと言った〝スノープリズム″の件も気になるが、今まで気になっていたことを解消しようと思った。


「前から疑問に思っていたんだが、それ何に使うんだ?」

「ん? 言ってなかったか?」

「聞いたことない」


「それは失礼した」と言って笑うミシェル。くそう、笑顔ですら男らしく見えるのはずるいぞ。俺は笑うとさらに女にしか見えないなんていわれるのに。特にここでは。


「なら、ついてくるか?」

「どこに?」

「我らの訓練場だ」




一応「ちょっと用事で外出します」とセリムさん宛に伝言を残しておき、俺はミシェルについていくことにした。


辿り着いたのは俺も何度かお世話になったフェアーガード本部、ではなくその横の建物。見た目ここも本部のように見えるが、中は床が無く飾りとかも一切ない。

イメージとしてわかりやすいのは体育館の中にグラウンド、もしくは校庭がある感じだ。


そこでは互いに剣を持って戦っている者たちや魔法を撃ちあいしている者たち、負傷した者を介護している者たちなど多くのフェアリーガード隊員たちが訓練をしていた。


「あれ、ミシェル副隊長じゃないですか?」


俺たちに気づいた魔法組にいた女性の隊員が近付いてきた。隊員にしては鎧の質が違って見えるからもしかしたら同じ副隊長かな?


「珍しいなエイミ隊長。あなたが訓練場に来ているとは」

「最近入隊した新人の様子を見に来たのよ。近頃は例のアイテムのおかげで入隊希望者が増えたけど、使えないやつが多いのが厄介よね」


フェアリーガードは警備隊だ。普段はスプライトのいざこざを解決するために存在しているが、その最大に任務は樹海のモンスターの駆除だ。当然死ぬ可能性もあるので入隊希望者はそれほど多いわけではない。


しかし、例の魔族襲撃事件により新戦力〝フレイムボム″が周知となり、それが新たな注目を集めているらしい。


そんな話を聞いている俺は気が気でなかった。


(あれ? これもしかして『俺やっちゃったぜ♪』的なやつか?)


俺としてはその程度の考えだったのが、ミシェルは全く違うことを考えていた。


(しまった! 自分が死人を増やしたのかとアルケにあらぬ誤解を与えてしまっている!)


全くの勘違いなのだが、ミシェルは幼いころからフェアリーガードに憧れており、その本分がモンスター駆除であることに何の疑問も持っていないため、エイミの言葉を聞いて『使えないやつ』=『使えないから死ぬ運命にある奴』と考えていると思ってしまったそうだd。


「アルケ! 大丈夫だ! ここにいる隊員は誰ひとりとして死なせやしない!」

「……は?」

「何も心配ない! 例え魔族が攻めてこようとも、このミシェルが守ると剣に誓おう!」


腰からサーベルを抜き、それを天に掲げるミシェル。その仕草にこの場にいた女性隊員は顔を赤く染め、男性隊員は憧れを抱いた。





その幻想はすぐにぶち壊された。


「なに訳の分からないこと言ってるのよ!」

「ぐはー!」


エイミは担いでいた杖を抜き、それでミシェルを打ち飛ばした。何故か俺の脳内で『カキーン』という音が響いたが、気のせいだろうと気にしなかった。


しかし、地に着くまでに意識を取り戻したミシェルは剣のアクト〔三日月〕を地に放ち、その衝撃で落下速度を落とした。何とも無駄なアクトの使い方である。


ちなみに〔三日月〕は文字通り三日月形の斬撃を正面に飛ばすアクトで、【剣】を中級まで上げ、第三段階になる少し手前まで上げることで会得できる。


「なにするか!?」

「いきなりわけのわからないこと言ったのはそっちでしょ!」


そして始まるマジ喧嘩。

おい隊長さん、その火球大きすぎないか? ホントに死人が出ますよ?

そしてミシェル、お前何余裕でその火球を一閃で真っ二つにしてやがる。って今度は連続かよ。お互い遠慮なんて一切してないな、なんだコレ?

しかし、周りの隊員たちは誰も止めない。


「あの……」

「ああ、放っといていいよ。いつものことだから」

「そうなんですか?」

「ええ。早くくっつけばいいのに」


笑顔で話す男女の隊員さん。というかあの二人そういう関係なのか?


「すくなくともエイミ隊長はミシェル副隊長のこと好きだよね」

「それは間違いない」

「もしかして、さっきの宣言を見てミシェル隊長に好意を抱いた新人女性隊員への牽制なんじゃないの?」

「「「ああ~ありうる」」」


おいミシェル。なにリア充満喫してやがる。いっそのこと強化型〝フレイムボム″、いや〝グレンダイム″で花火でもプレゼントしようか? 当然爆心地はお前がいる場所だ。




さて、フェアリーガードとしては恒例の夫婦漫才(本人たちは了承していない)は女性隊長さんのホームランで幕を占めた。

というか、ミシェル首が天井に突き刺さった状態でぶらさがったままだけど大丈夫か?


「大変の見苦しいところをお見せしました」


一方、女性隊長さんは顔を赤く染めて俺に謝罪している。全体的にウェーブがかかった煌めくような紅い髪、ミシェルとほぼ同じくらいの高身長、そしてナイスバディ。

認めよう、この人絶対ラインと会わせたらだめだ。絶対ホームランされる。

……オチと言う意味で。

そしてカナデちゃんとシュリちゃんにも会わせたらだめだ。

…………身体的特徴という意味で。


最近知ったんだが、実は身長と体型はリアルに戻った時に違和感を与えないため、前後5㎝しか変更できない仕組みになっている。つまり、カナデちゃんはともかく、シュリちゃんはリアルでもあの体型に近いということなのだ。高校生なのに。


そのシュリちゃんが見た目20代前半にしか見えないこの人と会った瞬間、あまりの絶望のあまり倒れるかもしれない。それくらい、目の前の女性隊長さんはすごかった。


本気で花火プレゼントしようかな? と思った俺は悪くない。だって男の子だもん。


「そういえば名乗っておりませんでしたね。フェアリーガード六番隊隊長のエイミと申します」

「ご丁寧に。アルケと申します」


本当は錬金術師も付けたいのだが、まだまだ未熟なので名乗ることができない。そういえば一人前ってどれくらいの基準なんだ? 今度セリムさんにでも訊いてみよう。


「アルケ、さん?」


あれ? 隊長陣には名前は既に知れ渡っていると聞いていたけど?


「あの~、もしかして例のアレを創った方ですか?」

「一応、その通りです」


するとエイミ隊長は俺の両手を己の両手で取り、包みこんだ。それはまるで祈る際のポーズのようだった。


「お願いがあります! 私をもらってください!」


……………………はい?

明日からは通常通りの更新に戻ります。


もう台風なんて嫌いだー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ