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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第二十七話:宣伝?

本日は3話連続投稿。最新から来られた方は1話お戻りください。

俺が物体化させたモノは両手を広げてかかえるほどの長方形の物体。


簡単に言えばインゴットだ。しかも一番有名な鉄のインゴット。


他の面々からすればただの鉄のインゴットにしか見えないだろう。ただ一人を除いて。


「ア、アルケさん!?」


その人物、シュリちゃんは俺が出したインゴットに大層驚いてくれた。

そう、このインゴットは【錬金術】で調合したインゴットだ。


「ダメですよ! ここで出しちゃ!」


このインゴットがもたらす効果を一番理解しているシュリちゃんが直ちにウィンドウに戻すよう伝えてくれるが、それは言い方を変えれば『このインゴットは普通じゃない』と証明しているようなものだ。


「っで、これなんなの?」


一番近くにいたエルジュがここにいる方々が一番知りたいであろうことを訊いてくる。


俺はそれに応える前に、もう一つあるモノを取り出した。

それはウィンドウではなく、装備していたアイテム、〝翡翠の盾″だ。


「……」


シュリちゃんが絶望的な目をしている。この盾を出した時点で諦めたのだろう。

……だが安心してほしい。シュリちゃんを酷使させるようなことにはしないのだから。


「誰か鑑定系スキルを持ってないか?」

「それなら私がやろう。私は盾職だから【レンタル】してくれるだけでいい」

「あ、わかりました」


いけない。さすがに他のギルドメンバーがいるところで自分が習得しているスキルを暴露できるわけなかったな。反省しないと。


「それじゃ、お貸しします」


俺は〝翡翠の盾″を【レンタル】状態にしてヴィノさんに渡す。【レンタル】は装備したアイテムを他人に貸すことのできる機能で、これにより持ち逃げされるのを防いでいる。

万が一持ち逃げされた場合は【レンタル】の下にある【強制回収】を押せば本来の持ち主に返ってくる。しかし、【強制回収】は所有者とアイテムが近くにいる時しか発動しないため、戦闘が終われば必ず返すことになってる。

もしダイブアウトや死亡により【強制回収】ができず、相手も連絡に応じない場合は運営に連絡すると対象のプレイヤーに警告文が連絡され、従わない場合は最悪アカウント剥奪もありうるらしい。


なお、借りた側がそのアイテムを売っていた場合はそのプレイヤーが問答無用でアカウントが剥奪され、そのプレイヤーが持っていたアイテムが全て貸したプレイヤーに与えられることになってる。


話が脱線したが、ヴィノさんはさっそく自身が持ってる盾を装備から外した。【レンタル】状態でも装備ができるので〝翡翠の盾″の性能にも気づくだろう。


「な、なんで!?」


想像通りの反応をしているヴィノさんはアポリアさんから話しかけられていることすら気づかないほど〝翡翠の盾″の性能を凝視している。


その様子を見て楽しむ趣味は持ち合わせてないので、俺は【レンタル】状態から【強制回収】を発動させ、〝翡翠の盾″を持ち直す。そのため急に画面が消えたことでヴィノさんも現実へと帰ってきた。


「アルケと言ったな。それは……何なんだ?」


恐る恐る訊いてくるヴィノさん。付属効果がある盾はヴィノさんの〝盗賊の盾″のように存在することはすでに周知の事実だが、俺の〝翡翠の盾″には【魔力抵抗・小】と【防御力向上・小】がある。

現状、追加効果が2つ以上ある魔武具の情報はまだ無いからおそらくこれが初めてのはず。

そんなモノを見せられれば誰でもこうなるだろう。


「製造方法は秘密だ。俺以外にはシュリちゃんが知ってるが、さすがにシュリちゃんに無理矢理聞くつもりはないだろう?」


ヴィノさんはシュリちゃんに視線を向け、向けられたシュリちゃんはビクッと背筋を伸ばして近くにいたラインの背に隠れてしまう。おい、ニヤけるな。


「それもそうだが、せめてヒントくらいは! この技術を眠らせておくわけにはいかない!」

「悪いがそれもだめだ。しかし、朗報は与えてやる」


俺の言葉に疑惑と期待の眼差しを向けるヴィノさん。


「エリア3が解放されたらシュリちゃんには販売してもいいと伝えてある。シュリちゃんもそれで了承してもらってる」


再びヴィノさんの視線がシュリちゃんに向けられる。それはいいのだが、少し目が血走ってませんか? シュリちゃんがコクコク高速で頭を動かしながら震えているのですが。


「あの~、結局どういうことなんですか~?」


この空気をぶち壊すようなミオさんののほほんとした声。その声を聴いて我に返ったヴィノさんが俺の〝翡翠の盾″の効果、つまり【魔力抵抗・小】と【防御力向上・小】のことを話す。

当然、全員の目が俺に向けられることになる。


「お前、CWOのバランス壊す気か?」

「まさか。だからこそ誰にも話してないだろ?」


それにこれは【錬金術】を持ってるプレイヤーと【鍛冶】を持ってるプレイヤーがいれば出来ることだからおそらくエリア3が解放される前にだれかが気づくと思っている。


実際、第二陣と呼ばれている新しくCWOにダイブしてきたプレイヤーの中には【錬金術】をメインとしているプレイヤーも多く存在するし……


(あれ? そういえば他のプレイヤーはどうやって〝職人の心得″を入手するんだ?)


ふと疑問に思ったこと。

〝~教本″系はLvを上げれば手に入ることは俺と例のIDのプレイヤーが証明している


しかし、インゴット系のレシピが載っている〝職人の心得″はフェアリーガードの書庫から見つけられ、もらったものだ。

となれば、他にも〝職人の心得″を入手できる方法があるはず。


突如考え込んだ俺を不思議そうに見ている面々だが、俺はそれに全く気づかない。


「なあ、ライン。例えばだけど、特定のアイテムを入手する方法として、武器の創作・敵からのドロップ以外にあるか?」

「いきなり考え出してどうしたのかと思ったら……」

「あるのか?」


いつもと違う雰囲気を察したのか、ラインの表情も真剣になる。


「そりゃ、他で一般的なのはクエスト報酬じゃないか?」


「なあ?」と言って周りの面々にも確認するラインとそれに頷く面々。しかし、俺の意識はすでに思考の中にいた。


(クエスト報酬! その手があったか。しかし、これまで【錬金術】関連のクエストなんて……)


そこで思い出すのはこのPVPが行われた理由。そう、アップデート。


「ライン、もう一つ質問だ。アップデートによってクエストも増えたのか?」

「え? いや、アップデートによる追加は無かったと思うぞ」

「そうか」


期待外れだが、しょうがない。となれば、特定の場所ということ……


「でも、第2エリアが解放されたことによって新規クエストが発生しているぞ?」

「本当か!?」


それは盲点だった! 言われてみれば新しいエリアが解放されると言うことはいける場所も増えると言うこと、つまりそこで出来るクエストが追加されているということじゃないか。


「ライン! 第2エリアのクエスト掲示板は第1エリアと同じ噴水近くか!?」

「ちょっと落ち着け! 一体何を焦ってるんだよ?」


っ!? 落ち着け俺。まだ仮定じゃないか。ラインにも言われてたが何を焦ってるんだ俺は?


「すまない、もう大丈夫だ」

「本当か? しっかりしてくれよ」

「ああ、大丈夫だ」


第2エリアのクエストか。今度見に行ってみよう。


「それで、こっちの質問にも答えてもらおうか?」

「は? 質問?」

「……もしかしたら思ったが、やっぱ聞こえてなかったのか。例の盾のことだよ」

「ああ、あれか。第3エリアからは魔武具がNPC店でも買えるようになるんだろ? その時期になれば他にも魔武具は出てると思ったからそのときまで待ってもらうよう言ったんだよ」

「なるほど。現状はお前とシュリちゃんしか作れないと知れば注文が殺到するからな」

「ああ、それに関しては実例がここいいるからな」


そう、あのPVのせいで大変な目に合った。あの苦労をシュリちゃんには味わってほしくない。


「そういうことなら納得しておくよ。他のギルドの方々もいいか?」

「そういうことならしょうがないわね」

「ああ。しかし、その性能はぜひとも手に入れたいな」

「なら、追加情報だ。さっきの鉄インゴットは別の効果が付与されてると思う」


俺は再び“清”鉄インゴットを取り出し、シュリちゃんに渡す。シュリちゃんは言葉にするまでも無くそのインゴットを見つめてその効果を確認する。


「これ、【水・氷属性能力上昇】が付いてるんですけど……」


「「「「……」」」」


さすが〝聖水″とそれから作った〝スノープリズム″を混ぜた特注品だ。まだその一個しか成功してないけど。


そして喜んでいる俺の肩に手が置かれた。振り返るとミオさんがいた。


「ア、アルケさん」

「は、はい」


ミオさ~ん、肩が痛いんですけど? というか、目からハイライトが消えてませんか~?


「あのインゴットから杖を作った場合、あの効果って付くの?」

「え、え~と」


俺は振り向いてシュリちゃんに確認を問う。俺はあくまでインゴットを創れるだけで、それを武器にするのはシュリちゃんだ。


「これまでの経験から、多分可能だと思います」


それを聞いたミオさんの笑顔は一生忘れないと思う。逆の意味で。





それとライン、火を噴く剣とか作れって無理だからな。……多分。

次は8日0時投稿。

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