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VRMMOの錬金術師  作者: 湖上光広
第二章:新たな力
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第二十五話(番外編):決着

今回はミオ視点です

洞窟に落ちた後、私は幸運にもすぐにアポリアさんと合流し、さらにしばらくして盾をメインとするヴィノさんとも出会えた。


それからは三人で行動し、遭遇したヴァルキリーの人たちを倒して進んだ。


ヴァルキリーのメンバーを三人倒した後、偵察のため私が先行して進んでいくとそこにはエルジュちゃんがいた。


私はすぐさまリンクを繋ぎ、アポリアさんにどうするか指示を求めた。


ちょうどその頃、アポリアさんの【索敵】により別のヴァルキリーのメンバーも見つけたみたいで、私はエルジュちゃんの足止めをすることになった。

そして、これから起こる戦いのための布石も仕掛けておくことにした。


私はわざと洞窟を凍らせるようにして〔ミラーダスト〕のことを話した。その結果少なくないMPを消耗したし、特注の杖の耐久値も大幅に減った。

この杖を創ってくれた魔法少女の鍛冶師さんも言っていた。「この杖は確かに魔武器と同じような性能を持ちましたけど、あくまで無理やりくっつけただけです。だから壊れやすいので注意してください」と。


実際、この杖の補助を用いながら魔法を使ったが、耐久値はすでに半分まで減っていた。確かに魔法を使うときに杖の補助も併用すると杖の耐久値は減少するが、必ず先にMPが尽きる。

つまり、魔法を使って杖が全壊するなんて状況は、その杖の補助をそうとう使用しないと起こらない。普通はその前に杖をより良いモノに交換するのでまず起こらないと言えるのだ。


それなのにすでに耐久値が半分になっているから、やはりこの方法はあまりおススメできない。でも魔武器は持ってないからしばらくはこれに頼るしかないだろう。


話がそれたが、その代償を支払うことでシュリちゃんに“洞窟内で〔ミラーダスト〕を使うには周りを凍らせないといけない”という認識を植え付けた。


なお、この策は万が一ヴァルキリーのギルドマスターであるカリンさんが合流した時のための予防策だったのだが、運命のいたずらか、本当にカリンさんが現れた時は正直驚いた。


カリンさんが登場し、エルジュさんが驚いている間に私は離脱した。念のため〔アイスウォール〕を設置して追いかけられないようにした。維持コストでMPが削られるけどここで私が倒されたらせっかくの仕掛けが意味を成さなくなる。


幸いにも向こうも残り2人ということで慎重になったようで追いつかれることなくアポリアさんたちと合流した。




合流した私は休んでわずかでもMPを回復し、そしてカリンさんの【索敵】に2人が反応した段階でこの場に仕掛けを施した。


それは、アポリアさんからわずかにずれた場所にある石、そして今私とヴィノが潜伏している横穴入り口付近の石を凍らせ、〔ミラーダスト〕を発動させた。

それにより、反射を利用して私は横穴にいながらアポリアさんと対峙するカリンさんとエルジュさんを見つめていた。


そしてヴィノさんは盾の能力を使った。これはヴィノが持つ〝盗賊の盾″と言う魔武器の能力で、【ハイディング】スキルと同じように相手の詮索系スキルから逃れる効果がある。

しかし、姿を消したわけではないので当然見つかる時もあるし、一度見つけられた相手には二度と効果が効かないというデメリットもある。


しかしその効果により、ここにはアポリアさん以外には誰もいないと思わせられる。あとはアポリアさんを倒そうと警戒しながらもカリンさんが接近し、横穴から姿が見えた瞬間に〔アイスランス〕を当てる。もしくは一気に接近して〔アイスランス〕が当てられないようなら先にエルジュさんを始末して前後からカリンさんを倒す。

これが、アポリアさんが計画した作戦だった。


武器を構えずにアポリアさんをカリンさんたちの前に出すのは危険だとヴィノさんが言ったが、アポリアさんは「大丈夫」と言っていたので、私たちのギルドマスターを信じることにしたようだ。




そして二人が現れ、こちらの思惑通りカリンさんがアポリアさんに近づき、もう少しで横穴からカリンさんの姿が見えるところまで来た時、一瞬だけどエルジュちゃんと目が合った気がした。しかし、それは洞窟に響いた「カリンさん!」という声と走ってくるエルジュちゃんを見て気のせいではなかったと知った。


(この状況でわずかな異変に気づくなんて、さすがエルジュちゃん!)


ヴァルキリーの事情は知らないが、エルジュちゃんの位置はずっとおかしいと感じていた。エルジュちゃんなら副ギルドマスターになっていてもおかしくないのに、なぜか彼女は一般ギルドメンバーの地位にいる。

そのせいでほとんどのセラフィムメンバーは今回のPVPに参加したエルジュちゃんを“単なる数合わせ”程度にしか思っていなかった。多分警戒していたのは私とアポリアさんくらいじゃないかな。


さて、そんなエルジュちゃんだが、カリンさんがアポリアさんの方に向かったのなら狙いはこっちだろう。

なら、出迎えてあげるのが礼儀だろう。


私はエルジュちゃんが矢を射るために止まるタイミングと合わせて〔アイスランス〕を放つことにした……しかしそれはできなかった。


エルジュちゃんは地で止まるのではなく、空中を飛んでいた。おそらく横穴直前でジャンプしたのだろう。

なるほど、あれなら走る際に地面を蹴る反動で照準がずれるのを防げるし、なにより常に動いているから的になる可能性も少なくできる。


(でも、私には意味がないよ!)


私はエルジュちゃんが飛ぶ放物線をイメージし、〔アイスランス〕が確実に当たる位置に向かって放つ。少し遅れてエルジュちゃんも矢を放つけど、残念ながらヴィノが防ぐ。


そしてまたしても私はエルジュちゃんにしてやられることになる。


エルジュちゃんが放った矢。それがヴィノの盾に当たる前に爆発したのだ。


普通矢が爆発するなんてありえない。でも、脳裏に先ほどの会話が浮かんでくる。




「そう言えば、エルジュちゃんはあの錬金術のお姉さんの妹さんなんだよね~」

「ええ、そうですが?」




そう、エルジュちゃんは私の杖を創るのに使った〝スノープリズム″を生みだした錬金術師のお姉さん。そしてそのお姉さんのお店で最初から販売されていた攻撃アイテム。


(先ほどの爆発は間違いなくフレイムボム! まさか私以外に同じようなことを考えてる人がいたなんて!)


武器とアイテムの融合。

素材アイテムや強化アイテムならまだわかるけど、単体で使える攻撃アイテムと組み合わせるなんて発想、他にいないと思った。


(さすがは本家の妹さん! やってくれるわね~)


思わず感心してしまうが、まずは現状を確かめるほうが優先だ。

そう思い、ヴィノに声をかけようとして、すぐにその姿が消えた。


「え!?」

「チェックメイトです」


動揺する私の後方から聞こえてきた声。誰がいるかなんて訊く必要すらない。


「……どうやって?」


何とか打開策を見つけようとそんな質問をする。これではさっきと反対だなと思っているとエルジュちゃんもそう思ったようで「クスッ」と笑い声が聞こえた。


「あの盾職の人は爆発で困惑している隙を狙って顔面に〔アローストライク〕を打ちこみました。そして〔ウィンドアーマー〕でミオさんの後ろに回り込んだのです」


【長弓】のアクト〔アローストライク〕。現在判明している弓のアクトとしては最大の攻撃力とされているアクト。でも、それだけだとヴィノのHPを全て消すことなんでできないはず。


「おそらく考えている通り、〔アローストライク〕だけでは足りません。このPVPは装備の制限がなかったのが幸いしました」

「どういう……」

「今私の攻撃力は普段の2倍になっているんですよ。その分防御力・魔法関係は全て1/2になってますが」


「攻撃力を倍加して、防御力を半減するアイテム……まさか、呪い系!?」

「ええ、おかげで体がだるくて気持ち悪いですよ」


良く見ればエルジュちゃんが着ている鎧は少し光っている。


魔武具の定義は『武器もしくは防具そのモノに能力、すなわちスキルが備わっていること』。

大抵の場合は【~増大・小】など少しパラメーターを上げる程度だけど、中にはエルジュちゃんが言ったように【攻撃力倍加】なんてとんでもないモノも存在する。

しかし、それによるデメリットはとてつもなく大きい。おそらくエルジュちゃんのデメリットはこのPVPが終わる時間、いやそれ以上効果が継続するモノだろう。


それでもさすがに一撃は無理なはず。おそらくヴィノさんを倒したカラクリはそれだけではないと思うけど、さすがに全部は話してくれそうにないか。


「いいの、こんなところでそんなもの使って? まだ戦いは続くのよ?」

「ご心配なく。デメリットがあっても、そう簡単に負けるつもりはありませんから」


顔が見えないけど笑ってるのが分かる。まったく、なんでこの子が一般ギルドメンバー扱いなんだろうか?


「ねえ、よかったらセラフィムに来ない? 今よりもいい待遇を約束するわよ?」

「御誘いうれしいですが、遠慮します。今の地位は私自身の勝手な行動によるモノであり自分自身で納得してますから」


“いつもとは違って真面目な口調なら落とせるかな~”って思ったけど無理だったか。


「それじゃ、またお会いしましょう」

「今度は一緒にお茶会でもしましょうね。兄さんも呼んでおきます」

「ええ……逝きましょうか♪」

「え?」


私の言葉でエルジュちゃんが気を抜いた瞬間に〝スノープリズム″を発動。私とエルジュちゃんを吹雪が襲う。


苦痛の声が聞こえるも矢を放つエルジュちゃん。なんとか脳天直撃は避けられたけど、やはり距離が近かったせいか、耳に当たりかなりのダメージを受けた私のHP残量は〝スノープリズム″のダメージも合わせて残りわずか。


〝スノープリズム″の効果が切れると同時に杖が壊れる。あ~あ、せっかくの特注品だったのに。


なにはともあれ、私はすぐさまスペアの杖を取り出し〔アイスバレット〕をエルジュちゃんに放つ。

同時にエルジュちゃんも新たな矢を私に放った。


そしてお互いの攻撃相手に当たり、私たちはリタイヤすることになった。


同時に、『リーダー』である私が倒されたことでヴァルキリーの勝利が決まった。

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