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イベントが起こる予感 (マデリーン)

 本日もサロンの集まりに呼ばれ、私は令嬢達に紅茶を振る舞っている。

 今の私にはこのサロンしか令嬢達との繋がりがなく、喩え使用人扱いだととしても関係を絶ちきるわけにはいかない。

 後一ヶ月で長期休暇に入ってしまう。

 そうなる前に何かしら行動を起こさなければ……


「ドレスト令嬢は休暇の間はパーティーに参加されるのですか? 」


 本日の令嬢達の話題は来月の長期休暇の過ごし方について話されている。


「パーティーですか? いえ、全く予定は有りません」


 伯爵からパーティーなどの招待状が届いたという話は聞いていない。


「ドレスト伯爵からは何も伺っていないのかしら? 」


 再度アイリーンに問われるという事は令嬢達の間で何かしらあるのだろうか?


「パーティーのお誘いについては一切聞いておりません。皆さんは何処かのパーティーに誘われてるのですか? 」


「私達学生は社交パーティーに参加出来るのは長期休暇と王族主宰のものだけなんです。まだ招待状等は届いておりませんが、これから続々と届く筈です。きっと伯爵もこれからお話しされるのかもしれませんね」


「そうなんですね」


 アイリーンの話ぶりから、毎年長期休暇の時期に開催されるパーティーに令嬢達は参加するようだ。


「ええ。ではドレス等はまだ準備されてないのかしら? 」


「ドレスは一着あります。侯爵様の誕生日に着用した物が」


「……一着……ですか? 」


「はい」


 笑顔で答える私に令嬢達が言葉を飲むのが分かる。

 貴族達は自尊心が高い。

 基本一度着用したものは今シーズンは避けるか時間を置いて着用する。

 それは爵位が高ければ高い程、顕著に現れる。

 どんなに困窮している令嬢でも連続でそのまま着用する事はしない。

 致し方なく着用する場合は、多少の手直しをして同じものと思わせないようにするのが基本。

 それを堂々と『同じものを着用します』という宣言はしない。

 これも作戦。

 令嬢達に私が元平民だからと言って、ドレスや宝石に興味があるわけではないという印象を付ける為。

 令嬢達には私が高位令息や金銭目的ではないと思わせる必要がある。

 そこまで詮索しないかもしれない。

 過去の私が同じドレスは着用せず宝石も身に付ける機会よりも沢山貢がせた記憶があるから、意識しているのかもしれない。

 私がそうなったのにも、理由がある。

 男爵は私を貴族に嫁がせることには必死だった。

 それなのに、私にお金をかけてくれることはなかった。

 だから、私は『自分で』用意しなければならなかっただけ。

 令嬢達に『平民上がりの男爵令嬢』とバカにされたくなかった。

 だから、何処の令嬢達よりも高価なものを身に付けた。


 それこそが下品極まりないとは知らずに……


 伯爵の元で学ぶようになって、『身の丈にあったものを身に付けることの方が、立場を弁えた行動となり気品も生まれる』というのを知る。

 過去に演じていたゲームに出てくるヒロインを、今は自然としている。

 慎ましやかに、それでいて勉強等は際立つように……


「際立つ……今回の試験は……まぁまぁと言った所だろうね」


 今後は維持は当然、私としては十位以内に入らないと……

 まさか、サーチベール国がこんなにもレベルが高いとは思わず油断していた。

 伯爵も三十位の私を納得はしているものの、どこか余裕な態度で勉強に望んでいた私にもっと上位を望んでいたはず。


「伯爵様の事ですから、ドレスはこれからかもしれませんね。オーダーするのであれば今からでないと間に合わないかもしれませんよ。時期によりますが人気のデザイナーは遅くても二ヵ月、早ければ四ヵ月前には予約が取れなくなってしまいますから」


「そうなんですね。前回のドレスはまだ一度しか着用していないのにまた新たに作るのは……伯爵……お父様に申し訳なくて。それに私がパーティーに呼ばれるかも分かりませんし」


 新にドレスを仕立てる事に渋って見せる。

 

「いえ、ドレスト令嬢であれば必ず招待される筈です。伯爵家ですし学園に編入して間もないのに勉学も礼儀作法も素晴らしいんですもの」


 サロンに参加している令嬢達に明確に認められていたことをしる。

 私の人生で初めて貴族に認められた。

 信じられずエメラインを確認するも、令嬢も微笑み頷く。

 私の今までの努力が実ったと実感し、涙目になるのを必死に耐える。

 その後もお茶会は和やかに進み、私はサーチベール国で漸く本物の貴族令嬢になれた気がした。

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