やはりというべきか (アンドリュー)
間もなくして、ドレスト伯爵は自身のカジノで働くマーベルを養女として迎え入れた。
「マデリーン」
あの女はこの国で生きていくと決めたのか、改名。
表向きは、孤児院を出て仕事を探していたところカジノの面接に現れ雇われた。
優秀であると見込まれ伯爵家の養女となり、近いうち学園に通うことになったらしい。
「学園か……」
マーベルはシュタイン国での卒業資格は抹消されているが既に十八歳。
学園に入学と言ってもサーチベール国では最終学年の年代。
どうするつもりなのか……
元々シュタイン国で成績は優秀。
編入は然程難しくはなかったようだ。
学力も身分も整い、マーベルの……マデリーンとしての二回目の学園生活が用意された。
伯爵はそれだけでなく、マデリーンの為にたっぷりの寄付金まで学園に納めたと聞く。
マデリーンは最終学年に編入したらしい。
「最高学年には確か第三王子がいたな……」
だが、第三王子には既に婚約者がいる。
相手はサーチベール国でも有名な侯爵家の令嬢。
優秀で才色兼備。
行動派で、相手が第一王子であれば王妃としても文句無しと判断される令嬢。
婚約は政略的なもので第三王子に固執はしていないが、仲が悪いわけでもない。
令嬢は誰に頼ることなく一人で立てる自立した女性。
どことなく。アンジェリーナと似ている。
「あの女はこの国でも同じ事をするつもりなのか?」
自身が幸せになるのであれば、婚約者のいる男に手を出し婚約解消に追い込むことも何とも思わない。
あれから一切反省することなく、今度はどれだけの被害者を出すのか……
「やはりこうなってしまうと、王族に報告するべきか……」
今の状況では、処分するにも伯爵家の養女になってしまい手が出しづらい。
さらに、学園は閉鎖された空間。
外からあの女を監視していても、完璧に情報を得ることは出来ない。
アンジェリーナの為にもこの手であの女を始末したかったのだが、他国では思うように動けずもどかしい。




